プロジェクト・チーム・リーダー
山口 一男
シカゴ大学
シカゴ大学社会学教授。専門は社会統計学、社会的不平等、就業と家族、合理的選択理論。主な著書『働き方の男女不平等:理論と実証分析』日本経済新聞社(2017年)。
男女平等な社会の実現についての思いを一言
私の高校同期の女性たちには能力的に見て私に勝るとも劣らない人が多くいたのですが、そのほとんどが結婚・育児期に離職し、その後は仕事を得ようにも「パートのおばさん」的職しかない時代を経験しました。女性の職業能力はその後も大部分生かされないまま日本は現在に至っています。その間私が住んだ米国では国民の富の増加は女性たちが作り出したとも言える状態に変わりました。歴史に「もし」と言ってよいなら、もし日本も男女が同等に活躍できる社会に移行していたなら、「失われた30年」はなかったろうと思えます。男女平等な社会の実現は、同期の悔しい思いをした女性の友人たちのいわば「かたき討ち」でもあり、また日本の豊かさの再生の道と信じて疑いません。性別、世代、専門分野を超えて共同でその道を探るこのプロジェクトのチーム・リーダとして何とか社会を突き動かす力の一端を担えたらと思います。
プロジェクト・チーム・メンバー
朝井 友紀子
シカゴ大学ハリス公共政策大学院特任助教授
兼職として、早稲田大学組織経済実証研究所招聘研究員。専門は労働経済学、人事経済学。主な論文に、「Temporary Work Contracts and Female Labor Market Outcomes」(『Journal of Economic Behavior and Organization』Vol.208)、「Parental Leave Reforms and the Employment of New Mothers: Quasi-experimental Evidence from Japan」(『Labour Economics』Vol.36)などがある。
男女平等な社会の実現についての思いを一言
「男女平等な社会」の実現は女性が能力を最大限発揮するために欠かせないものです。私はこれまで「女性である」という理由で何度か困難に直面し、挫折しそうになりました。同じような経験をしている女性は数多いと思います。未来の世代の女性達が「女性である」ことにより辛い思いをしたり、やりたいことを諦めないといけないということがないように、このプロジェクトのチームメンバーとして社会の意識を変える一端を担えればと考えています。
伊芸 研吾
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授
一般社団法人エビデンス共創機構代表理事、東京財団政策研究所主席研究員を兼任。専門は応用計量経済学、教育経済学。
男女平等な社会の実現についての思いを一言
私には息子が一人おり、保育園の送り迎えなどを通じて息子と同じ年頃の女の子の知り合いがたくさんいます。彼女たちは活発で、明るく、それぞれ個性があり、可能性に満ちあふれ、息子と共に長く成長を見届けてきた者として、今後もすくすくと成長し続けてほしいと心から願っています。彼女たちの可能性が社会環境によって制約されることはあってはなりません。しかし残念ながら、これまで別の多くの「彼女たち」の可能性が閉ざされ、今まさに課題に直面している「彼女たち」がいます。ひょっとすると、すでに彼女たちの可能性は制約され始めているかもしれません。「彼女たち」の可能性を少しでも広げるために、私にできることはデータ分析をし、エビデンスとしてまとめ、世に訴えることしかありません。本プロジェクトでは、研究者という第三者的な立場から少し踏み込んで、困っている知人の味方として、研究に取り組む所存です。
大湾 秀雄
早稲田大学
鈴木 恭子
中央大学文学部 准教授
専門は、産業/労働社会学・ジェンダー研究・労働市場や雇用における格差と不平等について。コンサルティング会社、および(独)労働政策研究・研修機構を経て現職。ケンブリッジ大学MBA、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。
男女平等な社会の実現についての思いを一言
私たち女性にはもっともっと自由が必要だと、私はこれまで多くのものを求めてきました。いま、かつての自分には聴けなかった声があることを痛感します。それは、女性である私もまた別の面で、日本の企業社会において他者を抑圧し踏みつける構造の一部であるということです。日本においてジェンダー格差は、雇用形態や企業規模(サプライチェーン)にかかわる不正義などと交差し、互いを支え合い、労働市場の構造を織り上げています。男女平等への取り組みを通じてその先に何を目指すのか―。社会の一部である自分自身の責任を引き受けつつ、ジェンダーの不平等も他の構造的不正義も、ともに解決することを目指します。
中室 牧子
慶應義塾大学
男女平等な社会の実現についての思いを一言
私が就職したのは、その前年に女性であることを理由とする差別的扱いの禁止が定められた男女雇用機会均等法の改正があった1997年の翌年である1998年でした。日本銀行に総合職として就職しましたが、男性と区別して、女性だけは制服の着用が義務だったり、エレベータの「開ける」というボタンは女性が押すと決まっていたり、女性は廊下の真ん中を歩いてはいけないという古色蒼然とした慣習がありました。法律は変わっても現実はこんなものかと失望していたところに、私が入行した年に女性初の日本銀行政策委員会審議委員になられた労働経済学者の篠塚英子さんがこの状況に問題意識を持たれたことで、制服は廃止になり、おかしな慣習もなくなっていったことを記憶しています。それまで制度や慣習というものは何となく「変わって」いくものだと思っていましたが、実は誰かが意思を持って「変えて」いるのだということを知った初めての経験だったかもしれません。今、当時の篠塚さんの年齢に近づき、様々な研究成果を根拠として、自分にも「変える」行動力や勇気があるようにしっかり精進したいと思っております。
山口 慎太郎
東京大学
横山 広美
東京大学教授。東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構副機構長、学際情報学府大学院兼担。
東京大学教授。東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構副機構長、学際情報学府大学院兼担。専門は科学技術社会論、特にAIや機構工学等・倫理的課題のある科学技術のELSI/RRI、STEMジェンダーの社会風土、科学的助言の在り方など。
代表論文・論説等:https://member.ipmu.jp/hiromi.yokoyama/yokoyama.html
男女平等な社会の実現についての思いを一言
日本では理系女性が極めて少ない状態が続いており、これについて原因となる社会風土の研究をしています。本プロジェクトでは、国際社会比較に加えて都道府県別に比較することで、日本に対する処方箋を見つけていきたいと思っています。誰もが自由に理系の学問を学び、力を発揮できる社会になることに貢献できたらと願っています。
アドバイジング・オブザーバー
大沢 真知子
日本女子大学名誉教授
2021年3月まで日本女子大学教授。2013年から2021年まで日本女子大学現代女性キャリア研究所所長。現在は同研究所特任研究員。専門は労働経済学。
近著書は『「助けて」と言える社会へー性暴力と男女不平等社会』(西日本出版社、2023)『なぜ女性の管理職は少ないのか』共編著(青弓社、2019) 『女性はなぜ活躍できないのか』(東洋経済新報社、2015a)など。内閣府男女共同参画会議の専門調査会など政府の委員を歴任。現在は、東京都女性活躍推進会議専門委員。
男女平等な社会の実現についての思いを一言
1980年代、先進国を中心に24カ国の労働経済学者が集まり女子労働に関する国際会議が開かれました。私は、その論文の分析結果をまとめるお手伝いをしたのですが、どの国も共通に女性の賃金率の上昇が女性の労働力率の上昇を促進していることが実証されました。経済のサービス化は女性の社会進出を促進するのだと確信を持ったのです。帰国し、訪れるであろう変化を待ち続けていますが、日本の男女平等社会への実現の歩みは鈍く、どうしてだろうと考えているところです。このプロジェクトで皆さんとともに、実現への道筋を展望したいと思っております。
大隅 典子
東北大学経営戦略本部アドバイザー、教育研究評議員、大学院医学系研究科発生発達神経科学分野教授
東北大学経営戦略本部アドバイザー、教育研究評議員、大学院医学系研究科発生発達神経科学分野教授。主な著書等『理系女性の人生設計ガイド 自分を生かす仕事と生き方 (共著、講談社ブルーバックス、2021年)』、『女性が科学の扉を開くとき: 偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る(監訳、東京化学同人、2023年)』。
男女平等な社会の実現についての思いを一言
「男女平等な社会」を目指すことは、公正で包摂的な世界を構築する上で非常に重要です。すべての個人が性別に関係なく平等な機会を享受することが、社会全体の革新と発展を促進します。教育、職場、政治の各分野での平等は、多様な視点とスキルが活かされることを意味し、これが経済的及び社会的進歩を加速する鍵となります。男女平等を実現するためには、「無意識のバイアス」のような固定観念の打破と政策の改革が必要です。教育から始めて、性別に基づく偏見をなくし、すべての人に対して平等なチャンスを提供することが求められています。
川本 裕子
人事院
小室 淑恵
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長 金沢工業大学客員教授
産業競争力会議民間議員 経済産業省 産業構造審議会等歴任。
主な著書『プレイングマネジャー 残業ゼロの仕事術』ダイヤモンド社(2018年)
男女平等な社会の実現についての思いを一言
3000社の働き方改革を支援してきて、経営者にはあえてこのように解説しています。
ジェンダー平等ランキングで日本と近い順位にある国々は女性の教育と健康が未だ保証されていないことが課題で女性が活躍できていない。ところが日本は「世界で最も教育されて健康な女性」が活躍はおろか、労働市場に出られてもいない。優良な資源が埋まっている大地をあえて掘らないなんてこと、経営者としてあり得ますか?日本が獲らなければ他国がその資源を獲る競争なのです。国内では先んじてやれば勝てるという、数少ない先行優位性のある競争分野ということです。また「女性は管理職になりたがらない」と言いますが、そうではなくて女性は「今目の前にいる管理職(家庭崩壊)のようにはなりたくない」のです。休日や時間外に呼び出され、転勤が昇進ルートに必須というような働き方の問題を解決しないままの女性活躍は、支える家族も限界がきます。
坂本 里和
内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局 次長
1995年通商産業省入省。2011年より3年間、経済産業省経済産業政策局経済社会政策室にて、ダイバーシティ経営等を担当。その後、中小企業庁創業・新事業促進課長、商取引監督課長、経済産業政策局産業組織課長、同総務課長、大臣官房会計課長を経て2023年より現職。
男女平等な社会の実現についての思いを一言
経済産業省で、企業価値向上のための経営課題として、ダイバーシティ経営の推進に携わって以来、このテーマの重要性を強く感じてきました。性別役割分担についての人々の意識が根っこにあり、制度や理屈だけでは解消できないところがこの問題を難しくしていますが、日本経済にとっても、そして何より、一人一人が自分らしく生きやすい社会を実現するためにも、根気強く取り組まないといけない課題であり、本プロジェクトにおける実証研究が大きな力になると確信しています。
治部 れんげ
東京工業大学
白波瀬 佐和子
東京大学
相馬 知子
経済産業省経済産業政策局経済社会政策室
経済産業省経済社会政策室長。大学卒業後(株)日立製作所入社。事業部門・工場・海外拠点・本社にて幅広く人材・組織関係の業務に従事。2020年からはChief Diversity & Inclusion Officer直属チームのマネージャーとして、グローバルでのダイバーシティ推進体制整備・方針策定・施策実行を担当。2023年8月より現職。
男女平等な社会の実現についての思いを一言
すべての人が楽しく生き生きと働ける環境作りに貢献したいとの思いを持ちながら、企業で20年超、人事関連業務に従事してきました。様々なスキル・属性のメンバーがグローバルに集うチームをマネジメントした経験から、多様性が生み出すパワーを実感しています。ジェンダーのテーマには学生時代より興味がありましたが、2020年以降企業のDEI専任者として、2023年8月以降は政府の立場で関わるようになり、改めて社会構造や文化的規範、一人一人の経験に基づく価値観など、幅広い要素が絡み合ったテーマであることを感じています。今回オブザーバとしての参加となりますが、日本におけるジェンダー平等を実現するためのプロジェクトに少しでも貢献できればと考えております。
西垣 淳子
石川県
浜田 敬子
リクルートワークス研究所
林 伴子
内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)
東京大学卒業、LSE経済学修士号取得。
専門:マクロ経済政策。主な著書:『マクロ経済政策の「技術」-インフレ・ターゲティングと財政再建ルール』(2003年日本評論社)、『インフレ目標と金融政策』(2006年東洋経済新報社、伊藤隆敏との共著)
旧経済企画庁入庁後、内閣府海外経済分析担当参事官、経済対策・金融担当参事官、大臣官房審議官(経済財政分析担当)、OECD経済政策委員会副議長、内閣府男女共同参画局長等を経て現職。
男女平等な社会の実現についての思いを一言
いわゆる官庁エコノミストとして、経済財政諮問会議の事務局や「骨太の方針」・経済対策の立案・調整、OECD加盟国の経済政策審査をはじめ、経済政策業務に30年以上携わり、内閣府の同僚も、カウンターパートの財務省や経済産業省、日本銀行も、ほとんど男性職員ばかりのこの分野で、いつも紅一点で頑張ってきました。
ところが、2020年夏、それまでまったく携わったことのなかった男女共同参画分野の局長に就任し、男女間賃金格差もシングルマザーの貧困率も先進国最悪の部類という、日本の男女平等の実態を示す数々のデータに強い衝撃を受けました。男女共同参画局長として、こうした状況を改善すべく、コロナ禍で急速に困窮した女性への支援策を手始めに、企業・政府・自治体の男女間賃金格差の開示義務化、理系・デジタル女性人材育成支援、地方議会のセクハラ対策から、DV対策強化・法改正、AV(アダルトビデオ)出演被害女性の救済法制定まで、日本の女性がさまざまな場で直面する困難や課題に一つひとつ対応し、官邸・各省や関係者のお力も借りながらさまざまな施策を立案、実現しました。しかし、ジェンダーギャップ指数125位というだけあって課題は山積、2年の任期ではまったく時間が足りませんでした。
かつて赴任していた英国やフランスでも、思い返せば20年ほど前までは女性差別を感じることもありました。でも、今は、閣僚や中央銀行総裁、企業のトップなど、女性が活躍するのはあたりまえの風景。彼女たちがまた、後に続く女性のために、より生きやすい社会をつくっていくという好循環が生まれていると思います。
現在は、もとの経済政策のキャリア・トラックに戻り、月例経済報告や経済財政白書等、景気の判断や内外の経済分析の部局長を務めております。後に続く日本の女性たちの道を広げていくことに微力ながら貢献できるよう、男女共同参画局長時代の経験を活かし、このプロジェクトのオブザーバーをお引き受けした次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
坂東 眞理子
昭和女子大学
宮本 悦子
厚生労働省中央労働委員会事務局審議官(審査担当)
旧労働省入省後、本省旧労働部局、在外大使館、自治体、地方労働局などの勤務を経験。
男女平等な社会の実現についての思いを一言
私が就職活動をした時には、男女雇用機会均等法が施行されて数年という時で、女性の企業への就職や活躍はこれから、という状況でした。
女性が活躍できる社会にしていきたいと思い、旧労働省に入省し、これまで様々な取組をしてきました。今は、育児介護休業法の改正に取り組んでいます。
ここ最近、女性をめぐる状況は大きく変わったと感じますが、より一層女性が活躍できる環境を整えていきたいと思っています。
矢島 恵理子
人事院事務総局 国際課長
人事院人材局首席試験専門官、外務省国際連合日本政府代表部一等書記官(New York)など経験。専門は心理学(M.Sc.(Oxford University)、『Adaptation and Well-being among Japanese Expatriates in the UK』)。国家資格キャリアコンサルタント。
男女平等な社会の実現についての思いを一言
専門の心理学を活かし、男女の差がなく、結婚後・出産後も働ける職業に就きたいと思い、国家公務員採用試験を受け、人事院に採用になりました。若い頃には男性と同じ超過勤務をしました。出産を経て、NYへの赴任には、夫と6歳の娘を帯同しました。海外では多くの母親外交官が活躍している一方、日本では私のようなケースは稀でした。帰国後、日本の国家公務員の母親向けの研修講師をした際、「海外赴任などごく一部の恵まれた母親しかできない」という意見がありました。確かに私は、周囲の支えに恵まれたからこそキャリアを積めたのだと気付かされました。さらに40代に闘病経験をしたとき、テレワークなどが普及しておらず、仕事と病気の両立に苦しみ、日本の働きやすさの改善の必要性を強く感じました。女性の働きやすい社会を作ることは、男性、介護中や闘病中の方、高齢の方等を含む全ての人を尊重する社会になると考えております。
矢島 洋子
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 執行役員/主席研究員
専門は、少子高齢社会対策、ダイバーシティ経営、女性活躍推進。主な著書『シリーズダイバーシティ経営 仕事と子育ての両立』中央経済社(2024年)
男女平等な社会の実現についての思いを一言
女性の活躍が困難なのは、「女性の意識」の問題であるとか、合理的な経営を目指す「企業の論理」に反するためである、といった論説に対して、反証を示したいと考えます。むしろ、フルコミットできない人材がこんなにいるにも関わらず、柔軟な働き方の選択を可能とし、柔軟な働き方を選択した人が公正に評価され、積極的なキャリア形成をはかることのできる組織への変革に取り組んでいないとことが、女性の活躍を阻んでいると同時に、経営にとって大きなリスクであり、その経営判断自体が合理的ではないことを示したいと思います。