前回のコラム(注1)では、コロナショックで販売増になったもの、販売減になったものを紹介した。今回は、販売チャネルを業態別に調べることで私たちがどこで買い物をしているかを記録していく。今回もデータは、経済産業省、BigData-STATSのダッシュボード(β版)(注2)で毎週公表している「METI POS小売販売額指標[ミクロ]」を使用する。
図1はスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター、ドラッグストアの販売額の前年同週比である。前年同週比が0%のとき、前年と同額販売され、100%のときは前年の2倍売れたことを示す。1月30日のWHOによる非常事態の宣言後、最初に販売増が観察されたのはドラッグストアであった。これは感染予防を意識してマスク、手指消毒剤、除菌シートなどの健康関連品の購入が増加したためである。ここから2月末までの1カ月間は食品のまとめ買いは行われておらず、スーパーマーケットの販売額は例年の水準であったことに注目して欲しい。
次のターニングポイントは2月末のトイレットペーパーについてのデマ拡散と3月2日からの一斉休校と在宅勤務の要請である。私たちは、駐車場があり、ロットが大きく、箱買い、まとめ買いがしやすく割安感のあるホームセンター、紙製品(トイレットペーパー、キッチンペーパー、ティッシュペーパー)を求めてドラッグストア、休校と在宅勤務に備えて食料品のまとめ買いでスーパーマーケットを利用してきた。その後4月第1週(3月30日~4月5日)までスーパーマーケットとホームセンターは食料品と紙製品のまとめ買いが続き、前年同週の販売額を上回っている。
一方、ドラッグストアは3月第2週には前年同週比がマイナスになり、3月第5週まで販売額が減少した。これは、消費者が欲しているマスク、手指消毒剤、除菌シート、トイレットペーパーが店頭から消え、在宅勤務増とインバウンド減により化粧品の大幅販売減(3月第5週:20.7%減)、ドラッグストアの主力製品である医薬品の大幅販売減(3月第5週:30.6%減)の影響である。
ドラッグストアが4月第1週(3月30日~4月5日)に販売額が上がっているのは、図2に見られるように、紙製品の供給が戻り販売額が前年の約1.3倍(28.44%増)、健康関連品も約1.1倍(12.93%増)と上向いたことによる。また、化粧品は4月第1週10.1%減、医薬品も20.3%減と前年同週比を下回っているものの、3月第5週よりは上昇しており、これらの要因によりドラッグの全体の販売額は前年比9.13%増となった。
コロナ禍において、1月末から他の業態と大きく異なる推移をしているコンビニエンスストアでは何が起こっているのだろうか。図3はコンビニエンスストア全体とたばこの販売額の前年同週比である。10月1日の消費税率引き上げ前も他の業態と逆の動きをしており、販売額が大幅に減少している。これは2018年の10月1日にたばこ増税があり、同年9月に駆け込み需要があったためである。ここで注目したいのは、コンビニエンスストアの合計とたばこの販売額が連動していることである。
このPOS販売額指標では、JANコードというバーコードで管理する商品を対象としており、生鮮食品、サンドイッチ、おにぎり、お弁当、総菜、カウンター商材と呼ばれる揚げ物やコーヒーなど(注3)の店舗が独自のインストアコードで管理するものは含まれない。そのため、コンビニの販売額合計に占めるたばこの割合は約半分程度となり、たばこの売り上げ減少がコンビニの販売額の動向に大きく影響を与えている。また新型肺炎への懸念もたばこの販売減に影響しているだろう。
たばこ以外の商品はどうだろうか? 図4はコンビニエンスストアの食品、飲料品、化粧品の販売動向である。いずれも3月以降、下降傾向である。経済産業省の商業動態統計調査によると、2015年から2019年の期間、食品(ファーストフード、日配品、加工品)の販売額のシェアは毎年おおむね64%程度である(注4)。今後も在宅勤務による客足減少が続けば、POS販売額指標に含まれない、おにぎり、サンドイッチ、お弁当、コーヒー等のファーストフードも販売減が続き、われわれの指標より実際の落ち込みはもっと大きくなるだろう。
最後に、筆者が野村證券と経済産業省と共同開発した指標で、各業態の販売勢力図を描いてみる。図5はコンビニエンス志向インデックス(注5)と名付けているが、開発中は「生活防衛指標」と呼んでいた。イメージは、消費税率引き上げや景気の落ち込みなどがあったときに、私たちは買い物をする場所を変えることで、財布を守ろうとするのではという考えである。
この指標は、4業態の中での各業態の販売額シェアを計算し、販売額の規模が異なる4業態を比較するためにそれぞれの2015年の市場シェアを基準として指標化している。値が1のときは、2015年の該当週と同等の市場シェアを有したことを意味する。
この指標においても、コンビニエンスストアが3月以降、市場シェアを損ねていることがわかる。一方、スーパーマーケットとホームセンターは例年よりもシェアを伸ばしていることが分かった。つまり、私たちは便利さよりもまとめ買いのしやすさと、安さを意識して買い物をしているということである。
周知の様に、4月8日より7都府県に緊急事態宣言が発出されている。今後、コンビニエンスストアに限らずオフィス街に近い店舗では、客足が減少し、昼休みや勤務時間後の売上げも減ると考えられる。今後も各業態の動向把握、情報共有に努めていく。