RIETI国際セミナー

最低賃金と雇用

イベント概要

  • 日時:2007年11月16日(金) 15:00~17:00(受付開始及び開場:14:45)
  • 会場:経済産業研究所セミナー室(経済産業省別館11階1121)
  • 開催言語:英語⇔日本語(同時通訳あり。先着40名)
  • 参加費:無料
  • 主催:独立行政法人経済産業研究所(RIETI)
  • お問合せ:石原千恵子
    Tel:03-3501-1375 Fax:03-3501-8416
  • 議事概要速報版

    賃金格差の拡大に注目が集まる中、その是正策としての最低賃金政策に注目が集まっています。他方で具体的な最低賃金水準の設定に当たっては低賃金労働者の雇用機会を減少させることになるのかどうかという点への考慮が必要となります。

    最低賃金の上昇が雇用にどのように影響するのかといった基礎的な研究は日本では緒についたばかりですが、米国では連邦レベルのみならず、州を初めとして各地方自治体レベルで多様な最低賃金政策が展開され、雇用への影響についても研究成果が蓄積されています。
    RIETIは今回、米国の最低賃金研究の第一人者であり、100以上の諸研究成果をサーベイした論文を発表しているカリフォルニア大学のデイビッド・ニューマーク教授を招き、川口大司准教授(一橋大学大学院経済研究科)を初めとする労働経済学の専門家および政策担当者が参加するラウンドテーブル形式の国際セミナーを開催しました。

    会議はニューマーク教授が米国の最低賃金研究の概要・最新動向をお話しいただくことで始まりました。米国の膨大な研究成果を注意深く評価すれば、最低賃金の引き上げが雇用の減少につながるという競争的労働市場モデルは現実にもその通り働いていると同教授は報告し、最低賃金政策の議論は、雇用へのマイナスとトレードオフとなる利点があるのかどうかという論点に移ってきていると述べました。米国の最低賃金政策は低賃金層の中でも貧困家庭にマイナスとなっており、貧困削減策としてはEITC(勤労税額控除:貧困世帯への所得税を還付する制度)の方が効果的であるとも指摘しました。

    その後、日本の労働経済専門家・政策担当者からも活発な質問や意見が相次ぎ、日本の県別・性別の賃金分布・最低賃金の実態がデータで明らかにされ、特に女性労働者の賃金水準が最低賃金に強く影響されている可能性が高い点などが示されました。ニューマーク教授の報告に対しては、労働市場・制度は国際的な差異が大きいことに十分留意すべきこと、労働者の多様性や地域間移動の可能性、最低賃金の労働参加率への影響なども考慮しながら研究を進める必要があるなど多数の意見がありました。また日本における最低賃金と生活保護の逆転の問題や生産性の高い仕事へのシフトを促進することの重要性についても指摘がありました。より詳細な議論の概要は近日RIETIウェブサイトから公表されます。

    関連資料