企業の自然な淘汰? それとも不自然な淘汰?:投稿意見

植杉 威一郎
RIETI研究員

中小企業の自然淘汰について

横浜市 経営コンサルタント 志村英盛

中小企業の経営コンサルティングに従事しています。
本論文に関して、下記、愚見2点申し述べます。

1.私は大企業を除く中小企業(従業員規模5人~199人、企業数約244万社)およびミニ企業(従業員規模4人以下、企業数約387万社)で、全体的には、月間限界利益労働生産性が40万円以下、あるいは限界利益労働分配率が70%以上の企業を対象に自然淘汰が進んでいると思います。2002年度のTKCの経営指標によれば調査企業平均の月間限界利益労働生産性は64万円、限界利益労働分配率は55%です。

2.貸出先が破綻すれば金融機関は大きな損失を被るので貸出を続ける、との指摘は正鵠を射ていると思います。しかし私は、そのことよりも、多くの金融機関が長期間赤字を出している企業に対して赤字融資を続けているのは、数代の経営者との数十年にわたる密接な人間関係と経営者の全ての個人資産を担保にとっていることがいちばん大きな原因ではないかと考えています。私は金融機関の多くが、負債比率や生産性がきわめて悪いことを十分承知していながら赤字融資打ち切りを決断できないでいるのは、赤字融資打ち切りが企業を破綻させるのみならず、経営者個人やその家族を破滅させてしまうからと考えています。従って金融機関と破綻企業との取引期間の分析が必要なのではないでしょうか。さらには金融機関が破綻企業の経営者の個人資産をどれだけ処分したかのデータ分析が必要なのではないでしょうか。

御意見ありがとうございます。

研究員 植杉威一郎

ご指摘の点にコメントいたします。

1.生産性の低い企業が退出しやすい傾向にある点は、私たちの分析と同じであります。労働分配率については調べていませんでした、ありがとうございます。我々のもう1つの関心事は、中小企業の退出はご指摘のようなフローの数字で決まるのか、自己資本比率のようなストックの数字で決まるのかであります。中小企業への貸出についてよく指摘されるのは、債務超過であってもキャッシュフローが回っていれば大丈夫という指摘です。これは企業の存続におけるフローの重要性を示しています。一方、最近では検査マニュアルにもありますように、自己資本比率を重視する動きもあります。そのいずれが重要なのかを私も知りたく思っております。

2.中小企業ではご指摘のような点はもちろんあります。しかし、大企業に比べれば、「金融機関が抜き差しならない状態に陥って貸出を続ける」度合いは小さいように思います。それが中小企業における自然淘汰という現象に現れているのではないでしょうか。金融機関が赤字企業に対する融資を継続するかどうかは、金融機関の規模とその企業への与信額の比較に依存すると考えます。100億円の利益がある金融機関は、100万円の焦げ付きには動じないが、100億円の損失には動揺するということです。このように考えると、金融機関は中小企業への貸付を比較的あっさりと引き揚げることになるのではないでしょうか。

今後とも色々とご教示いただければありがたく存じます。

中小企業の自然淘汰について 追記

横浜市 経営コンサルタント 志村英盛

植杉氏のご指摘の通り自己資本比率は極めて重要です。
私の体験ですと、多くの中小企業は業績が悪くなると、減価償却の計上を止めます。これに地価の下落が加わっていたわけです。時価会計を採用している中小企業は稀ですから、自己資本比率を基準として分析する場合は、減価償却計上の有無と地価下落の影響度を合わせて検討する必要があると思います。

今1つ追記させていただきたいのは【信用差額】(一般的な用語ではないと思う)が大事ということです。
割引分を含む受取手形+売掛金+未収金=信用供与額
支払手形+買掛金+未払金=信用受領額
信用供与額-信用受領額=信用差額
貸倒れや、回収遅延や、粉飾や、仕入れ決済条件悪化等を含む諸原因で資金繰りが苦しくなると決算書上の【信用差額】が急速に増大します。
私は経営コンサルティングにおいて、正確・迅速な【月次決算】の実践と合わせて【信用差額の毎月チェック】を重視してきました。

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