執筆者 | 市田 敏啓 (早稲田大学) |
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発行日/NO. | 2015年7月 15-E-083 |
研究プロジェクト | 複雑化するグローバリゼーションのもとでの貿易・産業政策の分析 |
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概要
本稿では、多次元スキルの理論モデルを用いて、貿易自由化後のパレート改善を狙った所得補償制度が直面するトレードオフの問題を分析した。本稿における政府とは、社会厚生の最大化を目的としており、補償制度は情報や税制の制限のもとで個人が合理的にかつ自主的に選択するように作られたものと仮定される。分析の結果、自由化前に政府が補償制度を行うことを事前に明言せずに貿易自由化を進めた場合には、パレート改善と過剰補償との間にトレードオフが生まれ、逆に政府も経済主体も補償制度が実行されることが予めわかっている状態で自由化が進んだ時には、トレードオフが過剰補償額と生産における資源の効率的配分との間で起こることがわかった。
概要(英語)
Using a multiple-skill model of occupational choice, we study the trade-offs faced by a benevolent government that aims at Pareto improvement from trade liberalization via incentive-compatible compensating transfers. When the transfers are designed after some liberalization has been realized, the trade-off is between Pareto improvement and overcompensation. When agents anticipate future transfer schemes, the trade-off is between the size of aggregate production gains and the amount of overcompensation.