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2008年度政策研究領域(基盤政策研究領域)

III. 経済のグローバル化、アジアにおける経済関係緊密化と我が国の国際戦略

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(2009年6月18日現在)

経済のグローバル化が益々進展し、特にアジア諸国における経済が急速に緊密化してきている中、国際的な通商ルール(WTO、FTA)や貿易投資の政策展開のあり方についての我が国としての総合的な国際戦略を確立していくことが重要である。我が国としての通商を含むそうした戦略の展開への寄与を目指し、アジアに展開する貿易・直接投資・技術のバリューチェーンと金融・為替制度の変貌を分析し、アジアや世界に向けた政策提言を行う。また、そうした中で、各通商ルールについての運用状況の蓄積や理論的な整理、主要な経済パートナー諸国の経済実態や各々の通商戦略の分析、企業の国際的なビジネス展開を可能としていく事業環境等に関する研究を行う。

1. 国際企業・貿易構造の変化と市場制度に関する研究

活動期間:2007年7月1日〜2011年3月31日

プロジェクトリーダー

若杉 隆平ファカルティフェロー

プロジェクト概要

国際経済において注目すべき研究課題として、直接投資・現地生産とアウトソーシングの拡大、技術ライセンス供与と知的財産権の保護、FTAの貿易拡大効果、関税・アンチダンピングの保護貿易政策の実効性があげられる。これらの課題に関する分析においては、貿易理論、企業理論、契約理論などによる理論研究が先行しているが、実態面における解明は、日本に限らず海外においても十分になされているとはいえない。このため、国際貿易に関する財別データ、日本企業に関する産業レベル・企業レベルデータを駆使して、上記課題に関する実態を定量的に分析するとともに、政策・制度がもたらす効果を定量的に評価し、貿易・産業政策のあり方に対するインプリケーションを議論する。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

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2. WTOにおける補助金規律の総合的研究

活動期間:2008年1月22日〜2010年3月31日

プロジェクトリーダー

川瀬 剛志ファカルティフェロー

プロジェクト概要

補助金制度は各国の広汎な政策目標の達成の手段として広く活用されているが、輸出補助金に見るように国際通商における資源配分を歪曲する効果を持つことがある。それゆえWTOの下では、補助金・相殺関税協定(SCM協定)および農業協定の規律対象となっている。補助金を巡っては、WTO発足後すでに合計30件を越えるパネル・上級委員会の判断が示されているばかりでなく、今後は関連協定の適用を暫定的に停止していた条項の失効により、紛争の増加が予想される。そこで本研究は、SCM協定・農業協定に関する判例の検討によりその解釈・適用の慣行を明らかにし、わが国および主要貿易相手国の補助金制度のWTO協定上の問題点を精査し、更にWTO協定整合的なわが国の補助金制度および相殺関税制度のあり方に示唆を得る。

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3. Promoting East Asian Production Networks, the Unwinding of Global Imbalances, and the Resolution of the Economic Crisis

活動期間:2007年12月27日〜2009年6月17日

プロジェクトリーダー

THORBECKE, Willem上席研究員

プロジェクト概要

This year's research seeks to understand Asian production networks and Asia's trade with the rest of the world. It also considers policy measures to promote recovery and bring stability to East Asia. Some of the work involves presenting an analytical description of production networks and investigating how exchange rate changes and changes in income in the rest of the world affect Asian trade. For example, one policy implication is that exchange rate stability in East Asia would be desirable because exchange rate volatility would interfere with the slicing up of the value-added chain. Another policy implication is that East Asian countries should stimulate demand domestically to reduce their exposure to a slowdown outside of the region. Some of the work looks at previous agreements between world leaders to resolve global imbalances and to promote recovery. Other work considers how Federal Reserve monetary policy can be effective in the face of changes in inflation.

Finally, the work considers a new development model for China and East Asia. The question is whether East Asia can be an engine of growth for the world economy, given that demand in Western economies has collapsed. The evidence indicates that if East Asia shifts to a domestic demand-led growth model, it could contribute significantly to growth in the rest of the world.

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

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4. 開発援助の先端研究

活動期間:2007年7月23日〜2010年3月31日

プロジェクトリーダー

澤田 康幸ファカルティフェロー

プロジェクト概要

経済成長支援から直接の貧困削減支援へ、プロジェクト中心から財政支援中心へ、融資中心から債務削減・グラント中心へ、バイからマルチへと国際的な開発援助に関する議論が大きな転換点を迎えている。2006〜08年度に実施した「開発援助のガバナンス構造プロジェクト」「開発援助の先端研究プロジェクト」では、エビデンスに基づきながらアジアとアフリカのマクロ的な援助効果の違いを体系化し、ドナーの援助配分行動や技術協力の効果を測定することを目的とした。これら研究の成果を受け、2009年度はさらに、1)国際協力を通じた災害リスクを管理・対処するための保険機能構築の基礎研究、2)援助の経済成長促進効果についての因果関係解明、を発展させて研究する予定である。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

国際ワークショップ

関連ウェブサイト

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5. 東アジアの金融協力と最適為替バスケットの研究

活動期間:2008年6月3日〜2009年5月31日

プロジェクトリーダー

伊藤 隆敏ファカルティフェロー

サブリーダー

小川 英治ファカルティフェロー

プロジェクト概要

当研究プロジェクトでは、将来的にはアジア地域において、共通通貨バスケットを採用することが望ましい有力な選択肢のひとつであると位置づけ、バスケット移行までの為替政策・金融政策運営、望ましいバスケット制の形態を探るという、政策に直結する研究を行っている。当研究プロジェクトの研究成果の一つであるアジア通貨単位(AMU)のデータは2005年9月よりRIETIのウェブサイトで公表され、内外からアクセスされている(2008年度月平均アクセス数1288)。さらに上記のテーマから派生する問題として、為替変動がどの程度国内物価に影響を与えるかというパススルーの問題、輸出入の建値通貨として何を選択するかというインボイス通貨の問題について研究を行っている。従来のマクロモデルを用いた手法に加えて、2007年度は日系企業ヒアリングを実施し、各企業が輸出輸入に際して、どのような為替戦略(建値、リスク管理)を採用しているかというミクロ的分析も行った。2008年度は、最適バスケット、建値・パススルーの問題について、ミクロ・マクロ両面からの成果を得ており、より実務に即した政策提言を行うことを目指していく。

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関連ウェブサイト

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6. 貿易と環境、食品安全性

活動期間:2007年7月1日〜2008年9月30日

プロジェクトリーダー

神事 直人ファカルティフェロー

プロジェクト概要

国際間の貿易において現在重要な争点である「貿易と環境」と「食品安全性と貿易」に関して、経済学と法学の双方から総合的・学際的にアプローチする。貿易と環境については、貿易の自由化が環境を改善するか否かに関する実証研究や、森林の違法伐採問題に関する理論的研究、企業の自主規制による環境対策に関する理論的研究などに取り組む。また食品安全性と貿易については、WTO協定において食品安全問題に関連する衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)について、法学と経済学の双方から分析を行うとともに、SPS協定が関連するWTO紛争案件についても分析を行う。さらに、食品安全規制の消費者便益について、日本のBSE対策を事例として推定を試みて考察を行う。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

出版物

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7. FTAの効果に関する研究

活動期間:2007年7月26日〜2009年4月30日

プロジェクトリーダー

浦田 秀次郎ファカルティフェロー

プロジェクト概要

近年、特定国との貿易を自由化する自由貿易協定(FTA)が世界各国で急速に増加している。FTAはFTA加盟国間の貿易を拡大させる一方、非加盟国との貿易を抑制する可能性が高い。FTAはそれらの貿易への効果を通して、加盟国および非加盟国の経済に影響を与える。本研究では、FTAの貿易および経済に与える影響を、事前および事後分析を用いて検討する。事前分析とは、FTA設立以前の情報を用いて行われる分析であり、手法としては一般均衡モデルによるシミュレーションを用いる。一方、事後分析とは、実際に観測された統計を用いて行う分析であり、手法としては主に二国間の貿易の決定を検討するグラビティ・モデルを用いる。分析対象は、日本の設立したFTAと共に世界諸地域において設立された主なFTAである。また、日本のFTAについては、企業によるFTAの利用度も分析する。以上のような分析を行うことにより、FTAの貿易・経済への影響を明らかにすると共に、日本政府によるFTA政策の立案に対して有益な情報を提供することを期待している。

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8. 中国の台頭と東アジア地域秩序の変容

活動期間:2007年7月1日〜2009年3月31日

プロジェクトリーダー

白石 隆ファカルティフェロー

プロジェクト概要

中国の台頭が今後20年程度のタイムスパンをとった時に、東アジア地域秩序にどのような変容をもたらす可能性があるのか、これを中国国内の政治問題にも留意しつつ、地域秩序のレベル、そして中国周辺諸国の政治、経済、社会のレベルにおいて分析することが本研究の目的である。中国の台頭をめぐる議論は「脅威」と捉えるものから「チャンス」と捉えるものまで大きな幅があるが、その大半が印象論で終始している。それに対して本研究は、中国と中国周辺諸国の政治、経済、社会の状況を具体的に研究している研究者と議論することを通じて、中国が東アジア地域秩序にとってどのような存在になるのかを判別できる因子を明らかにしていくものである。

主要成果物

国際セミナー

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9. 対外投資の法的保護の在り方

活動期間:2007年6月1日〜2008年10月31日

プロジェクトリーダー

小寺 彰ファカルティフェロー

サブリーダー

松本 加代研究員

プロジェクト概要

外国投資は、相手国の国情等によって大きなリスクに晒される。これらのリスクのうち、投資受入国の行為を直接の原因として事業が失敗するリスク(政治的・社会的リスク)については、何らかの公的枠組みによって対処することが求められる。近年その枠組みとして注目されているのが投資協定である。特に、投資協定の定める投資家対国家の紛争解決手続き(国際仲裁)が実際的な投資家保護として機能している。本プロジェクトでは、この仲裁判断の法理を分析し、対外投資の法的保護の在り方を検討する。法理の分析は、今後日本が締結する投資協定や経済連携協定の投資章を起草する上で大きな示唆を与えると同時に、企業関係者にとっては投資先や投資方法の選択にあたっての参考となる。さらに、類似の機能を有する投資保険の商品設計にも影響を与えることになる。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

RIETI国際セミナー

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10. Study on International Strategies for Improving Productivity in the Context of Economic Globalization

活動期間:2008年9月1日〜2009年8月31日

プロジェクトリーダー

白石 重明上席研究員

プロジェクト概要

経済グローバル化のコンテクストにおいて生産性向上をいかに図るかという課題に対する有効な政策提言につなげていくことを念頭に、1)利潤最大化原理に基づき「2R-2Rモデル」(「戦略基礎としてのResource及びRisk」と「戦略行動としてのRedefinition及びRelocation」の循環モデル)によって説明される行動をとる企業、2)リアリズム原理に基づき国益最大化を図る政府、3)リベラリズム原理に基づき国家の枠を超えた全体利益の増大を図る国際組織、という異なる原理に基づくプレイヤーによるマルチプル・ゲームとして経済グローバル化を理解し、その実相と課題を抽出する。特に、経済グローバル化の一態様としてクロスボーダーM&Aに着目し、欧州の電力ガス事業の再編等を具体的な対象分析として取り上げる。なお、本調査研究は、OECDとの共同プロジェクトとして実施する。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

RIETIポリシーディスカッションペーパー

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11. 貿易政策と企業行動の実証分析

活動期間:2008年8月26日〜2010年7月31日

プロジェクトリーダー

大橋 弘ファカルティフェロー

プロジェクト概要

本プロジェクトの目的は、通商活動(貿易投資をはじめとする国際的な経済活動)に係わる政策や制度が、企業活動や産業構造に与える影響・効果を実証的に評価・分析することである。これまでの伝統的な研究では、代表的な企業の存在を仮定したもとで厚生評価を行うことに力点があった。しかし最近の分析では、企業間の差異に注目しながら、その戦略的な企業競争を許しつつ、通商・貿易政策を評価する試みがなされている。グローバル化した経済の中で、企業は必ずしも通商政策や制度に対して受動的に行動するとは限らない。例えば特殊関税などの貿易政策に対しては、企業はより戦略的な思惑を持って行動することで、政策の決定プロセスにも影響を与えうることが知られている。一方で、こうした理論的な可能性が、どれだけ現実に妥当するかについての実証的分析は、未だ端緒についたばかりである。本プロジェクトの特徴は、企業活動のグローバル化や東アジアでの事業ネットワークが拡大深化していく中で、企業行動の分析に焦点をあてながら国際貿易の制度や通商政策のあり方を実証的に評価することにある。

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12. 日本企業の海外アウトソーシングに関する研究

活動期間:2008年8月4日〜2010年7月31日

プロジェクトリーダー

冨浦 英一ファカルティフェロー

プロジェクト概要

近年、先進諸国においては、製造工程のみならず研究開発等の広範な業務・機能が海外へ移転(offshoring)、しかも同一多国籍企業内とは限らず外国の他社にまで外注・委託(outsourcing)され始めるに至った。このため、我が国の貿易政策・地域経済政策・産業政策の立案に当たっても、こうした国境を越えたアウトソーシングの実態について定量的な現状把握が不可欠となってきた。そこで、本研究では、企業調査結果の計量実証分析により、政策的にも重要な日本の実態解明に資するとともに、新たな貿易理論の検証にもつなげるべく、我が国における海外アウトソーシングに関する分析を行う。

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13. 「国際貿易と企業」研究

活動期間:2008年9月2日〜2010年7月31日

プロジェクトリーダー

若杉 隆平ファカルティフェロー

サブリーダー

戸堂 康之ファカルティフェロー

プロジェクト概要

企業の生産性の高さが輸出や直接投資への参入を促す要因となることは、Melitz(2003), Helpman et al (2004)等により理論的に明らかにされてきた。また、近年これらの理論分析の現実への妥当性について、Bernard and Jensen(1995, 1999), Bernard et al(2007)等がアメリカ企業を取り上げて分析している。さらに、Mayer and Ottaviano(2007)は欧州企業について包括的な研究を行うことにより、企業の生産性と輸出・FDIに関する特徴を明らかにしてきた。このように、企業の異質性を国際貿易に関する分析に取り入れることは、研究の世界的潮流となっている。

日本企業に関しては、Head and Ries(2001, 2003), Kiyota and Urata(2005), Tomiura(2007)等が実証的に明らかにしてきたが、まだ十分なものとは言えない。その意味では、今回まとめられたディスカッションペーパー「国際化する日本企業の実像−企業レベルデータに基づく分析−」(若杉隆平・戸堂康之・佐藤仁志・西岡修一郎・松浦寿幸・伊藤萬里・田中鮎夢)は、この分野の包括的研究として位置づけられるものと考える。しかし、統計データを丹念に追跡しているものの、更に深い実証分析と考察が求められていることも確かである。この分野での研究を深化させることは、新しい貿易理論の構築と実証研究において、米・欧の研究グループに対応して日本の研究グループとして国際的に一定の貢献をすることになる。

また、日本企業の輸出と直接投資は、経済成長、所得水準の維持にとって大きな意味を有する。そこで、本研究では、これまでhomogeneousにとらえられてきた企業が実際にはheterogeneousであることに注目した最新の理論的成果を踏まえ、企業レベルデータを用いて日本企業の貿易・海外投資・現地生産を徹底的に分析する。このことにより、産業政策上の新たな含意を引き出すことが期待できる。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

CEPR-RIETI 国際ワークショップ

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14. 大国間秩序の変化と日本外交の課題

活動期間:2008年10月17日〜2010年3月31日

プロジェクトリーダー

中西 寛ファカルティフェロー

プロジェクト概要

2008年から2009年にかけてはアメリカの新政権発足、北京オリンピック後の中国の変化、ロシアの勢力圏外交の復活傾向など、冷戦終焉以降最大といってもよい国際秩序の再編成の契機が訪れつつある。他方、日本は小泉改革後の秩序再編成に手間取っており、内政上の混乱はしばらく続く見通しである。しかし国際環境の変化を分析し、それに対応した外交政策がとられる必要があるし、内政で落ち着いた時にはより基本的な議論が必要となろう。本研究は、2008年から2009年にかけてはグローバルな国際秩序の変容期にあると捉え、その変化の本質を明らかにし、日本外交がいかなる対応をなすべきか、根底的レベルで考察すると共に、必要に応じて実践的な政策課題に対する提言も含ませる。(東アジアにおける環境変化は恐らく2009年後半以降、実質的な議論が可能となると見ている)

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15. 環境と貿易

活動期間:2008年10月1日〜

プロジェクトリーダー

山下 一仁上席研究員

プロジェクト概要

環境問題と国際貿易との間には密接な関係が指摘されている。ガット・WTOの場でこれまでに「環境と貿易」を巡ってしばしば貿易紛争が起こってきた。イルカ・マグロ事件のガット・パネルの裁定は、ガット史上初めてニューヨーク・タイムズ紙の一面を飾った。これに反発した環境保護団体によって反グローバル化の激しい街頭運動が展開され、1999年のWTO・シアトル閣僚会議は失敗に追い込まれた。この事件に象徴されるように1990年代から環境保護団体は、ガット・WTOが環境利益を侵害している、貿易の自由化によって経済が拡大すれば環境がますます破壊されると批判してきた。オバマ新アメリカ大統領は大統領選で企業が環境を犠牲にすることによって競争力を得ることができないようなルールをFTAやWTOに導入すべきであると訴えた。来年以降のWTO交渉において、これまでは抑えられてきた「環境と貿易」を巡る議論が中心的なイッシューとして浮上してくる可能性が非常に高い。このプロジェクトでは、国際間の貿易において現在重要な争点である「貿易と環境」に関して、経済学と法学の双方から総合的・学際的にアプローチする。

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16. オバマ政権外交・安全保障政策の動向に関する研究

活動期間:2008年12月1日〜2010年3月31日

プロジェクトリーダー

久保 文明ファカルティフェロー

プロジェクト概要

オバマ政権は内政だけでなく外交においても、きわめて深刻で巨大な課題に複数直面している。イラクやアフガニスタンはいうまでもなく、北朝鮮、イラン、イスラエル・パレスチナ関係、あるいはパキスタンの動向などは、その一例に過ぎない。本プロジェクトは、オバマ政権の下でアメリカの外交・安全保障政策がどのように展開されていくかについて、政策担当者の外交観に焦点をあてることによって解明していく。現段階で見て取れる限りでは、オバマ政権の外交・安全保障政策担当スタッフは、民主党のもっとも左の勢力、すなわち左派・反戦派を基本的に除外し、中道派を柱とし、なおかつロバート・ゲーツやブレント・スコウクロフトら共和党系穏健派ないしリアリストにも幅を広げようとしているように見える。このような基本的外交観を把握しつつ、各論として、アジア、中東、核不拡散など、個別の政策についても分析を深めていきたい。

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17. 通商関係条約と税制

プロジェクトリーダー

活動期間:2008年10月14日〜2010年3月31日

小寺 彰ファカルティフェロー

サブリーダー

松本 加代研究員

プロジェクト概要

通商関係条約(WTO協定、経済連携協定、投資協定等)は、通商措置を対象とするため、租税に関する言及があっても、租税措置のどのような面を規律するかは明確でなかった。しかし、通商条約が租税分野に及ぼす規律の重要性は、国際的に広く認識されるようになった。

両者の関係の重要性は、第三者機関によって通商条約が客観的に解釈されることにより顕在化した。1980年代に酒の等級がGATT紛争解決手続に提訴され、GATT違反が示されたのは、GATTの規律が税制に及ぶことを明確化した好例である。また、通商条約のカバレッジの広がりにともない、両者の関係が問題となる機会も増大している。

さらに、この問題は、二国間租税条約の存在によって複雑化している。通商条約上、租税条約に関する事項が一定程度適用除外とされることは多い(GATS、日本のEPA等)。しかし、そうでない場合は国内措置をどう変更するかという問題にとどまらず、通商条約と租税条約の条約相互間の調整の問題となる。このことは、両条約の紛争解決手続きの関係においても問題となる。

以上のような問題意識に基づき、国際法、国際経済法、租税法、EU法等の法学分野の研究者と場合によっては経済学の研究者を加えた小規模な研究会を組織する。

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18. エネルギービジネス分野におけるグローバリゼーションに関するビジネス戦略とルールの調査研究

活動期間:2008年9月1日〜2009年8月31日

プロジェクトリーダー

白石 重明上席研究員

プロジェクト概要

経済グローバル化のコンテクストにおいて生産性向上をいかに図るかという課題に対する有効な政策提言につなげていくことを念頭に、経済グローバル化をマルチプル・ゲームとして理解してその実相と課題を抽出したこれまでの成果に立脚して、クロスボーダーM&A等を通じた欧州の電力・ガス事業の再編等の具体的な動向をビジネス戦略の観点からフォローしつつ、あわせて、その動向に対するEU委員会や主権国家の反応を踏まえて、関連するルールのあるべき姿について検討を加える。なお、本調査研究は、OECD/IEAとの共同プロジェクトとして実施する。

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19. 企業活動の国際化と経済産業構造の高度化に関する調査研究(京都大学との共同研究)

活動期間:2008年8月〜2009年6月

プロジェクトリーダー

八代 尚光コンサルティングフェロー

プロジェクト概要

近年におけるめざましい企業活動の国際化の進展は、国際資本市場の統合とも相まって経済産業活動を一国の枠を超えたグローバルで多面的なものとしている。他方、最近の研究では、我が国を含む多くの国における輸出や直接投資は一握りの企業による活動であり、こうした企業と国内市場のみを活動範囲とした企業との間には著しい生産性等のパフォーマンスの格差が観察されている。人口減少に直面する我が国経済が、高い生産性の伸びにより他の先進国と遜色のない経済成長を実現していく上で、企業活動の国際化の推進は重大な政策課題として認識されている。本研究は、我が国や諸外国における企業活動の国際化がこれらの国々の経済産業構造の高度化や経済成長等にどのように貢献したのかを、最新の研究結果のサーベイや理論的・実証的分析を通じて解明し、政策的提言を導出することを目的とする。

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20. 日本企業の対中投資に係る考察

活動期間:2009年3月3日〜2009年7月28日

プロジェクトリーダー

柴生田 敦夫上席研究員

プロジェクト概要

急速な経済成長を続ける中国に対して中国脅威論を唱える向きもあった日本の産業界は、現在では中国経済の活力を自社のビジネスの活性化により生かす方向に転換しつつある。しかし、日中経済関係が緊密化し、日系企業の中国に対するコミットが高まっていることは、中国経済の動向が日系企業の経営に及ぼす影響度がますます大きくなっていることも示している。こうした背景から、日系企業は対中ビジネスを拡大させる一方で、中国リスクに対する関心も一層高めている。

本研究は、上記のような現状にある日中の経済関係を直接投資の観点から概観する。まず、日中の投資関係の推移を時系列で概観し、次に、2007年および2008年上半期までの対中直接投資の動向を分析する。その上で、中国の対内直接投資に占める日本の地位を検証し、さらに、対中直接投資に関連するいくつかの論点についても考察する。最後に、日中投資関係の将来について展望することを目的とする。あわせて、日系企業が投資行動を中国において円滑に実行していくに当たって理解しておくべき中国内の個別各事象の現状について適宜紹介する。

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