ただし、全く何も手がかりがないわけではない。例えば、世界全体の直接投資の傾向を見れば、創業環境が良好な国ほど、対内直接投資が多い傾向にあることが確認されている(Hoshi and Kiyota, 2019)。そして、世界銀行のビジネス環境調査によれば、日本の創業環境は世界の平均以下である(World Bank, 2020)。現在、政府は法人設立手続きの簡素化に向けた取り組みを進めており、2021年2月には法人設立における全手続きがオンライン化・ワンストップ化で可能になる予定である。このような取り組みが実際に機能し、そしてそれが世界に認知されれば、海外から日本への投資は拡大する可能性がある。また、熟練労働と資本のフローの国際的な移動には正の相関が確認されている(Jayet and Marchal, 2016)。このため、高度外国人材の受け入れが進めば対日直接投資も拡大するかもしれない。もちろん、諸外国も同様にビジネス環境の改善に力を注いでいるため、これらの取り組みだけで対日直接投資が爆発的に増えるとは考えにくいが、日本のビジネス環境の魅力を高める上での重要なステップになりうる。
Hoshi, Takeo and Kozo Kiyota (2019) "Potential for Inward Foreign Direct Investment in Japan," Journal of the Japanese and International Economies, 52: 32-52.
Jayet, Hubert and Lea Marcel (2016) "Migration and FDI: Reconciling the Standard Trade Theory with Empirical Evidence," Economic Modeling, 59: 46-66.
Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD) (2020) "Foreign Direct Investment Flows in the Time of COVID-19," OECD Policy Responses to Coronavirus (COVID-19), OECD: Paris.
United Nations Conference on Trade and Development (UNCTAD) (2020) UNCTAD Stat, Geneva: UNCTAD.
World Bank (2020) Doing Business Data, Washington, D.C.: World Bank.