POSでみるコロナ禍の購買動向:家電量販店×地域分析編

小西 葉子
上席研究員

過去2回のコラムでは、コロナ禍で販売増になったもの、販売減になったもの(注1)、小売業の業態別比較で私たちの買い物先を紹介した(注2)。今回は、主にコロナ禍での家電大型専門店(以下、家電量販店)の販売動向を地域別にみていく。データは、経済産業省のBigData-STATSのダッシュボード(β版)(注3)で毎週公表している「METI POS小売販売額指標[ミクロ]」を使用する。

緊急事態宣言で売れていないもの、売れているもの

4月7日に7都府県に緊急事態宣言が発出され、4月17日には全国に拡大された。まず、表1で最新週(4月13日~19日)の前年販売額からの変化率である前年同週比の減少率、増化率のランキングをみてみよう。前年同週比が0%のとき、前年と同額販売され、100%増のときは前年の2倍売れたことを示す。マイナスのときは前年より販売が減少したことを示す。

表1:前年同週比の販売減、販売増ランキング [4月13日~19日の週]
表1:前年同週比の販売減、販売増ランキング [4月13日~19日の週]
出所:経済産業省 BigData-STATSダッシュボード(β版)より著者作成

コロナ禍で販売が減少したのは化粧品や医薬品であるが、当週でも4つの小売業態で化粧品のカテゴリの全て(基礎化粧品、メイクアップ品、その他化粧品)が減少している。2月はインバウンド旅行者の減少、3月以降は在宅勤務、外出自粛、外出時のマスクの着用によりファンデーションや口紅等のメイクアップ品の販売減が顕著である。化粧品売場は感染防止のため、早くから販売員の接客を中止しており、その後、売場のテスターも撤去している店舗が多い。化粧品の中でもメイクアップ品の減少率が大きいことの理由であろう。4月7日、17日の緊急事態宣言により外出自粛が浸透することにより、今後もこの傾向は続くだろう。

一方、販売増の品目は、食料品が目立つ。3月以降は、一斉休校、在宅勤務の奨励、在宅時間と家庭内の在宅人数が増え、自炊の機会も量も増えている。また緊急事態宣言後は、多くの飲食店が20時までの営業となり、自炊の機会は増え、調味料の販売が伸びた。また、販売増のトップ10にコンビニが入っておらず、ドラッグストアとホームセンターがスーパーより上位になっており、私たちはより安さを重視して買い物している。

当週で注目したいのは、パソコンの販売額増である。4月7日の7都府県への緊急事態宣言の週では39.2%増で5位であったが、全国に拡大された最新週は家電量販店でのパソコンの増加率は50.9%と1位であった。5月6日以降も休校や在宅勤務が続くことも見越しての、テレビ会議、リモート授業などへの対応による需要増だろう。

全国の家電販売の動向

本題の家電市場についてみてみよう。図1は全国集計した家電量販店の白物家電(冷蔵庫、洗濯機、エアコン)と黒物家電(テレビ、パソコン)の販売額の前年同週比である。3月以降は、在宅勤務による客足減少、また現状は、全国に約2500ある家電量販店のうち約8割が営業時間短縮、臨時休業が約200店と家電市場は厳しい状況だが(注4)、表1で示したように4月第3週は、パソコンが前年の50.9%増となっている。一方、他の4製品は販売減となっている。

図1:家電量販店の品目別の販売動向の推移(週次)
図1:家電量販店の品目別の販売動向の推移(週次)
出所:経済産業省 BigData-STATSダッシュボード(β版)より著者作成

白物家電の地域別販売動向

図2~4は白物家電の地域別販売動向である。白物家電は、図1にあるように10月1日の消費税率引き上げ前の駆け込み需要後は反動減により販売減が続いている。図2~4で、3月、4月に販売減が大きいのは、例年は新年度準備の需要がある時期だが、コロナ禍で新入学、就職、転勤などが延期された影響と、店舗の休業や営業時間短縮の影響であろう。図2の冷蔵庫、図3の洗濯機は、各地域の動向は全国とほぼ連動している。一方、図4のエアコンは、北海道と東北の動きが全国と異なっている。

図2:冷蔵庫の地域別の販売動向の推移(週次)
図2:冷蔵庫の地域別の販売動向の推移(週次)
出所:経済産業省 BigData-STATSダッシュボード(β版)より著者作成
図3:洗濯機の地域別の販売動向の推移(週次)
図3:洗濯機の地域別の販売動向の推移(週次)
出所:経済産業省 BigData-STATSダッシュボード(β版)より著者作成

図4はエアコンの地域別の販売動向である。北海道・東北(北日本)が、他の地域と異なる動きをしている。前年の当該週や月と比較するタイプの指標の注意点を挙げながらみていこう。まず、もともと北日本では、他地域と比較して人口あたりのエアコンの販売台数が少ない。内閣府の消費動向調査の最新の結果によると(注5)、北日本のルームエアコンの二人以上世帯の普及率は約60%(全国90.2%)で、100世帯当たりのルームエアコン保有台数は136.7台 (全国291.8台)であり、1家に1台の状況である。

次に、全国的にエアコンの販売は夏期に集中しており、冬の終わりから春先はエアコン販売の閑散期である。もともとの販売額(数)が小さい場合には、翌年の同時期のわずかな変化でも前年比較の指標は大きく変動することに注意したい。

近年の異常気象により、北日本でも夏は高温となり、特に2019年は5月の平均気温が平年を2.7度上回り、気象庁の1946年の統計開始以来、最も高くなった。5月26日には北海道佐呂間町で39.5度を観測し、5月の全国の史上最高気温を更新した。これにより、ここ2年は北日本においても熱中症を懸念し、エアコン販売台数が伸びている。

図4:エアコンの地域別の販売動向の推移(週次)
図4:エアコンの地域別の販売動向の推移(週次)
出所:経済産業省 BigData-STATSダッシュボード(β版)より著者作成

黒物家電の地域別販売動向

図5はテレビの販売額の前年同週比の推移である。白物家電と異なり、年明け以降も前年同週比はプラスで推移している。3月第1週は関東・甲越では26.6%増と全国の22.2%増比較して高くなっている。その後各地域で減少が観察されたのは、3月の第5週で、3月24日の東京オリンピックの延期の表明、1都4県の外出自粛要請、季節外れの降雪により週末の客足が減ったことによる。特に関東・甲越では、19.4%減であった。しかし、その後再び、4月に入りプラスに転じている。これは在宅人数、視聴時間の増加によるテレビの需要増が考えられ、オンライン視聴のためのNetflixやアマゾンプライムの契約数の増加も報告されている。4月第3週で関東と近畿の前年よりも販売額が減少しているのは、家電量販店の休業店や営業時間短縮店の中心が関東、近畿地方であることによる。

図5:テレビの地域別の販売動向の推移(週次)
図5:テレビの地域別の販売動向の推移(週次)
出所:経済産業省 BigData-STATSダッシュボード(β版)より著者作成

図6はパソコンの販売額の前年同週比の推移である。GfK社のレポートによると(注6)、平日の在宅勤務要請によるオンライン会議の増加により、インカムやウェブカメラの需要が伸びている。USB接続のウェブカメラは3月の販売台数が前年の4.1倍(310%増)と、パソコン本体よりも関連機器の需要増が先に観察された。

パソコンは、テレビと同様に3月の第5週に販売が減少している。特に関東では、1都4県の外出自粛要請、季節外れの降雪の客足減の影響を受けた。しかし、4月に入り全国的にプラスに転じ、全国に緊急事態宣言が拡大してからは、先に緊急事態宣言が発令された関東・甲越、近畿以外で大幅なパソコン需要増がみられた。7都府県に入っていない北海道・東北は66.8%、東海・北陸は65.2%、福岡のみ対象の中国・四国・九州・沖縄は75%増と前年の1.5倍以上である。現状は、パソコンについては実店舗やウェブサイトで特定のブランドやシリーズに品薄や欠品が生じ、全国的なテレワークの本格化により、ウェブカメラ等のIT・ネットワーク製品は特需となっている。

図6:パソコンの地域別の販売動向の推移(週次)
図6:パソコンの地域別の販売動向の推移(週次)
出所:経済産業省 BigData-STATSダッシュボード(β版)より著者作成

まとめと今後について

7都府県への緊急事態宣言時は、テレワークを実施する従業者が多い大都市圏において、パソコンや周辺機器の需要増が顕著であった。緊急事態宣言が全国に拡大された4月第3週では、残りの地域での需要増も観察された。現在、臨時休業している約200店は関東・関西の大都市に集中し、それ以外の地域でも駅前やショッピングモール内の企業にとって主要な大規模店舗である。また各地で、約2000店が営業時間を短縮し、うち約1200店が4月17日以降に新たに加わった(注4)。つまり4月第3週の地方の需要増は4月17日以前のものであろう。

消費動向調査の最新の結果によると(注5)、全国のパソコンの二人以上の世帯の普及率は77.3%、100世帯当たりの保有台数は123.3台と1家に1台程度である。しかし、今後もオンライン会議、大学等でのオンライン講義化、休校延長が続けば、大学生や子どもたちの需要増が見込まれる。企業や学校が家庭での環境整備を個人に委ねる場合は、パソコンや関連IT機器の流通状態の把握が必要となる。店舗での購入が難しくなっていくなか、当指標には含まれないEC市場やメーカー直販での個人販売やBtoB市場の動向の捕捉が課題となるだろう。

脚注
  1. ^ 小西葉子、RIETI特別コラム:新型コロナウイルス-課題と分析
    「コロナウイルス感染症と私たちの購買行動:POSデータでの記録」(2020年4月2日)
    https://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0554.html
  2. ^ 小西葉子、RIETI特別コラム:新型コロナウイルス-課題と分析
    「POSでみるコロナ禍の購買動向:業態分析編」(2020年4月16日)
    https://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0574.html
  3. ^ 経済産業省、BigData-STATSのダッシュボード(β版)
    https://www.meti.go.jp/statistics/bigdata-statistics/bigdata_pj_2019/index.html
  4. ^ 家電量販店の営業時間短縮・臨時休業情報については、家電量販店各社HPを参照。
  5. ^ 内閣府、消費動向調査、令和2年3月調査、二人以上世帯、主要耐久消費財等の普及・保有状況についてを参照。
    https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00100405&tstat=000001014549
  6. ^ GfKジャパン、プレスリリース、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による家電・IT市場への影響」
    https://www.gfk.com/jp/insights/press-release/2004covid19/

2020年4月28日掲載

この著者の記事