未来に希望を持てる雇用システムと経営者の役割―成果主義vs. 年功主義の議論を超えて―:投稿意見

鶴 光太郎
上席研究員

「未来に希望を持てる雇用システムと経営者の役割」について

経営コンサルタント 志村英盛

「日本経済の重要課題は、教育を含む人材育成、働き方、組織の問題」であり、「いかにして『納得できる』評価システムを構築するか」という鶴氏の指摘と問題提起に深く賛同します。鶴氏が指摘の通り「90年代以降、環境条件が大きく変化している中で、従来の『終身雇用・年功序列』への回帰が問題の解決にならない」ことも明らかです。また「成果を客観的に評価してそれを報酬に直接的に結びつけること」や「労働者毎の寄与を明確化することは至難の技である」いわゆる成果主義システムも問題の解決にならないことも鶴氏が述べられた通りであり、高橋伸夫東大教授やかつて富士通に勤務されていた城繁幸氏が著書で痛烈に批判された点でもあります。

問題の解決のために、鶴氏は「経営者と従業員が目標をしっかり共有できれば、そもそも従業員の動機付けを考える必要はあまりないといえる。そのために重要なのは、経営者による企業のミッション(使命)の明確化と浸透である」との意見で私も全く同感です。一言付け加えさせていただければ、ミッションと共に企業のマーケティング戦略の明確化と浸透も経営者の役割として欠かすことはできないと思います。

賃金システムについては、月間限界利益労働生産性が120万円以上の大企業中堅企業と違って、月間80万円以下の低い労働生産性の中小企業は、従来の年齢と勤続年数中心の賃金システムではやっていけないことは明白です。それに代わる職務給と職能給と結果給を組み合わせた独自の賃金システムを経営者自身が必死に考え出さなければならないと思います。中小企業においては、これこそ経営者の最大の役割と思います。

コラムを読む

この著者の記事