保育の質の把握方法は、教育的な営みとしての保育を把握する観点と、サービスの受け手・利用者の期待・欲求をどれだけ満たしているかの観点から捉えることができる(保育のサービスの直接的な利用者が親であるため、親からみた保育サービスの利便性、たとえば長時間預かりなど)。国際的な保育サービスの質の計測方法は、前者を主体としており、保育環境評価スケール乳児版(Infant and Toddler Environment Rating Scale-Revised; ITERS-R,)が用いられることが多い。これは保育環境を「空間と家具」「個人的な日常のケア」「聞くこと話すこと」「活動」「相互関係」「保育の構造」「保護者と保育者」の7つの側面について数量的に評価するものである。ただ、この指標はアメリカで開発され、日本とは異なる保育観や保育制度に基づく評価であることから、単純にこの評価を日本に適用することは問題があることに留意する必要がある。
藤澤・中室(2017)は、ITERS-Rによって計測された日本の保育環境の質、保育士の質(保育士の資格の有無、教育水準、保育士経験年数)と、乳幼児発達スケール(Kinder Infant Development Scale: 以下KIDSと略記)によって計測された乳幼児の発育状況の相関を検証した。なお、乳幼児発達スケールとは、乳幼児の発育状況について「運動」「操作」「理解(言語)」「表出(言語)」「概念理解」「対子ども(社会性)」「対成人(社会性)」「しつけ」「食事」の9つの領域により評価したものである。
Schreyer, Paul (2010), "Towards Measuring the Volume of Output and Education and Health Services," 2010/02, OECD Publishing, Paris, http://dx.doi.org/10.1787/5kmd34g1zk9x-en