執筆者 |
David CASHIN (University of Michigan) /宇南山 卓 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2012年5月 12-E-029 |
研究プロジェクト | 日本経済の課題と経済政策-需要・生産性・持続的成長- |
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概要
本稿では、1997年4月の消費税引き上げ前後の家計支出を分析することで、駆け込み需要の大きさの決定要因を明らかにした。消費税の引き上げは予測された物価上昇であり、消費者は耐久財や備蓄可能財の在庫を増やすことで、物価上昇の影響を軽減しようとする。しかし、短期間で集中的に耐久財や備蓄可能財を購入するには、情報収集や買い回りの時間、財を備蓄するスペースなど、無視できないコストが必要となる。そのコストは家計の属性によって非対称的であり、消費税の引き上げの影響も世帯ごとに異なる。家計調査のミクロデータを用いた検証の結果、自由な時間が制約される現役世代、特に配偶者が就業している世帯で引き上げ直前の支出の増加が小さかった。これは少なくとも短期的には、相対的に若い世代が消費税を負担していることを意味している。駆け込み需要と反動減による経済変動を小さくするためには、時間的に余裕のない世帯でも対応できるように、税率を段階的に引上げる必要がある。
概要(英語)
Households will purchase more items than usual prior to a value added tax (VAT) rate increase in order to avoid taxation. Since this type of arbitrage requires resources such as shopping time and storage space, the impacts of tax increases vary across households, which has brought distributional effects in the short-run. Using the case of a consumption tax rate increase in Japan in 1997, we show that households who are non-working, with non-working spouses and residing in larger houses, benefited from more arbitrage. To minimize short-run economic disturbances, step-by-step increases would be useful.