イベント概要
議事概要
ダイナミックにグローバル化していく世界経済において、地域統合は強い関心を持って受けとめられ、研究者および政策立案者の間で議論が起こっています。グローバルマーケットの拡大と、経済の相互依存の深まりは、新たな経済的および政治的課題を生んでいます。
欧州と東アジアにおける統合のプロセスは、異なる基盤と成長過程に基づいていますが、極めて注目に値するでしょう。欧州統合は、1957年の関税同盟から効果的に進み、1980年代の単一市場、そして1999年の通貨統合へと発展を遂げました。一方、東アジアの統合は、政治的な影響は相対的に低く、主に多国籍企業によって牽引されており、実体経済に即した発展を遂げています。
今回RIETIは、ロンドンの英国政府ビジネス・起業・規制改革省において、欧州屈指の政策シンクタンクであるCEPR(Centre for Economic Policy Research)と第3回目の国際共同セミナーを開催しました。リチャード・ポルテスCEPR所長、リチャード・ボールドウィンCEPRポリシーディレクターをはじめとして、研究機関や金融機関のみならず、英国政府、在ロンドン日本大使館など欧州各地から多数が参加しました。日本側からは藤田昌久RIETI所長、若杉隆平RIETI研究主幹(京都大学)、吉野直行教授(慶応大学)、宮島英昭RIETIファカルティフェロー(早稲田大学)が研究成果を発表し、参加者との活発な議論を行いました。
第1セッションでは、はじめにメイヤー教授(CEPR/パリ第一大学)およびオッタビアーノ教授(CEPR/ボローニャ大学)が、企業レベルデータを用い、貿易や海外直接投資のパフォーマンスなど欧州企業の国際化の状況について報告しました。続いて、若杉教授がRIETIで実施したアンケート調査を分析した論文「東アジアにおけるオフショアリングと貿易」 を発表し、参加者の強い関心を呼びました。活発な意見交換の後、メイヤー教授等がリーダーとなっているCEPRの「欧州企業と国際プロジェクト」にRIETIが今後参加を検討することとなりました。
第2セッションでは、日本における株式所有の変化に関し、フランク教授(CEPR/ロンドンビジネススクール)・宮島教授が報告しました。参加者からは、日本が再び外資に対して保護的になるのではとの懸念が表明されました。続いて、吉野教授がアジアボンドマーケットの育成について報告を行いました。これに対し、参加者からはアジアボンドマーケットの具体的な意義について質問があり、吉野教授から中国やインドでは年金システムがないが、アジアボンドマーケットが使えれば長期的なファイナンスが可能であり、さらにボンドマーケットが発達すればソブリン・ウェルス・ファンドがアジア域内で投資可能との例示がありました。また、ポルテス所長から、インドなどの発展途上国におけるインフラ整備におけるボンドマーケットの役割についてのRIETIとの共同研究の可能性について示唆がありました。
第3セッションにおいて、藤田所長が東アジアで多様性を生かした経済統合が進んでいる状況について報告しました。これに続き、ボールドウィン教授(CEPR/ジュネーブ国際研究大学院)から、企業レベルのデータ分析結果として、企業あたりの貿易品数は増加したこと、全体としてユーロは貿易にも投資にも正の効果があったことが報告されました。
なお今後もRIETIとCEPRとの間では、共同研究の実現可能性を検討するとともに、最低でも年に1回、定期的に国際共同セミナーを開催していくことが合意されました。
*本セミナーは、グレイトブリテン・ササカワ財団の助成金を受けて実施しました。