「脱工業社会」再論-求められる新しい労働論の創造-:投稿意見

石水 喜夫
コンサルティングフェロー

新しい労働観

匿名希望

新しい労働観というものを考える場合、株主/投資家と経営の関係、これらと債権者の関係等々の緊張感がより高まっている点を見逃せません。経済産業省が関与するLLP(有限責任事業組合)の制度化が進めば、更に関係の緊張感が高まる可能性があります。こうした中で、経営は労働に対しより厳しい立場をとることになるのでしょう。

市場メカニズムの効率化が何をもたらすかを考える上でも、消費者/労働者の利害を区分して考える必要があります。たとえば、多数のプレイヤーが存在する効率的市場は、消費者に恩恵をもたらしますが、消費者は反面労働者でもあり、市場が成熟化している現状では、社会厚生として何ら変わらない場合も有り得ます。

このような厳しい状況下にあって、労働者としていかに合理的な配分をとりうるか、労働組合の役割は現代においても重要であります。正規労働者・非正規労働者間のデュアリズムと正規労働者の雇用保障を弱める方向性から、労働条件への下方圧力が存在していることも上記の重要性を指摘するものです。個々人にとっても自らのキャリアを権利として主張するだけではなく、それを資産として捉え得るか真剣に考えてみる必要があるのでしょう(論文に記載の点は、むしろ「仕事観」という表現の方が適切かと思います)。

※労働が付加価値を生み出す活動であるとすれば、むしろ市場が存在しない商品/製品を作り出すことが重要です。高付加価値化を進めるには、一定の資源の集約化が必要であり、そのための企業法制や金融制度等の整備(上記LLPの制度化を含む)が重要であると考えます。「現代雇用政策の論理」では資本係数を高めていくことの重要性が述べられていたと認識していますが、誰がそれを担うのかという点を含め、より研究を深めていく必要があるのではないでしょうか。

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