RIETI 前理事長 矢野 誠 とRIETI 元ファカルティフェロー 古川雄一の共同論文、”Two-dimensional constrained chaos and industrial revolution cycles,” が総合科学学術誌 Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS) のオンライン版に掲載されました。オープンアクセスですので、下記リンクより無料でダウンロードできます。冊子体出版も予定されております。
18世紀以来の近代経済は、ほぼ100年を周期に、急激な技術革新と深刻な停滞を繰り返してきました。本研究は、それを「産業革命サイクル」という新しい用語でとらえ、そのメカニズムを市場の質と技術の希少性の相互関係によって説明するものです。「産業革命のような大規模なイノベーションは高質な市場に宿る」ことを本論文は示します。
1979年末以降、米国と英国は、それぞれレーガン大統領、サッチャー首相という強力なリーダーのもとで、市場改革を断行し、市場の高質化を推進しました。それが第三次産業革命の基礎を作ったということを歴史は如実に示しています。1990年ごろから続く我が国の長期停滞を乗り越えるためには、社会のすみずみにいきわたるイノベーションの推進が不可欠です。そのための基礎作りに向けて市場の高質化を進めよ、というのが本研究の示唆するところです。
「産業革命サイクル」という考え方は、慶應義塾大学経済学研究科・商学研究科・京都大学経済研究所連携グローバルCOEにおける研究の一環として、矢野(2005、『「質の時代」のシステム改革』、岩波書店)で提唱されました。本研究はその考え方の中核をなす部分をモデル化し、説明するものです。(詳細はプレスリリース参照)
Makoto Yano and Yuichi Furukawa, “Two-dimensional constrained chaos and industrial revolution cycles,” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, January 27, 2023, 120 (5) e2117497120, https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.2117497120
なお、本論文はRIETIディスカッション・ペーパー(19-E-008, 2019)を発展させたものです。