執筆者 | 劉 洋(研究員)/萩原 里紗(明海大学) |
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発行日/NO. | 2023年3月 23-E-023 |
研究プロジェクト | 人手不足社会における外国人雇用と技術革新に関する課題の実証研究 |
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概要
近年、経済的なアウトカムに対して、文化(人々の価値観や信念)による影響が注目されるようになり、経済的・社会的要因と文化的要因を識別するために、受入国国民と移民のデータを比較する分析アプローチ(Epidemiological Approach in Economics:EAE)が開発された。本研究はEAEを用いて、日本在住の日本人と外国人の既婚女性における労働参加の決定要因を明らかにする。
本研究の分析結果からは、以下のことが明らかになった。これまで、女性の労働市場での活躍を制約する要因には、男女間格差、長時間労働、税制度など、就労に関する経済的・社会的環境が指摘されてきた。しかし、日本に長期滞在する外国人女性は、日本人女性と同様の環境に直面しているにも関わらず、労働参加率が日本人女性より有意に高いことが示された。また、「世界価値観調査」に基づく文化の変数を分析に取り入れた結果、女性就労に対して、経済要因と文化要因の両方が有意な影響を与えることが分かった。最後に、本研究の要因分解に用いた分析モデルでは、日本人と外国人の既婚女性の労働参加率の差を93.6%説明でき、そのうち、文化要因は25.8%、女性本人の教育水準は21.1%、夫の教育水準は23.6%を説明できることが示された。以上の結果は、政策インプリケーションとして、(1) 外国人受け入れ政策に対しては、日本に長期滞在する外国人女性の労働参加率が日本人女性より高いことから、人手不足対策としての外国人女性の受け入れが有効であることと、(2) 女性就労政策に対しては、『女性版骨太方針2022』にあるような、「女性の経済的自立」、「男性の家庭・地域社会における活躍」に関する社会的な価値観を普及することは、女性就労の促進に寄与する可能性が高いことを示唆する。
概要(英語)
This is the first study to examine Japanese female labor force participation (LFP) applying the epidemiological approach in economics (EAE), which identifies the roles of cultural and economic factors in determining economic outcomes using native and immigrant data. Although certain economic and social factors discourage women from working, we find that the probability of married female LFP of long-term immigrants is significantly higher than that of natives, controlling for human capital, family, and region of residence. The estimation results indicate that the LFP decision is significantly affected by both economic and cultural factors, that is, the social attitude toward being a housewife in the country of origin. Finally, the decomposition results show that our estimation model successfully explains 93.6% of female LFP difference between natives and long-term immigrants, with culture having the largest contribution, greater than that of the women’s own education and that of their husbands.