札幌の特色

開催自治体の中で、具体的な施策実行範囲が最も狭かった。(あるいは最も絞られていた。)

世界の注目を集めたアルゼンチンーイングランド戦を含め、札幌と札幌ドームの認知度を高めたことは、札幌としてかなり評価している。だが対戦カードは自治体の施策範囲外のことであり、この点に高い評価を与えるのでは自治体としての当事者意識、あるいは当事者能力について疑問を抱かざるを得ない。長野で行われた冬季五輪で最大の成果はと問われ、「ジャンプの原田の涙」という頓珍漢な回答をする体質と同質なものが看取されよう。

一番の成果を「札幌ドームの建設」としている。概ね一般の行政は、建造物の評価に傾く傾向があるが、ここも例外ではない。更に、この点に関して今後の活用方法についての施策があまり明確になっていない印象がある。またこれと連動して、ソフト(具体的にはコンサドーレ札幌)との関連を含めた戦略も不明確である。「箱モノ行政」という指摘に対して、どう応えていくのか、今後の対応が注目される。

札幌のデータ

Q1.貴自治体におかれましても、ワールドカップに関する事後評価は重要であると認識していらっしゃることと存じますが、すでに事後評価はしていらっしゃいますか?

する予定はない

Q2.以下の25項目につきまして、A,B,Cの3段階でご質問いたします。下記表内に書き込んでください。

A.ワールドカップ開催前に、ワールドカップ開催によって、下記項目について「充実/促進」が図られると考えておられましたか?

(回答:はい/いいえ)

No. 項目 回答
1. 住民意識の一体化 はい
2. 住民の連帯感の醸成 いいえ
3. 地域の誇りや住民の自信の獲得 いいえ
4. 地域文化の見直し いいえ
5. 地域名のメディア露出 はい
6. 外来者観光客数の増加 はい
7. 商店街の活性化 はい
8. 地域経済への波及 はい
9. 交通渋滞解消/自動車交通の定時制の確保 いいえ
10. 鉄道交通網の整備 いいえ
11. 街並など景観の向上 はい
12. 住民の美化運動の実践 はい
13. ボランティア活動参加者の増加 はい
14. ボランティア活動組織の増加 いいえ
15. 地域ホスピタリティの向上 はい
16. 国際意識の向上 はい
17. 国際交流の進展 はい
18. 青少年への国際理解教育や社会教育の実践 はい
19. 環境保全意識への高まりへの寄与 いいえ
20. スタジアム等-スポーツ施設の充実 はい
21. スタジアム等-スポーツ施設利用の活発化 はい
22. 地域スポーツの活発化 はい
23. スポーツ参加率の上昇 はい
24. スポーツイベント運営ノウハウの獲得 はい
25. サッカー人気の高まり はい

B.Aで「はい」と回答された場合は、そのために施策や事業を実施しましたか?もしされている場合は、その具体的な内容をお書きください。

(回答:はい/いいえ)

No. 項目 回答
1. 住民意識の一体化 はい

施策の内容

  • 会場周辺及び都心部住民・商店街への説明会の実施
5. 地域名のメディア露出 はい

施策の内容

  • PRビデオ・ガイドブック海外発送(各国サッカー協会、放送局:38ヶ国、108ヶ所)
  • 抽選会におけるPRブースの設置
6. 外来者観光客数の増加 はい

施策の内容

  • ガイドブックの製作・配布(10万部)
  • 市内インフォメーションコーナーの設置
  • 羽田空港インフォメーションコーナーの設置
7. 商店街の活性化 いいえ

※FIFAのマーケティング構造により実施することが難しかった

8. 地域経済への波及 いいえ
11. 街並など景観の向上 はい

施策の内容

  • 都市部の放置自転車の撤去
  • 道路上の違法広告看板の撤去
12. 住民の美化運動の実践 はい

施策の内容

同上

13. ボランティア活動参加者の増加 はい

施策の内容

  • JAWOCボランティア及び自治体の外国語ボランティアの一部募集。なお、自治体ボランティアは既存組織による対応
15. 地域ホスピタリティの向上 はい

施策の内容

  • 会場周辺及び都心部住民、商店街への説明会の実施
  • 指さし基本会話集の配布(5万部)
16. 国際意識の向上 はい

施策の内容

  • 会場周辺及び都心部住民、商店街への説明会の実施
  • 指さし基本会話集の配布(5万部)
17. 国際交流の進展 はい

施策の内容

  • 出場6カ国を知るイベントの開催
18. 青少年への国際理解教育や社会教育の実践 はい

施策の内容

  • 小学校出場国応援運動の実施
20. スタジアム等-スポーツ施設の充実 はい

施策の内容

  • 札幌ドームの建設
  • 公式練習場(厚別競技場、白旗山サッカー場)の芝の整備
21. スタジアム等-スポーツ施設利用の活発化 いいえ
22. 地域スポーツの活発化 はい

施策の内容

  • 国際ユースサッカー大会の開催
23. スポーツ参加率の上昇 いいえ
24. スポーツイベント運営ノウハウの獲得 いいえ
25. サッカー人気の高まり いいえ

C.ワールドカップ開催を終え、下記項目について、その成果を評価するとどのようにお考えですか。1~5、Xのなかから番号(記号)を一つ選んで○をつけてください。またその成果を評価するための客観的な指標はありますか?もしある場合には、その項目と内容を具体的にお書きください。なお「X.現時点で評価できない」とする場合は、いつ頃評価できるようになるのでしょうか?評価できる時期とその理由をお書きください。

【質問C/効果の程度に関する評価基準】

  1. 1:効果なし
  2. 2:ほとんどない
  3. 3:あった
  4. 4:かなりあった
  5. 5:効果絶大
  6. X:現段階では評価できない
No. 項目 回答
1. 住民意識の一体化 3

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし
5. 地域名のメディア露出 4

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし
6. 外来者観光客数の増加 X

「X.現時点では評価できない」場合

  • いつ頃:平成15年6月中旬
  • 理由:前年の観光客の入込み調査による
7. 商店街の活性化 X

「X.現時点では評価できない」場合

  • いつ頃:平成15年9月頃
  • 理由:消費動向調査による
8. 地域経済への波及 3

成果を客観的に示す指標とその内容

民間調査機関の試算によると大会期間中の経済効果は60億円程度としている

11. 街並など景観の向上 3

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし
12. 住民の美化運動の実践 3

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし
13. ボランティア活動参加者の増加 4

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし
15. 地域ホスピタリティの向上 4

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし
16. 国際意識の向上 4

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし
17. 国際交流の進展 3

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし
18. 青少年への国際理解教育や社会教育の実践 3

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし
20. スタジアム等-スポーツ施設の充実 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし
21. スタジアム等-スポーツ施設利用の活発化 X

「X.現時点では評価できない」場合

  • いつ頃:平成15年7月中旬
  • 理由:スポーツ施設利用状況調査による
22. 地域スポーツの活発化 3

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし
23. スポーツ参加率の上昇 X

「X.現時点では評価できない」場合

  • いつ頃:平成15年7月中旬
  • 理由:スポーツ施設利用状況調査による
24. スポーツイベント運営ノウハウの獲得 5

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし
25. サッカー人気の高まり 3

成果を客観的に示す指標とその内容

  • 特になし

Q3.貴自治体におけるワールドカップの事後評価について、特記すべき事項を自由にご記入下さい。

札幌の会場となった「札幌ドーム」は、8.300トンのサッカーステージを空気圧で10分の1の重さとし、スタジアムの中に移動する芝転換システムを備えることで、天然芝のサッカーと人工芝による野球、また、コンサートや様々なイベントを開催できる世界で初めてのスタジアムとして関係者各方面の注目を浴びている。

ワールドカップをはじめ、様々な大会やイベントの開催は、市民・道民に新たなライフスタイルを提供しており、今後、国際イベント誘致の核となる施設としても期待が高まっている。

一方、大会のロゴマークや名称の使用における、近年のマーケティング構造では、地域や商店街での開催気運の醸成や活性化への使用が制限されるなど、今後の国際大会開催における、教訓を得た。

しかし、その中にあって、今回の大会で初めて、エンブレムを使用した開催地独自の「コンポジットロゴ」の製作が認められたことは、大きな成果であったと考えている。

札幌の文書回答

1)2002FIFAワールドカップは大きな成果を挙げたと思いますが、首長としての全体的な印象をお聞かせ下さい。

ワールドカップは世界が注目する大会であり実際に開催してみて、サッカーが世界共通のスポーツであるとの印象を強く感じました。

また、大会期間中の日韓両国の盛り上がりは、スポーツが国民に与える影響の大きさを実感したところです。
 札幌においても、期間中は国内外から多くの観客が訪れましたし、各国の様々なメディアの方々の取材など、ワールドカップを通じて、世界に札幌と札幌ドームをアピールできたと考えています。
 世界の厳しい予選を勝ち抜いた32カ国の試合は、どの試合も白熱した好ゲームであり、札幌の3試合は、ドイツ、イタリア、アルゼンチン、イングランドと強豪がそろい、特に、アルゼンチン対イングランド戦は、今大会を象徴する名試合であったと思っています。このようなレベルの高い大会を札幌で開催できたことは、市民にとって素晴らしい体験であり、大きな財産になったと考えています。


2)開催地への立候補時点、開催地決定後、終了後、各々でワールドカップのイメージ、考え方に変化はありましたか。

札幌市は、冬季オリンピック札幌大会、ユニバーシアード冬季大会や様々な国際コンベンションを開催しており、これまでの経験から、オリンピックに匹敵するイベントであるワールドカップへの理解はもっていましたが、フランス大会の視察を期に、改めて、この大会がサッカーの頂点を争うと同時に、世界のファンが集まって楽しむという、素晴らしい祭典であるとの認識を深めました。

また、この大会にはフーリガン問題が必ずついて回りますから、安全の確保が課題になることは承知していましたが、2001年夏の明石市の歩道橋事故や米国の同時多発テロで大変緊張することになり、また、ファイナルドローでドイツ、イタリア、アルゼンチン、イングランドという強豪国の対戦が決まり、まず、安全確保がなにより重大であるとの認識を強くしました。

しかし、この大会がサッカーを通じたお祭りであるとの認識は、終始変わらず、安全を確保するとともに、世界のファンを暖かく迎えて、札幌のワールドカップを心から楽しんでいただくことが大切であると考えました。  安全と祭りの盛り上げの両立は、難しい課題でしたが、警察にもご理解いただき、全体としてうまくいったと思っています。

また、日韓の共同開催、国内10開催地との協力、マーケティング構造、エンブレム、ロゴなど知的所有権など、学ぶことは多く期待以上の収穫があったと思っています。


3)住民の自治参加意識の醸成にワールドカップ開催は貢献しましたか。

札幌では、対戦の組み合わせが決まって以来、マスコミの報道で、フーリガンに対する不安感の高まりもありましたが、多くの関係者や住民の方々のご協力により、何事もなく大会を終了することができました。

フーリガンやテロへの対策には、多くの市民の方々のご理解と最悪の事態を想定した万全な備えが必要でしたが、大会を成功裡に終えることができたことは、本市としても大きな自信になりました。

また、本市には冬季オリンピック以降、ボランティア組織が育っておりますが、今大会においても、その活動は高く評価できるものであり、今回の大会を通じて成熟度が高まったものと考えています。


4)市民レベルでの国際交流という点では如何でしたか。

大会期間中、大通公園に設置したファンヴィレッジには51万人の方々が訪れ、海外からのサポーターと多くの市民が触れ合う姿が見られました。

また、札幌でも1300人のJAWOCボランティアと、380人の自治体ボランティアに大会運営や案内業務等に携わっていただきましたが、どの業務においても、心のこもった対応により、英国関係者はじめ多くのサポーターの方々から感謝の言葉をいただくなど、札幌のイメージアップが図られたとともに、市民の国際交流の推進に大きな成果があったと考えています。


5)ワールドカップ開催について最大の狙いと成果を優先順位の高かったものから3つお答えください。

一つ目は、シティPRです。

札幌市では、『ワールドカップは、札幌で開催される多くのコンベンションの一つであり、世界が最も注目する大会を通じて、初夏の札幌と札幌ドームの素晴らしさを世界に知ってもらうこと、そして、オリンピック以来培ってきた、都市としてのホスピタリティに新たな経験を付け加え、更に充実すること。』を目的として、この事業に取り組んできました。

グループリーグの3試合ではありましたが、全てが第一シードで試合の組み合わせにも恵まれ、フーリガン報道にゆれはしましたが、アルゼンチン対イングランド戦は、国内外から注目が集まり、シティPRの絶好の機会となりました。

特に会場となった「札幌ドーム」は、8300トンのサッカーステージを空気圧により10分の1の重さとし、スタジアムの中に移動する芝転換システムを備えることで、天然芝のサッカーと人工芝による野球、またコンサートや様々なイベントを開催できる世界で初めてのスタジアムであり各国のメディアをはじめ、関係各方面の注目を浴び、大会終了後も様々な取材や問い合わせが後を絶たない状況となっています。

二つ目は、国際化の推進です。

大会期間中は、多くのボランティアや市民の方々の熱心な応援や親切な対応で、ホストシティとして心のこもったおもてなしができたと考えています。

特に、案内業務など市内及び会場周辺で働いていただいた、自治体ボランティアについては、本市の様々な交流事業やコンベンション、スポーツ大会、観光案内などで、これまでも積極的に活躍いただいている、札幌国際プラザ、体育指導委員会、地域スポーツリーダー、社会福祉協議会、観光ボランティアといった既存の団体の参加、協力をいただきましたが、これらの方々にとっても、貴重な経験になったと思います。

また、多くの市民の方々が、国際交流を肌で感じ、新たなスポーツの楽しみ方を経験したと思います。

札幌市は13年度に「国際化推進基本指針」を策定し、国際化施策の更なる推進と新たな展開を図ることとしていますが、このワールドカップの成功は、札幌市の財産と市民の大きな自信となり、今後の国際化への大きなステップになるものと考えています。

三つ目は、経済波及効果です。

民間のシンクタンクでは、札幌市で行われるワールドカップ・グループリーグ3試合の開催に伴う経済波及効果を、約73億円と試算しています。

これは、約1ヶ月間に及ぶ開催期間中、札幌に訪れる観客を、国土交通省の試算に基づき、海外約4万人、国内約11万人の合計15万人、延べ宿泊者数21万人とし、土産品の購入や飲食、宿泊、交通費等の消費を行ったものとして計算したものです。

しかし、海外からの観客は長期間にわたって各会場を回ることを予定しているため、財布の紐は硬かったと見られます。

従って、経済波及効果の予測値は冷静に考えるべきと思います。

しかし、札幌市民のグッズ購入や関連イベントによる消費拡大、報道及び警備などの消費、さらには、札幌ドームの建設とそこで行われる数多くのイベントやワールドカップを通じて知名度が上がったことの効果など、長く広い視点から考えると、大きな効果があったと考えています。