政策シンポジウム他

動きはじめたビジネス支援図書館~図書館で広がるビジネスチャンス~

イベント概要

  • 日時:2002年9月23日(月・祝)13:00~18:00(開場12:15)
  • 会場:一橋記念講堂 東京都千代田区一ツ橋2丁目1番2号 学術総合センター2階
  • 活動報告「ビジネス支援図書館推進協議会 基本文献委員会報告」

    豊田 恭子 (ビジネス支援図書館推進協議会基本文献調査委員長)

    ビジネス基本文献調査委員会というのをやっています、豊田恭子といいます。よろしくお願いします。先ほど竹内さんから少々紹介していただきました、昨年私たちのほうでまとめた13枚の資料があります。「A.企業情報を探すには・・・」というところから始まって、B、C、と続いていって、実をいうと、K.地域情報はビジネスシーンにとってはとても大切なところだと思うのですが、Kというのはありません。資料が無いという意味ではなく、資料ができなかったという意味なのです。それからM.海外進出も、本当は作りたかったのですけれども、作れなくて、タイトルはたてたけれどもできなかったという感じで抜けています。だから全部で13枚になっていて、KとMは「あ、抜けている」と思わないでください。なくていいので、今年がんばって補充しようと思っていますけれども、そういう資料になっています。予算の関係上、全部真っ白い紙に印刷されていますが、実際はそれぞれの色を13色選んで、1枚ずつ結構目立つような形で並べていただけたらうれしいという、コンセプトで作ったリーフレットです。もうひとつ、これは皆さんにはお出ししていないのですけれども、こういう小さな「ビジネスチェーン基本情報源」という冊子も作りました。というのは、それぞれ13、最初は15を目標にしたのですけれども、テーマを掲げて、そのテーマにそれぞれ沿った形の情報源を集めよう、という形で作業を始めたらものすごくたくさん集まってきて、全部で800以上の情報源が集まりました。やはり、A4、表、裏に収めるということを重視したので、1テーマ20から30タイトルに絞りこもうということで、その800くらい出てきたものを一応置いておいて、そこから20タイトル、30タイトルを厳選して、ここの紙に、2、3行の改題というか、紹介文を書いて収めるという形にしたので、これが最終プロダクトではあるのですが、委員会の中でせっかくこんなに800も集まったのをもったいない、という意見も出て、実際、これは利用者に向けた資料として使えるとしても、図書館側で、自分のところのコレクション・ディベロップメントというか、蔵書や何かをチェックしていくときには、これはこれでいいのではないかという話になって、まとめました。ただ、実はとにかく集めたので、たくさんまだ間違いがあり、少々チェックしないといけないのではないかという部分がたくさんあります。会員の委員会の中ではかなり活用している冊子なのですけれども、公の場にさらすにはあまりに問題が多くて、皆様にはこの最終プロダクトだけを今回お渡ししているということです。

    プロフェッショナルライブラリアンの必要性

    ビジネス支援ということを考えたときに、インターネットの端末が並んで、データベース検索ができてということをイメージされる方もいらっしゃるかとは思いますし、もちろんそれは大切です。インターネットやデータベースの知識があることによって、ビジネス支援というのはものすごくパワフルになるし、これからビジネス支援をやってゆこうと思ったら、司書はとにかく、インターネットとデータベースの知識をつけようという、そのぐらいの必要性はかなりあると思っていますけれども、必ずしもお金をかけなくても、大した設備を持たなくても、自分でやっていける部分、たとえばライブラリーの中で小さなコレクションで、あるいは小さなリソースの中で提供していけるサービスはたくさんあるはずです。

    とりあえずまず、自分で扱っている商品を知ろう、というところから始まっています。実際この作業を進めていく中で、「ああ、結構自分の図書館、ビジネス関係の本など全然ないと思っていたけれど、割と自分のところにもあることがわかった」という人もいますし、「ああそうか、結構今まで気が付かずに一般図書に紛らわしてしまっていたけど、これ参考図書としてビジネスに使えるんだ」と言っていた方もいました。インターネットやデータベースとその新しい部分だけではなくて、自分の中にすでにある宝になかなか気が付いてない部分もあるのではないか、こういうことをすることで、それにまた気が付くきっかけができればいいなと考えています。

    一方で、インターネットの端末を置きました。非常に高いお金をかけてデータベースを入れました。でもそこでできることが、たとえばインターネットの使い方講座に終わっていたり、ユーザーの言った言葉をピコピコと入れてみて、それで出てきたものをただ出すだけだったりというのでは、単純なオペレーションというか、代行検索というか、そのようなものはレファレンスサービスでも何でもないと思います。もちろんPCをなかなか使い慣れていなかったり、インターネットを使えない人たちはたくさんいますから、そういう人たちを支援していく、その人たちのサポートをしてゆくというのは図書館としてひとつの大きな役割だとは思っています。けれども、ビジネスシーンはそういうものではないだろう、やはりレファレンスサービスをしっかりできて初めてビジネス支援だと思っています。

    今日、安藤先生の話の1番最後に、図書館にあるものとあって、「土日夜間に開いている」、「活字情報に満ちている」、「スペースがある」ときて、5番目に「プロ司書のチャネリング」でクエスチョンマーク、でこのクエスチョンマークが悲しいというか、情けないというか、悔しいというか、やはりここにクエスチョンマークが付けられていては駄目なのだと思うのです。私はライブラリー側の人間なので、とりわけ悔しく感じるわけです。やはり、図書館にはプロフェッショナルライブラリアンがいるのだと、あそこにいけばプロフェッショナルライブラリアンが情報のナビゲートをしてくれるのだ。それが一番の図書館の売り物にならなかったら、やはりビジネスシーンなどできない、逆にそういう良い人材がいればたとえ予算などなくても、あるいは、規模などすごく小さくても良いビジネスシーンが絶対にできるはずだ、と私は思っています。

    情報のナビゲートやビジネスレファレンスをやるときに絶対に必要な要素として、一方は情報源に対する知識だろうし、もう一方はユーザーのニーズを聞き出すレファレンスインタビューのスキルだと思っています。レファレンスインタビューのスキルの問題はここでは置いておくとして、情報源に対する知識は絶対に付けていかなければいけない。もちろん、レファレンスインタビューをやってゆく上でも、ビジネスの少なくとも難しいことなど何もわからなくていい、難しいことをわかっている必要はないですし、それを期待されてもいないと思います。ただ、ユーザーが何を欲しがっているのか、ということを理解するぐらいの共通のコミュニケーションを持てるような土壌を持てるかどうか、そのぐらいのビジネス知識やセンスというものは絶対に必要です。

    また、そのユーザーの求めているものをどのように、レファレンスのライブラリアンの言葉に置き換えていけばどこに、どういう情報源とこの人のニーズがつながって、最終的にこの人に満足のいく答えを出してあげられるか、というナビゲーションの部分というのが、やはり身についていかなくてはいけないと思っています。

    「ビジネスチェーン基本情報源」について

    かつて、図書館員はインデックスを自分で書いたり、分類をしたり、解題を書いたり、そういった中で自分の扱っている本を見る機会がたくさんあったと思いますし、内容もそれなりに、学んでいくチャンスというものに恵まれていたと思います。今は業者が分類もデータベースも全部やってくれます。本を開ける機会さえない、というか下手すると来た物をそのまま棚に並べているだけです。

    このレファレンスの文献を作る委員会の中でも、この参考文献の背表紙はずっと見ていたのだけれど、今回始めて中を開けて見たという人もたくさんいます。そのようにいつも背表紙ばかり見ていて、何度もユーザーに聞かれて、その本だったらここです、と紹介まではしているけれど、実際は中身を何も知らない、一回も開けたことがない、下手すると上に埃など被ってしまって、買ったのはいいけれど、そこにただ並んでいるだけという、宝の持ち腐れがたくさん図書館の中にあるので、私はこの委員会というのは、ある意味で研修通路を作っていると思っています。これを皆さんに使ってください、と言うのが目的な部分もあるのですけれども、どちらかというとこれを作ることで、まず、企業情報なら企業情報を扱っている文献は何があるのかを一生懸命集める、その中でこんなにたくさんあったのか、ではその中で何を選んで20にしようか、どれを厳選しようかで考える。それに厳選した後は何とかそれを今度3行にまとめようとして、中を見る。もちろんこれはユーザー向けにしているのですが、一番勉強になるのはこれを作った図書館員自身です。

    次に勉強になるのはこれをベースにして、レファレンスサービスをしようとする図書館員たち、一番これによってベネフィットを得るのは実は図書館員たちだと思っています。本日は3分の1ぐらい図書館関係の方もいらしていると伺っていますけれども、ぜひこれを皆さんのところでも研修ツールとして使っていただきたいと思っています。必要とあればもとのワードか何かで作ったものをお出ししますので、たとえば自分の図書館にある棚の番号を入れ、自分のところにはこれがないのならそれを削ってみる、あるいは、自分は地元としてやはりこういうものを入れたいと思えばそこに入れる。その作業をすることによって、自分の図書館の、自分の扱っている商品の内容を知ることができますし、それがレファレンスサービスに深みを与えますし、利用者と会話をしていても、自信を持って「ああ、その資料だったらここにあります」「この資料のここのところはこういうふうに使えます」という案内をやっていくことができると思います。

    委員会としてお願いしているのは、単純にビジネス支援図書館推進協議会の名前をどこかに入れてくださいということと、最終プロダクトをぜひ私たちにひとつください、ということくらいなので、ぜひ単純に、「わーい もらった、コピー並べておく」ということでは何にも勉強にならないので、そうではなくて自分のところで研修ツールとしてこれを使って活用していただきたい。そしてそれがもちろんその図書館にとっての、ユーザーにとっての最大の良いサービスになるということも含めて、やっていただきたいと思っています。

    今年は、このウェブ版を作ろうと思っています。やはりウェブにいろいろな情報が出てきているし、昨年これを作ったときにも既にこのウェブ情報ははずせないと思いタイトルの横に、「ここにはウェブ版がありますよ」「1番最後のところにウェブサイトとしてこのようなものがありますよ」とまとめてみたり、はずせないというものを入れたりしました。けれども、まだまだこれは冊子中心に作られたものなので、今度はやはり、ウェブに何があるか、というのをまとめたいと思っています。

    参加者を募集していますので連絡ください。ウェブなので、それほど委員会皆で顔を付き合わせる必要もないので、どんなに地方の方でも構わないと思っています。ご自分でやってみたい、やる気があってやってみたいといって参加してくださる方、大募集です。館長さんなどで、自分は少々無理だけど、うちのスタッフにやらせてみようと、強制的にそのスタッフをこの委員会に入れてしまおうというそういう陰謀も大歓迎です。去年は完全なボランティアだったのですけど、今年は必要であれば委任状も出せるという形で委員会のほうで動いてきていますので、そういった行政の手続き的なところも、去年よりは参加しやすい形にしていけると思います。ウェブ版も最終的には、もちろん、このビジネス支援委員会の協議会の参加者には最終プロダクトをシェアするという形でお出ししたいと思っています。来年の3月くらいを目処に、とにかく仕上げたら、今度はこれがHTMLになる形で、それぞれのテーマ別に、どのようなウェブがあって、そこにどのようなものがあるという紹介文が書かれていて、もちろんHTMLですから、それを図書館のホームページに載せればリンクが張られて、利用者の方々がウェブ上で、先ほどアーリントンのウェブサイトがすこし紹介されましたけれども、そのようなものを作れるようにして、それもやはり私たちが委員会で作ったウェブをそのままの状態でそれぞれの図書館のホームページに貼り付けるのではなくて、地元でそれをツールにして、編集していただき、載せていただく。そして日本の図書館のいろいろなところで、その地元地元に合ったウェブサイトができてゆけばいいので、そのベースの部分、コアの部分を提供してゆくというような趣旨でやるつもりです。

    また、安藤先生のスピーチを何度も引用して申し訳ないのですが、図書館にあるもののなかで2つクエスチョンマークがついている、情報発信のウェブがあるというところと、プロ司書のチャネリングというところですけれども、これをやれれば、この2つのクエスチョンマークが取れて、パーフェクトという状態に持っていけるのではないかと思っています。私たちもまだまだ未熟な部分もありますし、間違いもたくさんしながら進んでいますので、何度も何度も言うようですが、参加することでここの委員会が一番勉強になりますし、一番恩恵を受けられるのも参加することでだと思っていますので、皆さん奮っての参加をお待ちしています。