茨城の特色

県知事が自らインタビューに応じた点は、認識の高さという点で評価すべきであろう。また知事の「自己評価で95点」という高いものは、達成感の高さを表すものであろう。特にスタジアム周辺の盛り上がりに関しては、全自治体の中でも最高レベルのものだったとの自負があるようだ。この点に関しては、Jリーグ鹿島アントラーズの存在が、自治体や地域住民にとって経験となって蓄積し、その成果に対しての意識が明確であった。もっとも一方で立候補時点では、それほど明確な戦略的な目的意識がされていなかったと知事自らが告白されていたが、立候補時点ではJリーグも開始されておらず、サッカーに対する意識が国内ではそれほど高くなかったという背景もあり、他の自治体も含めこのあたりは致し方ない部分かもしれない。事実、多くの自治体は日本開催が決定し、大会初出場となったフランス大会を視察するまで、「うちは最近国体を開催したから大丈夫」などというように、何かと国体を引き合いに出す発言が多かったのである。

茨城のデータ

Q1.貴自治体におかれましても、ワールドカップに関する事後評価は重要であると認識していらっしゃることと存じますが、すでに事後評価はしていらっしゃいますか?

未回答


Q2.以下の25項目につきまして、A,B,Cの3段階でご質問いたします。下記表内に書き込んでください。

A.ワールドカップ開催前に、ワールドカップ開催によって、下記項目について「充実/促進」が図られると考えておられましたか?

(回答:はい/いいえ)

No. 項目 回答
1. 住民意識の一体化 はい
2. 住民の連帯感の醸成 はい
3. 地域の誇りや住民の自信の獲得 はい
4. 地域文化の見直し いいえ
5. 地域名のメディア露出 はい
6. 外来者観光客数の増加 はい
7. 商店街の活性化 はい
8. 地域経済への波及 はい
9. 交通渋滞解消/自動車交通の定時制の確保 はい
10. 鉄道交通網の整備 いいえ
11. 街並など景観の向上 はい
12. 住民の美化運動の実践 はい
13. ボランティア活動参加者の増加 はい
14. ボランティア活動組織の増加 はい
15. 地域ホスピタリティの向上 はい
16. 国際意識の向上 はい
17. 国際交流の進展 はい
18. 青少年への国際理解教育や社会教育の実践 はい
19. 環境保全意識への高まりへの寄与 いいえ
20. スタジアム等-スポーツ施設の充実 はい
21. スタジアム等-スポーツ施設利用の活発化 はい
22. 地域スポーツの活発化 はい
23. スポーツ参加率の上昇 はい
24. スポーツイベント運営ノウハウの獲得 はい
25. サッカー人気の高まり はい

B.Aで「はい」と回答された場合は、そのために施策や事業を実施しましたか?もしされている場合は、その具体的な内容をお書きください。

(回答:はい/いいえ)

No. 項目 回答
1. 住民意識の一体化 はい

施策の内容

  • 各界を網羅する次の団体を設置し、県民運動,市民運動として気運醸成を図り,受入れ準備を進めてきた。
    県:ワールドカップ推進員会
    市:ワールドカップ市民懇談会
    県内各地でのイベントの実施,気運醸成PR
2. 住民の連帯感の醸成 はい

施策の内容

  • 同上
3. 地域の誇りや住民の自信の獲得 はい

施策の内容

  • ワールドカップ開催時の地元の伝統行事「祭頭祭」の披露
  • ホスピタリティ事業として郷土芸能の披露
5. 地域名のメディア露出 はい

施策の内容

  • 開催前のイベント毎に、マスコミに開催地名を露出して公表,PR
  • インターネットホームページでのPR
  • 新聞広報・スタジアム増築工事中のJリーグ中継
  • スタジアム増築工事中のJリーグ中継
6. 外来者観光客数の増加 はい

施策の内容

  • コンフェデ・ワールドカップを契機として茨城の観光PR→インターネット、案内所
  • 宿泊施設空室情報のインターネット提供
  • 県内主要施設の割引券の発行
7. 商店街の活性化 はい
  • スタジアム周辺イベントでの飲食物販売への出店参加
  • 主要施設割引券の発行
  • インターネット等での観光宿泊情報の提供
8. 地域経済への波及 はい

施策の内容

  • スタジアム増築、関連道路の整備
  • 交通輸送における地元からの資源調達
  • 交通誘導等における緊急雇用対策
9. 交通渋滞解消/自動車交通の定時制の確保 はい

施策の内容

  • 交通アクセスセンターによる交通案内等,主要道路10本の整備
  • 臨時駐車場とシャトルバス運行
  • スタジアム直行バスの運行
  • JR鹿島線及び第三セクター鉄道の増便
10. 鉄道交通網の整備 いいえ

施策の内容

※鉄道網の整備こそしていないが、新神宮橋、51号バイバス等主要道路を整備したほか、鉄道の増便,増結を行った。

11. 街並など景観の向上 はい

施策の内容

  • 沿線景観向上に配慮した主要道路の整備
12. 住民の美化運動の実践 はい

施策の内容

  • 花いっぱい運動に対する資材の提供等の支援
  • 違法看板撤去への市民参加
13. ボランティア活動参加者の増加 はい

施策の内容

  • JAWOC茨城支部と共同でのボランティア募集及び研修実施
14. ボランティア活動組織の増加 いいえ
15. 地域ホスピタリティの向上 はい

施策の内容

  • 一校一国運動の取り組み
  • 6カ国会話集の作成
  • 県民参加のワールドカップ時のイベントへの参加
16. 国際意識の向上 はい

施策の内容

  • 1校1国運動
  • 6カ国会話集作成
  • 英会話教室(消防本部,県事務局、県警)
  • 出場国の紹介事業
17. 国際交流の進展 はい

施策の内容

  • 日韓交流事業(ユースサッカー交流)
  • 民団茨城地方本部との協力
  • 出場国歓迎イベント
  • スタジアム周辺の交流イベント
18. 青少年への国際理解教育や社会教育の実践 はい

施策の内容

  • 1校1国運動
  • 出場国料理の給食での提供
  • 日韓ユースによるサッカー交流
19. 環境保全意識への高まりへの寄与 いいえ
20. スタジアム等-スポーツ施設の充実 はい

施策の内容

  • スタジアムの増改築
  • 芝生の全面はりかえ
21. スタジアム等-スポーツ施設利用の活発化 はい

施策の内容

  • 収容人員の増加
  • スタジアム利活用の促進
22. 地域スポーツの活発化 はい

施策の内容

  • スタジアムを核として、カシマ地域をスポーツ交流の空間として創造
23. スポーツ参加率の上昇 はい

施策の内容

  • サッカー教室の開催
  • 小学生のスタジアム竣工記念試合への招待
  • パブリックビューイングの県内各地での開催
24. スポーツイベント運営ノウハウの獲得 はい

施策の内容

  • 職員のJAWOCへの派遣
25. サッカー人気の高まり はい

施策の内容

  • ワールドカップの気運醸成事業の展開
  • スタジアムを利用したイベント
  • スタジアムの一般開放

C.ワールドカップ開催を終え、下記項目について、その成果を評価するとどのようにお考えですか。1~5、Xのなかから番号(記号)を一つ選んで○をつけてください。またその成果を評価するための客観的な指標はありますか?もしある場合には、その項目と内容を具体的にお書きください。なお「X.現時点で評価できない」とする場合は、いつ頃評価できるようになるのでしょうか?評価できる時期とその理由をお書きください。

【質問C/効果の程度に関する評価基準】

  1. 1:効果なし
  2. 2:ほとんどない
  3. 3:あった
  4. 4:かなりあった
  5. 5:効果絶大
  6. X:現段階では評価できない
No. 項目 回答
1. 住民意識の一体化 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 花いっぱい運動への市民参加
  • 女性団体,青年団体のイベントへの参加
  • 消防団,交通安全協会による市内巡回等安全確保への協力
2. 住民の連帯感の醸成 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 同上
3. 地域の誇りや住民の自信の獲得 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 客観的な指標はない。次のようなことから効果の程度を判断
  • 茨城開催についての新聞・雑誌などの報道により茨城(カシマ)のオリジナルなホスピタリティ事業に肯定的評価
4. 地域文化の見直し X
5. 地域名のメディア露出 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 国内開催地として、全国的に認知された。
  • アントラーズの活躍もあって相乗効果があった。(客観的な指標はない。上記の様なことから効果の程度を判断)
6. 外来者観光客数の増加 4

成果を客観的に示す指標とその内容

  • ワールドカップ開催時には、宿泊施設も満室状況であった。
  • 鉄道利用者が多く、遠方からの来客が多数であった。
  • ワールドカップ後のアントラーズ観戦客が増加している。
7. 商店街の活性化 3

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 大会当日の観戦客による飲食物を中心とする売上げ(ワールドカップ開幕前に経済波及効果調査を実施)
  • 宿泊施設での宿泊客の増加
8. 地域経済への波及 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 産業関連表を用いた経済波及効果調査を開催前に実施した。
  • 投資、消費総額508億に対し経済波及効果773億
9. 交通渋滞解消/自動車交通の定時制の確保 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • ワールドカップ時の交通は円滑に確保できた。主要道路での渋滞も生じなかった。
10. 鉄道交通網の整備 1

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 鉄道網はもとより、便数も増加していない。
11. 街並など景観の向上 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 客観的指標はないが、新設主要道路の景観が向上した。
12. 住民の美化運動の実践 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • スタジアム周辺及び主要道路沿いは草花で飾られ、観戦客を喜ばせた。
  • 主要道路に違法看板はなくなった。
13. ボランティア活動参加者の増加 4

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 開催地ボランティア600名
  • JAWOCボランティア1,400名の応募
14. ボランティア活動組織の増加 3,X

「X.現時点では評価できない」場合

  • 理由:不明。係数的は把握していない。
15. 地域ホスピタリティの向上 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • スタジアム周辺のイベント会場では、女性団体、青年団体による創意ある交流事業が繰り広げられた。花いっぱい運動によるスタジアム周辺の美化
16. 国際意識の向上 4

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 女性団体による出場国料理の提供がイベントで実施された
  • スタジアム周辺では外国人との交流イベントが女性団体・青年団体により自主的に実施された
17. 国際交流の進展 4

成果を客観的に示す指標とその内容

  • ワールドカップ開催後も日韓ユースサッカーが実現できた
18. 青少年への国際理解教育や社会教育の実践 4

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 出場国を勉強し,開催前イベント(40日前イベント、トロフィーツアー等)で発表した
  • 出場国料理を味わい,異文化を経験した
19. 環境保全意識への高まりへの寄与 2
20. スタジアム等-スポーツ施設の充実 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 15,800人収容のスタジアムが増改築されワールドカップ仕様のスタジアムになった
  • 給排水施設も整備されて芝生も更新された
21. スタジアム等-スポーツ施設利用の活発化 4

成果を客観的に示す指標とその内容

  • アントラーズのゲームでは、改修前収容人員を上回る利用がある
  • スタジアムの利活用の促進については、新たな大会の招致等に努めている
22. 地域スポーツの活発化 X
23. スポーツ参加率の上昇 X

「X.現時点では評価できない」場合

  • 理由:不明。係数的は把握をしていない
24. スポーツイベント運営ノウハウの獲得 4

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 大規模イベント開催について、宿泊,交通,輸送,ロジスティクス等について専門業者等との交流により貴重な経験が得られた
  • イベントを資金面から支えるマーケティングについても学習できた
25. サッカー人気の高まり 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • もともとサッカー人気の高い地域ではあったがJリーグのホームゲーム入場者数が増加した。
  • J2の入場者も増加傾向にある

Q3.貴自治体におけるワールドカップの事後評価について、特記すべき事項を自由にご記入下さい。

別添資料あり
知事/議会議事録など

茨城のインタビュー

1) 開催地への立候補時点、開催地決定直後、終了後、各々でWカップへのイメージ、考え方に県として変化はありましたか。全体的な印象をお聞かせください。

鹿島アントラーズが平成5年に、Jリーグのファーストステージで優勝し地元が活気づいた。鹿島地域は元々住んでいた人と、他の地域から移り住んできた人との一体感がなかなか生まれず、また,若者が喜んで住む街というイメージもなかった中で、サッカーが大変な盛り上がりを見せた。こうした当時の雰囲気に後押しされ、ワールドカップを茨城に招致することで、鹿島にとどまらず県全体の活性につながるのではないかと考え立候補したもの。

ワールドカップ開催決定後も、アントラーズの活躍により更にファン層も拡大した。また,若者のエネルギーをサッカーの応援に向けることができ、暴走行為が減少するなどいい方向転換ができた。企業の中には、鹿島に転勤したいという若い従業員が生まれるなど鹿島の地域イメージもアップした。

鹿島はワールドカップ開催20会場の中でも最も小さな地域であるが、田舎なりの良さを出そうと意識した。電車を降りてからスタジアムまで30分くらいの道沿いに誘導サインの装飾に工夫をこらしたり,小学生が描いたワールドカップの絵の展示などを行い試合へのムードを演出した。また,スタジアム周辺にわいわい交流広場を設け、フェイスペインティングサービスや屋台を出したり、急遽花火を打ち上げたりするなど大変盛り上がった。お祭りムードという点では、本県が一番ではないか。若者のために用意したキャンプもマスコミなどに頻繁に取り上げられ,大成功だった。

試合数3は少なすぎたというのが本音。もう少し試合が多ければもっと盛り上がった。

アントラーズ活躍の10年で、サッカーを見る側(サポーター、運営ボランティアなど)の文化が地域に根付いてきた。ワールドカップ開催により地域の一体感が深まった。


2)成果として挙げられるものを3つほど。

  • 地域の一体化

    上述のとおり地域が一体となり盛り上がったこと。

  • サッカー人気の向上

    茨城に限った話ではなく、Jリーグ発足後、サッカーブームは一時下火になったが、ワールドカップの開催決定により盛り返した。更に、ワールドカップ後もサッカー人気は続き、20~30年後はファン層が相当広がると思う。
    この意味でワールドカップが、日本にサッカーを定着させたといえる。

  • 社会資本の整備

    Wカップをきっかけに交通インフラの整備等が進み、日曜日なら東京の八重洲から鹿島まで1時間20分程で着ける。東京方面(東関東自動車道 潮来インター)からのアクセスが格段に良くなった。
    スタジアムもFIFAマタラ-ゼ副会長から「劇場のようだ」とほめられた。芝がきれいということが誇り。日本各地のスタジアムから芝の育成について問い合わせがある。


3)自己評価すると100点満点の何点?また、ワールドカップのPR効果についてはどのようにお考えですか。

95点。減点は、茨城の開催期間(6/2~8)が短すぎたということ。このため盛り上がりは鹿島地域に限定され、県内全域まで盛り上がるには時間が足りなかった。

県域テレビがなかったというのも要因と思う。テレビというメディアパワーは大きいので、その点もったいなかった。なお、来年10月以降に、NHKが地上波デジタルの県域テレビ放送を開始する。

日本全体としてもやはり決勝ラウンドあたりから盛り上がってきたので、茨城で準決勝/決勝などが行われればまた違った成果が得られたかと思う。その点は惜しまれる。

しかし、祭りムードを演出でき皆から喜ばれ、鹿島を広く国内外にアピールでき、大きな効果があった。


4)スタジアムの整備、アントラーズの設立は茨城にとって投資という意識が強かったように思うが、どのようなリターンを生むと考えているか?

鹿島地域は,周辺地域に比べ元気がある。利根川対岸は人口が減っているが,鹿島地域は発展を続けている。

サッカーへの取組みがなかったら,この地域のイメージも違うものになっていたし,元気が無く,若者も少なくなっていたかもしれない。

投資に見合う金銭的効果がないと評価するのは当たっていない。

波崎町にはサッカー合宿が定着し,10~20億円規模の産業になっている。

景気が悪く,工場の整理統合が進んでいるが,そういう場合も名前が有名になった分,有利に働く面もある。若者のボランティア活動が活発化したなど教育面などでもいい影響を与えている。全体として良かったのではないか。


5)最後に茨城として重点的に取り組んでいる施策をお聞かせください。

県内には、鹿島の外に、つくば、東海、日立など高度な科学技術の集積地を数多く有しているので、これらを産業振興や県民の生活向上に結び付け、日本をリードする最先端の科学技術立県を目指している。

県では,現在3本の高速道路,つくばエクスプレス常陸那珂港の整備,ひたちなか地区開発、百里飛行場の民間共用化など広域交通ネットワークの整備を進めている。

また、企業等が立地しやすく,若者も喜んで住めるよう,昨年9月から伝送容量2.4Gbpsの高度情報通信基盤、いばらきブロードバンドネットワークを整備している。

これらを活用し,「つくば・東海・日立の知的特区」「鹿島経済特区」「ひたちなかを中心とした物流特区」などの構想を推進するとともに,産業の活性化と雇用機会の確保を図るため,新規立地企業等に法人事業税及び不動産取得税を免除する全国一思い切った特例措置を講じることとしている。

このように、科学技術立県の基盤づくりを進め、本県産業の振興を図り、雇用の場がしっかり確保された元気な茨城をつくる。この活力を生かし、福祉や医療、教育や文化、環境などの面を一層充実させ、すみよい県づくりを実現していく。