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新しい技術によって職務設計はどのように変化しているのか?
認知的、物理的および社会的業務を遂行する機械の能力は加速度的に向上しており、雇用や労働市場を劇的に変化させている

Michael GIBBS
シカゴ大学・IZA

概要

情報技術(IT)革命は、雇用や労働市場に劇的な変化をもたらしてきた。定型的業務や手作業の多くは自動化され、労働者にとって代わられた。一方で、新しい技術は非定型的で認知的、かつ社会的な業務を補完し、こうした業務に関わる仕事の生産性を向上させる。こうしたIT革命の影響は労働市場を二極化させている。低スキルの雇用は停滞しており、中程度の技能を持つ労働者の仕事は減り、賃金も低下している。他方で高スキル労働者の賃金は上昇しており、両者の賃金格差は拡大している。人工知能(AI)の進歩によってコンピュータが認知的作業を処理する能力が加速すれば、さらに高スキルの雇用についても自動化される懸念が広がる。

Share of workers at high risk (>70%) of automation within 10 to 20 years

主な研究結果

  • 技術は多くの業務を補完し、生産性、品質、イノベーションを向上させる。
  • ビッグデータや機械学習により、認知的、物理的業務に加え、一部の社会的業務(言語関連)にも対応する機械の能力が向上している。
  • データへのアクセスがしやすくなったり、分析ツールが豊富になったり、遠隔通信が容易になったりすることで、多くの労働者は社会的交流、協業、継続的な改善、イノベーションなどの分野においてより一層、重点的に取り組めるようになる。
  • 技術によって高スキルの仕事は本質的にやりがいが向上し、より多くの業務遂行やスキルの向上、そして、分散化が可能になる。
  • 多くの手作業や定型的業務において、人は機械に代替される。
  • 機械が認知的作業を処理する能力は、加速度的に向上しており、労働者の適応はさらに難しくなる。
  • 労働市場は二極化し、格差が拡大している。中程度の技能を持つ労働者に対する需要が相対的に低下する一方で、高スキルの労働者の価値は上昇している。
  • 技術によって中程度のスキルの仕事の多くは本質的にやりがいを感じられる仕事ではなくなり、業務や必要なスキルも減り、一元化と監視が進む。

本稿の主旨

技術は雇用に相反する影響を及ぼす。まず、自動化を促進し、中程度の技能の雇用は減少し、内容もやりがいを感じる仕事ではなくなる。他方、技術は社会的、またはイノベーション関連の業務を補完し、低スキルおよび高スキルの雇用が増加している。以上から労働市場は二極化し、中程度のスキルの雇用に対して需要の「空洞化」が進み、賃金格差が拡大する。AIが進化するにつれ、多くの労働者がコンピュータにとって替わられる、といわれている。その一方で、過去の技術的進歩によって大量失業が起こることはなかったことから、こうした見解に懐疑的な見方もある。政策立案者は、労働者の仕事を補完する技術を奨励するとともに、労働者が変化に適応できるよう、教育・研修を充実させていく必要がある。

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本稿は、2017年3月にIZA World of Laborにて掲載されたものを、IZAの許可を得て、翻訳、転載したものです。

本コラムの原文(英語:2017年4月19日掲載)を読む

2017年4月27日掲載