プロジェクト概要
貿易自由化は、WTOのもとでの多角的貿易自由化であれ、FTAのもとでの地域的貿易自由化であれ、基本的に、「貿易費用」の削減を目指すものである。ただ、一口に貿易費用と言っても、輸送費、関税、非関税障壁など、直接的および間接的な費用を含め、さまざまな費用が考えられる。さらに、貿易費用は流通に密接に関係しているが、バリューチェーン、サプライチェーンのグローバルな拡大、そして、サービス経済化の深化や交通網・情報通信等の技術革新の進展などを考えると、流通を費用としてではなく「価値を生むもの」としてとらえることも可能である。したがって、貿易費用の分析は一様とはなり得ない。たとえば、輸送費に着目するのであれば、まず輸送費のモデル化が必要なはずであり、それに基づく分析が必要となる。また、貿易費用は、ただ単に貿易促進のみに関連しているものではない。競争政策、産業政策、成長政策、環境政策、資本規制といった経済政策は、経済のグローバル化が加速している今日においては、貿易費用とも深く関わっている。たとえば、国内の経済政策は、貿易費用が高ければローカルな政策と見なせるかもしれないが、貿易費用が低下して国々の相互依存が深まると、グローバルな政策になりうる。すなわち、グローバル経済において、さまざまな経済政策を分析・議論する際には、貿易費用の分析が必要不可欠である。本研究プロジェクトでは、さまざまな観点から貿易費用を分析することで、貿易自由化や考察を深めるとともに、貿易費用が経済政策に与えるさまざまな影響を研究し、日本の今後の政策議論や政策立案に貢献することを目的とする。
プロジェクト期間: 2015年7月27日 〜 2017年3月31日
主要成果物
2017年度の成果
RIETIディスカッション・ペーパー
2016年度の成果
RIETIディスカッション・ペーパー
- 17-E-037
"A Larger Country Sets a Lower Optimal Tariff" (NAITO Takumi) - 17-E-031
"Does Trade Liberalization Promote Antidumping Protection? A theoretical analysis" (MUKUNOKI Hiroshi) - 17-E-025
"Tariffs, Vertical Oligopoly, and Market Structure" (ARA Tomohiro and Arghya GHOSH) - 17-E-016
"Assortative Matching of Exporters and Importers" (SUGITA Yoichi, TESHIMA Kensuke and Enrique SEIRA) - 17-E-001
"Early Agglomeration or Late Agglomeration? Two phases of development with spatial sorting" (Rikard FORSLID and OKUBO Toshihiro) - 16-E-095
"Daily Gravity" (TAKECHI Kazutaka) - 16-E-079
"An Asymmetric Melitz Model of Trade and Growth" (NAITO Takumi)