「日独型」資本主義?
上席研究員 池田信夫
Jackson氏のような「英米型」と「日独型」を比較する企業統治の議論は、日本では5年ぐらい前に流行したが、その有効性は疑わしい。
最近のLa Pota, Lopez-de-Siliance, Shleifer & Vishnyの一連の実証研究によれば、「株主資本主義」か「ステイクホルダー資本主義」かとかいった区別は資本市場の効率には有意ではなく、所有権保護や司法制度(civil law/common law)などの法的な制度の優劣の影響が最も大きい。
インサイダー(経営者)がアウトサイダー(株主)をだまして企業を私物化する弊害は、エンロンやワールドコムにみられるように「英米型」資本主義でもまれではない。日独型をいかに英米型に近づけるか、あるいは両者の「特長」をどう組み合わせるか、といった議論は日本の財界でも何百回も行われたが、ほとんど建設的な結論を生み出さなかった。
古い図式にこだわるのはやめて、フレッシュな目で日本の現実を分析してはどうだろうか。