日本語タイトル:経済集積・分散の空間範囲:理論的基礎と実証的示唆

Spatial Scale of Agglomeration and Dispersion: Theoretical foundations and empirical implications

執筆者 赤松 隆 (東北大学)/森 知也 (ファカルティフェロー)/大澤 実 (東北大学)/高山 雄貴 (金沢大学)
発行日/NO. 2017年12月  17-E-125
研究プロジェクト 経済集積の空間パターンと要因分析のための実証枠組の構築
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概要

本論文は、既存の経済地理学モデル群を多地域経済の下で定式化し、共通の解析手法を用いてそれらの挙動を統一的に分析・整理することにより、多地域経済において実現し得る経済集積パターンについて一般的な結果を得た。経済集積モデルには、一般的に集積力と分散力が含まれ、とりわけ、分散力が作用する空間範囲がモデルの挙動を決定づける。既存のモデル群は、分散力の空間範囲が大域的か局所的かにより2つの基本クラスに分類できる。これらの分散力は、数理的には、前者がモデルの距離構造に依存するのに対して、後者が独立である点で異なる。クラス間の挙動の違いは以下の2点に集約される。第1に、大域的・局所的分散は、それぞれ高い・低い輸送費用の下で起こる。従って、両方の分散力を持つ現実的なモデルにおいては、輸送費低下により大域的集積と局所的分散が同時に起こる。第2に、複数の集積が存在する多極経済は、大域的分散力の下でのみ実現され、局所的分散力のみを持つモデルにおいて起こる集積は、常に単峰の人口分布に限られる。得られた理論的知見は、経済集積に関する既存の誘導系回帰分析および構造モデル分析が示す多様な結果を統一的に理解することを可能にし、また、それらのモデル構造・分析手法・検定仮説における問題点を明らかにした。更に、一般的な集積モデルに基づく検定可能な仮説を提示し、今後の実証分析の新しい方向性について示唆を与えている。

概要(英語)

This paper studies the theoretical properties of existing economic geography models with agglomeration and dispersion forces in a many-region setup, rather than their original two-region space, to investigate the spatial scale—global or local—of agglomeration and dispersion intrinsic to each model. We show that models in the literature reduce to two canonical classes that differ starkly in their engendered spatial patterns and comparative statics. Our formal results offer a consistent explanation for the set of various outcomes from the extant reduced-form regression analyses and also provide qualitative predictions of the treatment effects in the structural model-based studies on regional agglomeration.