赤井 伸郎

『行政組織とガバナンスの経済学』がエコノミスト賞を受賞

感謝の言葉

このような名誉ある賞を頂き心より感謝します。これまでの研究成果を、こうして少しでも認めて頂けたこと、研究者としてこれほど嬉しいことはございません。

はじめに、本間正明先生にお礼の言葉を述べさせていただきます。本間先生は、私の学部時代のゼミの先生であり、その後も大学院で指導教官としてお世話になりました。私の恩師にあたります。将来性も分からない自分を、大学院まで導いていただき、時にはやさしく時には厳しく指導していただいたからこそ、今の自分があるのだと、大変感謝しております。さらに、大阪大学大学院在籍当時、私の専門分野公共経済学では、八田達夫先生、福島隆司先生、井堀利宏先生を始め、現在東京でご活躍されている数多くの先生方のいらっしゃる良い環境の中、さまざまなスタイルの教育方針で、様々な研究ツールを学ぶことが出来ました。ここにご出席くださっている大竹文雄先生からも院生時代には共同研究を通じて数多くのことを学びました。これが、今の私にとって貴重な財産となっております。

著書について

本書は、行政組織に着目し、そのガバナンスのあり方を分析しています。組織の問題は、近年、企業統治の観点で着目されるようになり、急速に経済学的分析が行われるようになっています。一方で、行政組織に対する経済学的な分析は、まだまだ希薄であり、このような状況において、本書は、組織の契約理論を念頭に置きながら、非効率な政策を生み出す根源となる、行政組織と、そのガバナンスの欠如の問題を、理論的・実証的に分析しようとしました。

特に、その当時は問題点が指摘されながら目が背けられていた、政府組織の外郭団体(独立行政法人、地方公社、第三セクターなど)の分析に取り組んだことが、本書の価値を高めることにつながったのだと思います。現在、この組織の実態把握が、日本の行政組織ガバナンスで最も重要な要素の1つとなっていることからもそのようにいえるのではないでしょうか。

また、私は、制度・データはもちろんのこと、現場の方と積極的に議論し、その裏側にある要因などを見出すことが重要だと考えており、分析の際には、担当者と議論することを大事にしました。これも、分析の中身を深める上でとても必要なことであると思っております。ヒアリング調査では、研究をご理解していただけた総務省や財務省の方に担当者を紹介していただき、意義のある調査が出来ました。大変感謝しております。

今後の研究活動について

本書籍を発刊した後も、同様の分野で、ガバナンスの分析を進めております。昨年は、空港運営に関わる行財政制度の実態とそのガバナンスのあり方や、地方の有料道路に着目し、その道路を運営する道路公社のガバナンスを、数多くのヒアリングと新たなデータを下に分析しました。さらに、教育の財政制度にも興味を持っており、国の国立大学に対するガバナンスとしての運営費交付金の分析や、義務教育の財源保障制度の国際比較なども行いました。これらも含めまして、本書の続編を刊行できればと思っております。

最後に

最後になりましたが、審査委員長の石弘光先生を始め、本書の審査委員を勤めてくださった皆様方、さらに、今まで、私の仕事をずっと温かく見守ってくれている妻と息子に感謝したいとおもいます。また、本日は、息子の誕生日でもあり、将来忘れることの出来ない日となるでしょう。まだまだ未熟ではございますが、今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。