RIETIの活動

バイオものづくり革命推進事業に関する検証シナリオ(第一次案)についてのRIETI EBPMセンターからのアドバイス

2024.11
RIETI EBPMセンター

2022年4月に発足したRIETI EBPMセンターにおいては、内外の研究者や政策当局と連携し、これまで進めてきたデータに基づく事後検証型の政策効果研究に加え、官民連携で実施する大規模プロジェクトについて、政策効果の分析に必要なデータ・デザインなどの基本構想と具体的な検証方法等につき、政策当局に対し伴走型で提案することとしています。

2024年10月に、バイオものづくり革命推進事業について、経済産業省の検証シナリオ(第一次案)が公表されたことを受け、今般、検証シナリオ(第一次案)に対するアドバイスを公表します。

事業終了後に政策の効果を検証し始めるのではなく、事業開始前及び事業実施中にアジャイル(注1)に政策評価手法を検討し政策の効果を検証しようとすることは、先進的取組として評価できるものです。特に、研究開発を対象とした本事業のように対象となる事業者が一定数に限られ、上市・市場化に至る過程において内外に多くの変数が存在する事業については、EBPMとしての確立された評価手法が存在しないため、事業の性質を考慮しつつ、本事業に最適な評価手法を模索していくことが望まれます。

なお、本アドバイスについては、大橋弘先生、北尾早霧先生、渡辺安虎先生、江藤学先生を含むRIETI EBPMセンターのアドバイザリー・ボードのメンバーにご意見を頂きながら作成したものです。この場を借りて、深く御礼を申し上げます。

1.検証シナリオ(第一次案)公表までにRIETI EBPMセンターから実施したアドバイス・改善内容

検証シナリオ(第一次案)の公表までに、RIETI EBPMセンターから行ったロジックモデルに対するアドバイスの概略及びアドバイスを踏まえた改善点は以下のとおりです。

  • 研究開発を目的とする複数年度の研究開発事業としてグリーンイノベーション基金を参考に検討されていたところ、事業の期間が原則5年であることや研究開発段階がより実用化に近いものに取り組むことを考慮してロジックモデルを整理することが望ましい。
    • 長期アウトカム、インパクトの整理において、事業期間が原則5年であることや実用化に近い研究開発段階のものであることが考慮されている。
  • 国際競争力と環境負荷低減の二双方を目的とした政策に対して、インパクトに至る経路が複線化されていることが望ましい。
    • アウトカム全体を大きく赤枠でまとめ、それをインパクトに繋げることで、明確に複線化が表現されており、より実態に即したロジックモデルになっている。
  • 短期、中期、長期のアウトカム同士の繋がりや事業実施期間中の事業の見直しについて明記するほか、事業の見直しを表現するためにロジックモデルも直線的でない方が望ましい。
    • 事業実施期間中の見直しに関してロジックモデル中に示されているほか、アウトカムやインパクトから見直しについて矢印で繋がれており、事業の見直しをする点について分かりやすく明示されている。

2.経済産業省が作成した検証シナリオ(第一次案)

バイオものづくり革命推進事業の検証シナリオ(第一次案)においては、2024年10月時点で以下のようなロジックモデルが公表されています。

2022バイオものづくり革命推進事業におけるアウトカム目標とロジックモデル
2024年10月時点のロジックモデル
バイオものづくり革命推進事業の検証シナリオ(第一次案)資料より抜粋

3.RIETI EBPMセンターのアドバイス

上記の検証シナリオ(第一次案)に対するRIETI EBPMセンターのアドバイスは以下のとおりです。

脚注
  1. ^ 「アジャイル(agile)」とは、もともとソフトウェア開発における考え方で、事前検討を重視した重厚長大なアプローチ(ウォーターフォールモデル)ではなく、小さな単位で動くソフトウェアを短い期間で評価し、実装とテストを繰り返していくことで不確実性をコントロールしていく考え方。2001年に米国で提唱され、近年では、広く経営や技術開発にも応用されている。(参考:NRIの用語解説等)