執筆者 | 菊池 信之介(MIT)/藤原 一平(ファカルティフェロー)/代田 豊一郎(青山学院大学) |
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発行日/NO. | 2023年11月 23-E-082 |
研究プロジェクト | マクロ経済と自動化 |
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備考 |
初版:2023年11月 |
概要
本研究では、1980年以降の日本における自動化技術の労働市場における影響について、自動化が代替しうるタスクを念頭に、多面的な検証を行った。わが国全体で観察される定型的作業を主とする職業の就業割合低下が自動化に起因するものかを考察するために、各産業の自動化技術進展がもたらす影響が、通勤圏ごとに、期初の産業構造に応じて異なることを用いて、通勤圏単位での実証分析を行った。第一に、自動化は、通勤圏全体の就業率に有意な影響をもたらさないことを発見した。より細かい労働者の属性に限定しても同様であり、また正規から非正規雇用への転換を促進する効果も観察されなかった。第二に、自動化は、製造業を中心とした定型的作業を主とする職業の就業割合を減少させ、通勤圏単位での労働需要をサービス業の非定型的タスクを主とする職種へとシフトさせることを示した。同時に、製造業とサービス業における、事業所数や売上出荷額の変化を調べると、自動化は製造業の規模をむしろ相対的に拡大させていることがわかった。第三に、自動化がもたらす労働需要の変化は、大卒未満、あるいは若い世代の労働者に対して、とりわけ観察されることを示した。
概要(英語)
We examine the implications of automation technology in Japan since 1980, comparing different local labor markets with different degrees of automation exposure. First, we do not find that automation reduces the employment rate within demographic groups and that automation encourages workers to move from regular to non-regular employment. Second, we show that automation shifts employment from routine occupations in the manufacturing sector to service sectors, while increasing the share of establishments and sales in the manufacturing sector. Finally, we show that this shift in labor demand is attributed to younger generations and non-college-educated workers.