社会的ネットワークと起業:投稿意見

松田 尚子
研究員

まず身近な先例と政策結成への応用を

上席研究員 小野 五郎

提起された問題は起業家だけの問題ではない。「広く浅い関係」「同一メンバーでは良いアイデアは得られない」「情報間隙の結節点にいる人が重要」との話は、組織論や企画形成論では極一般的に当然のことばかり。また、旧通産省は政策起業家として、メンバーが固定された本審議会よりも、ジェネラリストたる事務官の知的ネットワーク(血縁→地縁→知縁)と公的ネットワークとを結びつけた縦断的・横断的かつ重層的勉強会を活用していた(拙著『実践的産業政策論』1992)。また、日本独自とされた総合商社も、かつては華僑を凌ぐとされた。それら身近な先駆者の経験こそまずは再評価し政策に活用すべき。

成功に必要な社会的ネットワーク形成・活用戦略

匿名希望

筆者が指摘する起業家にとって望ましい社会的ネットワーク、たとえば、金融資本獲得のための投資家とのstrong tiesは、成功を目指す起業家が全て強く望むものである。しかし、成功を目指すほとんどの起業家は、投資家とのstrong tiesが持てなくて悩んでいる。もっと突っ込んで言えば、どこを探せば、自分に関心を持ってくれる投資家を見つけることができるのか分からないでいるのである。このような起業家にとって本当に必要なのは、このstrong tiesを持てるようになることに繋がる、より多くの機会を得ることに資する社会的ネットワークの形成とその効果的活用なのである。

起業家が大口増資計画中、投資家が見つからず悩んでいる時に、異業種交流イベントや起業勉強会に参加し、そこでの情報交換から有望な投資家情報をつかむことも考えられるのである。実際に一見、直接的関係がなさそうに見える社会的ネットワークから、予期せぬ成果を得ることができることが多々あるのである。

我が国の起業活動を活性化するためには、筆者が必要と指摘するstrong ties獲得に繋がる潜在的可能性の高い社会的ネットワークの形成・活用戦略こそが、多くの起業家に求められているということも認識した上で、研究の活発化に取り組んでいただければ幸いである。

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