開催案内
近年、日本政府は経済連携協定(EPA: Economic Partnership Agreements)や二国間投資協定(BIT: Bilateral Investment Treaty)の締結を活発化させ、締結数は合計で21にも上ります。この相手国の多くは、日本企業の主要な投資先であることから、日本企業の投資計画にも影響を与えると考えられます。
また、世界各国で締結されたBITの数は2500を超え、世界中にBITが張り巡らされている状態になっています。このため、企業は、自らの投資母国と投資先国がBITを締結していなくても、投資先国がBITを締結している第三国を経由して投資をすることによって、BITのメリットを受けることができます。
それでは、これらの投資協定は、企業にとって、どのように役立つのでしょうか?投資協定の殆ど全てが、国家に対して投資保護の義務を課しています。そして、この義務に違反した場合、投資家は、国際仲裁に申立てを付託することができます。たとえば、投資家に対して「公正かつ衡平な」待遇を与える義務は、国家が恣意的、差別的な行為をすることを禁止しており、この義務違反が認められて、国家が数百万ドルもの賠償金の支払いを命じられたこともあります。日系企業が投資協定仲裁を利用した例はまだ1件に止まりますが、アジアの他の国を訴える例やアジアの他の国の企業が仲裁を利用した例はいくつかあります。このような投資協定仲裁の実際的な機能が国家に認識されるにともない、仲裁に付託できるということが、投資家にとって国家との交渉上のレバレッジとなる局面も出てくると考えられます。一方で、紛争長期化によって相手国政府との関係が悪化するリスクは看過できません。
残念ながら、このような投資協定の実際的な利用の側面は、まだ日本企業に認知されているとはいえません。そこで、第1と第2セッションは、投資協定についての概観を説明し、実際的な利用の側面について議論します。
投資協定を巡る日本および世界の状況は日々変化しています。日本政府は、今後も投資協定を締結していく方針を表明していますが、どのような国が候補となるのでしょうか? また、投資に関する多数国間のルール作りは、OECDやWTOにおいて試みられましたが、いずれも失敗しています。再度議論される見通しはあるのでしょうか? また、投資の自由化の進展は、今後見込まれるのでしょうか? 第3セッションでは、これらの問題意識をもとに議論を行います。
イベント概要
- 日時:2008年7月25日(金) 13:30-17:55
- 会場:RIETI 国際セミナー室 (東京都千代田区霞が関1丁目3番1号 経済産業省 別館11階1121室)
- 開催言語:日本語⇔英語(同時通訳あり)
- 参加費:1,000円 [公印を捺印した領収書を発行いたします]
(学生証提示の場合は500円) - 主催:独立行政法人経済産業研究所(RIETI)
- 協賛:社団法人日本商事仲裁協会
- お問合せ:RIETI みのわ Tel: 03-3501-8398
※セミナー終了後、資料を本サイトからダウンロードしていただけます。
プログラム
総合司会:松本 加代 (RIETI研究員)
13:30 - 14:30 第1セッション:国際投資ルール:現在の視点
13:30 - 13:50 プレゼンテーション「国際投資ルールとは」
小寺 彰 (RIETIファカルティフェロー/東京大学大学院総合文化研究科教授)
13:50 - 14:10 プレゼンテーション「投資協定に関する最近の動き」
Anna JOUBIN-BRET (Senior Legal Adviser, Policies and Capacity-building Branch (PCBB), Division on Investment, Technology and Enterprise(DIAE), United Nations Conference on Trade and Development (UNCTAD))
14:10 - 14:30 Q&A
14:30 - 15:50 第2セッション:投資リスクにどう対応するか
14:30 - 14:50 プレゼンテーション「投資協定によって対外投資は保護される?」
Louis T. WELLS (Herbert F. Johnson Professor, International Management, Harvard Business School)
14:50 - 15:10 プレゼンテーション「投資保険と投資協定」
今野 秀洋 ((独)日本貿易保険理事長)
15:10 - 15:20 コメント
佐久間 総一郎 (新日本製鐵株式会社法規担当部長)
15:20 - 15:30 コメント
浅川 和宏 (RIETIファカルティフェロー/慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)
15:30 - 15:50 Q&A
15:50 - 16:10 コーヒーブレイク
16:10 - 17:50 第3セッション:投資協定の将来
司会:小寺 彰 (RIETIファカルティフェロー/東京大学大学院総合文化研究科教授)
16:10 - 16:30 プレゼンテーション「投資協定の現状と進め方」
三田 紀之 (経済産業省通商政策局経済連携課長)
16:30 - 16:50 プレゼンテーション「持続可能な国際投資法制度に向けて」
濵本 正太郎 (神戸大学大学院法学研究科教授)
16:50 - 17:05 コメントおよび論点提示
Anna JOUBIN-BRET (Senior Legal Adviser, Policies and Capacity-building Branch (PCBB), Division on Investment, Technology and Enterprise(DIAE), United Nations Conference on Trade and Development (UNCTAD))
17:05 - 17:20 コメントおよび論点提示
Louis T. WELLS (Herbert F. Johnson Professor, International Management, Harvard Business School)
17:20 - 17:50 ディスカッションおよびQ&A
17:50 - 17:55 閉会挨拶
及川 耕造 (RIETI理事長)
*上記プログラムの講演内容及び講演者は状況により変更することがありますのでご了承下さい。