中島厚志のフェローに聞く

第15回「特許データから見る知識のスピルオーバー効果——イノベーションのプロセスとは」

本シリーズは、RIETI理事長中島厚志が研究内容や成果、今後の課題などについてRIETIフェローにたずねます。

シリーズ第15回目は、特許データなどからイノベーションの分析をされている池内健太研究員をお迎えして、イノベーションのプロセスなどについてお話しを伺いました。

これまでの研究

中島厚志理事長 写真中島 厚志 (理事長):
まず、池内さんの研究や関心をお持ちのところについて、お聞かせいただけますか。

池内健太研究員 写真池内 健太 (研究員):
研究テーマは、色々とありますが、共通しているのはイノベーションのプロセスを研究していることです。イノベーションがどこから生まれて、それが経済に対してどのような影響をもたらすのか、そのメカニズムに関心があります。

中島:
イノベーションといっても幅広いわけですが、どういう経緯からイノベーションに関心を持つに至ったのでしょうか。

池内:
学部時代に学んだ先生がアントレプレナーシップの研究をされている方で、その先生の授業を受けて、研究って面白いなと思い始めました。その中で特に面白いと思ったのが、経済学でいう外部性(externality)という概念です。

人々が行動を決めていく時、各自、自分がどんなアクションを起こすとどういう結果があるだろうということを予測しながら行動していくわけです。外部性とは、このように個人が自由に行動することによって、結果として誰もが予期しないことが起きるという状況のことをいいます。そういう現象が面白いなと思って研究を始めました。

その外部性の研究の中で、ネットワークの外部性という概念がありまして、学部の時にはその中でもゲーム産業に注目して分析を行い、卒業論文を書きました。

中島:
この外部性への関心がイノベーションにつながっていくのですか。

池内:
その研究の後、外部性という切り口で、今度は集積の経済という地理的な集積に関心が移りました。素朴なモチベーションとしては、なぜ大都市に経済活動や人口が集中するのかというものでした。どちらかと言うと、私は田舎の方が好きなので、自分としては田舎でのんびり暮らしたいのに、なぜ大都市にいなければならないのか、都会にいた方がメリットを感じるのかというところに関心がありました。それも外部性の1つで、個人的にはのんびりしたところがいいけれども、人が集まるところにいた方が仕事がスムーズにいったり、仕事がうまく見つけられたりする。自分の好みや行動だけではなくて、他人の好みや行動によって、各自の住む場所が決まることがあって、どこに集積が起きるかというのは決まらない。そういった現象が面白いなと思って、どこに大都市が形成されるのかということに関心が移ったわけです。

そこからイノベーションの話につながっていくのですが、集積がなぜ起きるかを説明するのに、アルフレッド・マーシャルという有名な経済学者が提唱した3つの要因というものがあります。

その中の1つが、知識のスピルオーバーの効果という概念です。知識は基本的には無形のものであり、目に見えない、かつ情報の一種なので、伝えてしまったら、相手にも使われてしまう。いくらでもコピーができるわけです。何かいいアイデアが見つかった時に、その人だけのものとして置いておくと、経済としてのインパクトはないが、それをいろいろな人に広めることによって、みんなにとっていいことがある。知識とは、そういう特殊性を持つものだと思うんですね。

そういった知識がどれだけ速く伝播するか。いいアイデアというのは、どれだけ速く伝播するかによって、経済活動がより豊かになり、生産性が上がって豊かになる。知識にはそういった特性があります。

中島:
そこはまさに外部性ともつながるし、集積ともつながるわけですね。

池内:
そうです。遠いところに離れて暮らして仕事をしていると、どうしても知識の伝播が遅くなるので、企業にしても個人にしても、なるべく近くに立地していた方がコミュニケーションが取りやすくなって、知識の伝播が速くなります。その結果として、より近くに立地しようというインセンティブが生まれるということだと理解しています。

そこから知識の伝播とか、波及効果、さらには知識がどうやって生まれるのかに関心が移り、現在では、世の中に影響をもたらすような新しい製品や新しいサービスがどのように生まれてくるのか、そういうメカニズムに関心を持っています。

特に関心があるのは、企業の知識とイノベーションと大学の知識や科学者との相互関係です。必ずしも直接経済にインパクトをもたらすような新しい製品や産業化に関心がないような純粋な科学者の研究活動が、どういうプロセスで企業の側のイノベーションに影響するのか、あるいは、それらはまったく別の世界なのか、科学者の活動が経済的にも人を豊かにすることに直接結びついているのか、そういったところに特に関心を持っています。

特許データから見えてくるもの

中島:
産業での活用にすぐには直結しないような基礎研究もある中で、研究がどのように産業に結びついていくのかという伝播や波及は形が見えないですよね。どういうツールでこの形が見えないものを研究できるのですか。

池内:
研究活動がどれだけ行われているか、研究活動に対してどういう資源が投入されているのかという研究活動のインプットの視点では、研究費という形で、どれだけのお金を研究資源として科学者が使っているのかを把握していくというのが、第一歩だと思います。

研究費の情報を使えば科学者の活動がある程度捉えられますが、次に、科学者の研究活動からどのようなアウトプットが出てくるのか、そのアウトプットが企業の側にどのように利用されていくという経路を探っていく必要があります。

そのための重要なデータソースの1つとしては、論文と特許があります。重要な科学的な発見をした場合には、世の中に広めたいというのが基本的な科学者のモチベーションになっていると考えられています。そのため、学術論文を研究雑誌に投稿したり、学会で報告したりするなどのプロセスを経て、科学的な発見は世の中に表れてくるわけです。

また、他の科学者が書いた論文を読むことによって、その知識を他の科学者も使えるようになる、そういったある種のスピルオーバー、知識の伝播というものが、論文や学会発表を通じて行われるわけです。

中島:
そういうインプットとアウトプットを計測・研究して、どういうことがわかってきたのですか。

池内:
まだ始めたばかりですが、科学者のインプットとアウトプットがどういった形で企業の側に伝播されて、企業の側での新しい製品やサービスなどの開発、あるいはその改善につながっていくのかを見ていくところが非常に難しいです。

現在、特許データを用いたいくつかのアプローチを検討しているところです。企業の研究者も論文を書くことがありますが、企業は新しい発見があった時に、それを世の中に知らしめるインセンティブはあまりありません。なぜかと言うと、企業の側の研究者のモチベーションというのは、基本的には新たな科学的発見それ自体ではなく、その結果として、新しい製品やサービスを生み出したり、製品の品質を改善したり、あるいは同じ製品でもより安く作れる方法や短時間で作れる新しい製法を実践して、顧客の満足度を高め、その結果として利益を上げるということがモチベーションになっているわけです。特に、その発見自体を世の中に知らしめてしまうと、他社も真似できてしまうという状況があるので、できればいいアイデアは企業の中に秘匿しておきたいわけです。

ただ問題は、いったん製品やサービスとして世の中に出てしまうと、他社がその製品を見て、どんな技術を使っているのかわかってしまうというところがあります。そして自分たちが研究資源を投入して開発した新しいアイデアが他社も模倣できてしまい、投入したコストを回収できなくなってしまうわけです。そういった問題を防ぎ、企業の研究開発のインセンティブを高める目的で、特許をはじめとする知的財産制度があると理解しています。

また、企業の研究者は自分たちだけで研究をしているわけではなく、大学などの科学者のアイデアを自分たちの研究開発にも活用していきたいというニーズもあると思います。

そのため、企業の研究者も科学者の論文を読んだり、学会に行って発表を聞いたり、共同研究という形で科学者に直接研究を手伝ってもらう。企業では、そういう形で科学的な研究成果も取り入れながら研究を行っています。

このような産学連携の研究活動は、特許の文献の中にも一部表れてきます。特許の中には、誰がその特許の権利を持っているかが権利人の名前や住所の情報が記載されています。また、実際に新しい技術を発明した発明者の個人の名前や住所の情報も明記されています。

また、その発明が他の特許や論文で既に広く社会で知られている知識や技術に比べて、どれだけ新しいのか、どういう意味で新しいのかを明確にしなければなりません。その中で、ここまではほかの研究でわかっている、今出そうとしている特許はそこからの差分がどこなのかについて、明確にする必要があるわけです。特許に記載された引用文献をみると、その発明がどのような論文の知識を基礎にしているのかがわかります。

一方、特許の引用というのもあって、発明の基礎となっている知識がどのような特許から来ているのかがわかります。

中島:
なるほど、つながりますね。

池内:
特許に書かれている、特許ではない科学論文の引用を見ることで、そのアイデアの元となるような論文は、どんな科学者がどういったプロセスで書いたのかというところにつながってくるというのが1つです。

もう1つは、企業が出願する特許に複数の発明者が記載されていて、その中に企業の発明者と大学などの科学者が入っている場合があります。これは企業と大学の研究者が共同研究を行っていることを意味していて、企業の研究開発のチームに科学者が協力していることを示すエビデンスだと考えられます。

中島:
それもわかるのですね。

池内:
そうすると、特許の発明者のデータを見ることによって、企業の研究者が科学者の書いた論文を読むだけではなく、どういった科学者が企業の研究開発により直接的に協力しているのかが、わかります。

中島:
科学者と企業とがそこでつながるわけですね。だけど、大量にある特許データをどういうふうに読み込んでいくのですか。個別の特許で、どの科学者とどの企業がつながったとか、あるいはどういう論文の延長に企業の発明が出てきたかというのはわかるにしても、特許というのはものすごい多いですよね。それを研究で捕捉するというのは、1つずつ読んでいくのですか。

池内:
まずはデータベースになっている必要があります。つまり、コンピュータで分析しやすいような形にデータが整理されていることが必要です。たとえば昔は論文や特許は紙で保管されていたわけですが、紙の束を分析しようと思ってもまずできないです。そのような意味で、パソコンやコンピュータで読める形にしていく必要があります。そういう取り組みはもうすでに行われています。特許の方では、日本も含めて各国の特許庁で、過去のデータも含めてすべて電子化されています。論文の方も、最近は基本的には電子媒体で公開されていますので、すでに分析できるような形のデータベースになっています。ただ分析できるといっても、コンピュータが読めるという意味なので、そのままの状態ではなかなか統計的な分析をするのは難しいです。

中島:
そこをプログラムを作って、解析するわけですね。

池内:
はい。

産学連携と企業の研究開発

中島厚志理事長 写真中島:
イノベーションで言うと、こういう特許を解析して、たとえばイノベーションの流れということで何かわかってきているのですか。

池内健太研究員 写真池内:
そうですね。イノベーションの流れに関しては、東京大学の元橋ファカルティフェローのプロジェクトの一環として最近進めています。そこでは、企業がどういう経路で科学者とつながっているのか、あるいはその科学者の知識を活用している企業は増えているのかどうかに注目して、論文と特許のデータ、企業データを相互に接続した分析を進めています。

その結果としてわかってきたことは、企業側の研究に科学者の知識が活用されている傾向が2000年代を通じて強まっているということです。データの制約から2000年代の10年間ぐらいを中心としたものですけれども、特に2000年の前半に大きく企業側が科学者の知識を活用する度合いが増えているということです。

中島:
その理由としては何が考えられるのでしょうか。

池内:
私たちが現在分析しようとしているのは、国立大学の法人化の影響です。

中島:
国立大学が独法化して、なるべく自分で動けるようにする、あるいは動きなさいということが一つの契機になっているということですか。

池内:
そうですね。大学のポリシーとして、大学の研究者が、論文だけではなく、特許も積極的に取っていこう、あるいは産学連携で企業に貢献していくという流れが強まっている傾向を表しているのではないかと考えています。

中島:
基礎的な知見研究を取り入れるようになったということですけれども、そのこととイノベーションが加速しているということは同じことですか。

池内:
そうとは言い切れないと思います。もともと私は文部科学省の科学技術学術政策研究所(NISTEP)に2011年から今年の3月まで5年間所属していまして、そこでメインに関わったプロジェクトが、大学の研究活動、大学に研究費として投入されるような資源がどれだけ経済成長にインパクトを持っているのかということでした。そういったマクロ的なところに関心を持って、一橋大学の深尾先生のプロジェクトの一環で、1980年代後半から2000年代後半までのデータを使った分析を行いました。バブルの崩壊が90年代前半にありまして、その前後で大きく企業の研究開発投資が低下しているということがわかりました。その結果として、生産性の上昇の停滞との関係性が見えてきました。

一方で、先ほどの話にも関連しますけれども、大学の研究費は企業ほど減っていません。その結果として、企業の生産性の上昇をある程度下支えするような効果が見られました。

中島:
企業自身の研究費がなかなか伸びない中、企業の研究を内部の力だけで加速するよりは、産学連携を強めて外の力も借りながら研究開発を進めていこうという動きが強まっているということでもあるのですね。

池内:
そうですね、その可能性はあると思います。ただ、本当に生産性の上昇に結びつくようなイノベーションが加速しているかどうかに関しては、この研究では、研究費の投入のデータとイノベーションの結果として出てくる生産性を関連づけて分析をしてみたということなので、実際にどういうイノベーションが生まれたのか、また大学の知識が企業のイノベーションに影響する経路について、詳しいことはまだわかりません。

中島:
特許データというのは無味乾燥な感じがしますけれど、いろいろなことがわかるのですね。特に電子化されたことで、イノベーションの流れとかやり方とか、そういうものがわかってきたということですね。

池内:
そうですね。それを把握するのに多くの情報を持っていると思います。

これからの研究

中島:
今のお話から、現在やっている研究をこれからどのように伸ばしていきたいのか、うかがいたいと思います。

池内:
まず、企業の生産性の低下が見られますが、大学とのコラボレーションによって、その低下が少しは食い止められているのではないかと推測をしています。ただ日本の研究開発の動向の特徴として、ほとんど研究開発を行っているのは大企業です。

中小企業に関しては、あまり研究開発もやっていないし、イノベーションにもさほど取り組んでいないという傾向が出てます。もちろん、日本の中小企業が何も改善の努力をしていないのかというと、そういうわけではないと思います。しかしながら、少なくともフォーマルな研究開発費、会計に研究費を計上するような研究活動を実施している中小企業は一部に限定されています。特許を出願している中小企業も一部に限定されていると思います。また、産学連携に取り組む中小企業もドイツなどの他の先進国に比べて、少ないことがわかっています。

中島:
それは寂しいですね。

池内:
そういう意味で、個々の企業という視点で見ると、必ずしも日本の企業全体が産学連携に取り組んでいて、その結果としてある程度生産性の低下が食い止められているという状況ではないかもしれません。ただ、大企業のデータについては、上場企業を中心にかなり分析に利用しやすく整備されていますが、中小企業となると、分析できるデータは十分に整備されていない状況です。そのため、現在、中小企業も含めた日本の企業全体の特許データの整理に取り組んでいます。

その時に、上場企業ならわりとリンケージは取りやすいけれども、中小企業となると、日本のすべての企業を網羅したようなデータはなかなかありません。かつ、企業の数も多いというところもあってさらに難しいのですが、近年、政府統計の二次利用がやりやすい環境になって、われわれもそれを利用させてもらっています。「事業所・企業統計調査」や「経済センサス」といった日本のほぼ全ての企業が含まれているデータに、特許の出願人をマッチさせていき、中小企業も含めて日本の企業でのイノベーション活動の実態を特許データ、あるいはその特許データを介してつながってくる科学者と企業との連携を分析していきたいと考えています。

中島:
手間暇がかかる大変な作業だと思いますけども、まさに今大事なところだと思います。特に日本の場合には、中小企業も多い、かつ今世界で第4次産業革命だとかIoTとかAIとかいわれている。それだけ、現在は時代の大きな変革期にあり、イノベーションがリードする時期にあるのだと思います。これからの研究は、そのデータを整備して、中小企業の内容を把握して、どういうふうにやればイノベーションがスピードアップできる方向になるのですか。

池内:
そういう政策的なインプリケーション、あるいは企業のマネジメントに対するインプリケーションを得るような研究をしていきたいと思っています。

また、今までは生産性の分析をしてきましたが、どうしても製造業に限られた分析だったので、非製造業、製造業以外の分析も行っていきたいと思います。特に製造業ですら最近ではだんだんとサービス化をしているといわれています。実際にデータを見ていくと、製造業だけれども、日本には生産拠点をまったく持たず、本社機能と研究開発しかやっていないという企業もあります。そういった企業が増えているため、研究開発が生産性に与える影響を正しく捉えることが難しくなってきていると思います。つまり、日本の製造業だけ見ていると、すごく損をしていると言いますか、何のために研究開発をやっているんだというふうにしか見えないということになってくるので、やはりサービス業の生産性にもどういう影響があるかということも見ていかなくてはならないと思います。

中島:
ただサービス業の場合には、特許は難しいのではないですか。

池内:
それはおっしゃるとおりです。どうしてもサービス業より製造業の方が特許を出す傾向が強いと思います。特許というのはイノベーションの一部であり、イノベーションそのものではありません。それはあくまでもアイデア、技術の発明なので、それがどういう新しい機能や性能をよくしたのか、そういうイノベーションを直接測るということも今後やっていきたいなと思っています。

そこで私がいま注目しているのは、新聞記事やプレスリリースです。企業が何か新しい製品を世の中に出す時にはなるべく広めたいのだと思います。その時には自社のホームページでプレスリリースを打ったり、あるいは新聞にそれが取り上げられるという形で、世の中に新製品、新サービスの情報が出てくるわけです。

そのデータをうまく活用することによって、特許にはならないけどイノベーションが生まれてくる、あるいは特許がどういったイノベーション、あるいは新製品、サービスに結びついているのかという分析につなげられるのではないかと思っています。

中島:
それも大変な労力がかかりそうな話ですけど、AIなどを使うのですか。

池内:
特許や論文のもそうですが、プレスリリースや新聞記事は数値データではなく、テキストデータです。まず、そのデータをコンピュータで分析できる形にする必要があります。その後に、たとえばどういう内容のプレスリリースがどんなイノベーションを表しているのか、分析していこうとすると、どういうキーワードが入っているのか、キーワードの組み合わせみたいなことで表していく必要があるわけです。それを分析していくためには、おっしゃるとおり、AIなどの技術が活用できる領域かなと思います。

中島:
いずれにしろ、とても地道な作業で、いろいろと大変だと思いますが、日本としてどうやってイノベーションをやっていけばいいかという極めて大事な研究ですから、スピードアップして進めていただければと思います。

池内:
そうですね。ただ、私1人ではなくて、基本的にはチームで分析を進めて研究を行っています。こういった地道なデータの作業についても、チームの中での、知識のスピルオーバーやコラボレーションといった外部性を活用していくことが重要だと思っています。

中島:
なるほど。研究する方も、まさに外部性を生かしてということですね。

池内:
そうですね。いわゆるビッグデータ、あるいはテキストデータのような非定形型のデータを扱って分析をしていこうとした場合には、1人でできることというのは限界があると思います。また、今まで私たちが行っていた研究は、日本国内の特許データや企業のデータを使っていたのですが、イノベーションの源泉となる知識には本来国境はありません。

中島:
そうですよね。先行研究にしても、世界中にむしろあって、日本の国内だけで完結するわけじゃないですよね。

池内:
ですから、分析結果の国際比較や海外の大学と日本の企業がどのようにコラボレーションをしているか、そういった分析もしていきたいと考えています。そのためには、日本国内のデータだけではなく、海外のデータともリンケージを図り、国際的に統合したデータを分析に活用していくことが必要になってくると思います。

そう考えると、とうてい1人ではどうしようもありません。データはあったとしても、分析できる形に揃えるだけでも非常に大変な作業ですので、国際的な連携に力を入れていきたいと思っています。

中島:
お話を聞けば聞くほど大変ですけれども、ぜひ頑張ってください。

池内:
ありがとうございます。

中島・池内2ショット写真
2016年12月16日開催

2017年2月2日掲載