プロジェクト概要
2010年度
開発援助に関する国際的議論は大きな転換点を迎えている。開発援助の在り方そのものが、成長支援から直接の貧困削減支援へ、プロジェクト中心から財政支援中心へ、融資中心から債務削減・グラント中心へ、バイからマルチへと大きく重心を動かしたことが第1の背景である。第2には、リーマンショック以来、世界的な不況が続く中、従来貧困の罠に陥っていると考えられてきたサブサハラアフリカ諸国が持続的な成長を示し始めたこと、第3には、2010年1月にOECDのDACに加入し、正式な援助ドナーとなった韓国や、資源開発などを目的に独自の援助を拡大させている中国などが頭角をあらわし、世界の援助ドナー地図が大きく変化しつつあること、第4には、これらの流れの中で、援助と民間資金の移動との連携が進んでおり、PPP(官民連携)やBOPビジネスなどの新たな流れが生じており、ODAの性格が大きく変貌しつつあること、があげられる。2006~09年度に実施した「開発援助のガバナンス構造プロジェクト」「開発援助の先端研究プロジェクト」では、エビデンスに基づきながらアジアとアフリカのマクロ的な援助効果の違いを体系化し、ドナーの援助配分行動や技術協力の効果を測定し、さらに開発援助における官民連携の研究として、ベトナムを例にとり、国際協力を通じて災害リスクを管理・対処するための保険機能構築のミクロ的な基礎研究を行った。これら諸研究の成果を受け、2010年度はさらに、1)世界におけるさまざまなリスク、すなわち自然災害リスク、経済危機のリスク、紛争のリスク、が及ぼす厚生水準低下の程度について、国際比較パネルデータを用いて厳密に比較すること、2)自然災害が世帯の厚生に及ぼす影響について、ベトナムのミクロデータを用いて数量化すること、3)ODAにおける官民連携の在り方について、日韓のケースをとり、さらに日本と韓国のODA協力の可能性についての政策的検討を行う。
2008年度~2009年度
経済成長支援から直接の貧困削減支援へ、プロジェクト中心から財政支援中心へ、融資中心から債務削減・グラント中心へ、バイからマルチへと国際的な開発援助に関する議論が大きな転換点を迎えている。2006~08年度に実施した「開発援助のガバナンス構造プロジェクト」「開発援助の先端研究プロジェクト」では、エビデンスに基づきながらアジアとアフリカのマクロ的な援助効果の違いを体系化し、ドナーの援助配分行動や技術協力の効果を測定することを目的とした。これら研究の成果を受け、2009年度はさらに、1)国際協力を通じた災害リスクを管理・対処するための保険機能構築の基礎研究、2)援助の経済成長促進効果についての因果関係解明、を発展させて研究する。
2007年度
経済成長支援から直接の貧困削減支援へ、プロジェクト中心から財政支援中心へ、融資中心から債務削減・グラント中心へ、バイからマルチへと国際的な開発援助に関する議論が大きな転換点を迎えている。2006年度に実施した「開発援助のガバナンス構造プロジェクト」では、エビデンスに基づきながらアジアとアフリカのマクロ的な援助効果の違いを体系化することを目的とした。これらマクロ研究の成果を受け、2007年度はさらに、(1)国際協力を通じた災害リスクのプーリングに関する保険機能構築のための基礎研究、(2)企業データを用いた技術協力の計量経済学的インパクト評価、を加えて研究する予定である。
プロジェクト期間: 2007年7月23日 〜 2011年3月31日
主要成果物
2010年度の成果
RIETIディスカッション・ペーパー
- 11-E-023
"Aggregate Impacts of Natural and Man-made Disasters: A quantitative comparison" (SAWADA Yasuyuki, Rima BHATTCHARYAY and KOTERA Tomoaki) - 11-E-017
"Self-Production, Friction, and Risk Sharing against Disasters: Evidence from a developing country" (SAWADA Yasuyuki, NAKATA Hiroyuki and KOTERA Tomoaki)
RIETIポリシー・ディスカッション・ペーパー
2009年度の成果
RIETIディスカッション・ペーパー
- 10-E-009
"Entropy Characterisation of Insurance Demand: Theory and Evidence" NAKATA Hiroyuki, SAWADA Yasuyuki and TANAKA Mari) - 10-E-008
"Asking Retrospective Questions in Household Surveys: Evidence from Vietnam" NAKATA Hiroyuki, SAWADA Yasuyuki and TANAKA Mari) - 09-E-055
"Aid effectiveness, Governance and Public Investment" (KASUGA Hidefumi and MORITA Yuichi) - 09-E-023
"Consumption Insurance against Unforeseen Epidemics:The Case of Avian Influenza in Vietnam" (TAMURA Sakuya and SAWADA Yasuyuki)
国際ワークショップ
- 2009年9月15日
「発展途上国における貧困と脆弱性」
関連ウェブサイト
2008年度の成果
RIETIディスカッション・ペーパー
- 09-E-001
"On the Role of Policy Interventions in Structural Change and Economic Development: The Case of Postwar Japan" (Julen ESTEBAN-PRETEL and SAWADA Yasuyuki) - 08-E-039
"Aid Allocation across Sectors: Does aid fit well with recipients' development priorities?" (KASUGA Hidefumi) - 08-E-025
"Is Aid Allocation Consistent with Global Poverty Reduction?: A Cross-Donor Comparison" (SAWADA Yasuyuki, YAMADA Hiroyuki and KUROSAKI Takashi) - 08-E-024
"Impacts of Aid-Funded Technical Assistance Programs: Firm-Level Evidence from the Indonesian Foundry Industry" (TODO Yasuyuki) - 08-J-065
「援助配分は貧困削減と整合的か? ドナー間比較」 (澤田 康幸、山田 浩之、黒崎 卓) - 08-J-035
「日本のODAによる技術援助プログラムの定量的評価-インドネシア鋳造産業における企業レベルデータ分析-」 (戸堂 康之)
国際ワークショップ
- 2008年9月19日
「援助と経済発展」
関連ウェブサイト
2007年度の成果
RIETIディスカッション・ペーパー
- 07-E-051
"Foreign Aid and Recurrent Cost: Donor Competition, Aid Proliferation and Budget Support" (ARIMOTO Yutaka and KONO Hisaki) - 07-E-050
"The Millennium Development Goals and Aid Allocation: Which donors give high-quality aid?" (KASUGA Hidefumi) - 07-E-048
"Intertemporal Distribution of Foreign Aid" (TAKASE Koichi) - 07-E-045
"On the Role of Technical Cooperation in International Technology Transfers" (SAWADA Yasuyuki, MATSUDA Ayako and KIMURA Hidemi) - 07-E-044
"Aid Proliferation and Economic Growth: A Cross-Country Analysis" (KIMURA Hidemi, SAWADA Yasuyuki and MORI Yuko) - 07-J-041
「開発援助と経常費用 ドナー間競争、援助の氾濫、財政支援」 (有本 寛、高野 久紀) - 07-J-032
「国際技術移転における技術協力援助の役割」 (澤田 康幸、松田 絢子、木村 秀美) - 07-J-031
「援助氾濫と経済成長 :クロスカントリーデータによる分析」 (木村 秀美、澤田 康幸、森 悠子) - 07-J-030
「ミレニアム開発目標と援助配分:質の高い援助を行っているのはどの供与国か?」 (春日 秀文)