政治では情報がなぜ流通しないのか?:投稿意見

加藤 創太
コンサルティングフェロー

日本の政治家はコミュニケーション能力が劣っているのでは?

フランス在住 パリ第十大学・博士課程 大中一彌

本稿では「情報の流通」の角度から日本の政治の機能不全を論じておられ、感銘を受けました。ただ私としては、政治家のコミュニケーション能力、という民主主義にとって不可欠な資質についての言及がなかったのを残念に思います。米国や日本の政治家(特に最近の)にはこの点で欠けるところが大きいように思われます。それは政治的指導者の選抜の過程に負うところが多いのではないでしょうか。欧州の政治家の議論は、問題がないわけではないにしろ、演説ひとつを聞いても遥かにコミュニケーション能力に富むものが多いように思います。日本でも政治的指導者の専門的育成・選抜という視点が必要ではないでしょうか。そのことは民主主義体制を強化するものでこそあれ、代議制に支えられたシステムを否定するものではないと思います。もちろん欧州においても、エリート層と一般の人びとの情報格差は大きく存在します。ただエリート層のコミュニケーション能力が、日本のそれより数段優れているのではないかと思えるのです。

国民が政治の情報を収集することはプラスかマイナスか

米国在中 米国政策系大学院博士コース 匿名希望

他の政治学者にない視点から今の日本政治の根源的な問題を探求している論考で非常に刺激的で勉強になりました。
実はこのコラムの基となったと思われるMWPSAにおけるペーパーも拝読したことがあるのですが、そのペーパーでは確か、政治家と国民がバーゲニング優位を競い合って情報収集に時間や労力を過剰にかけることが社会にとって損失になることが論証されていました。そこでは、国民が政治家や政府に対して情報面で劣位に立つことが当然視され肯定的(?)に書かれていましたが、このコラムとはその点についてのニュアンスが違う気がします。
私としては、国民が政治の情報を収集しないことが社会にとってプラスだという考え方は、経済学の政治への無批判な導入のような気がして、このコラムのニュアンスの方が首肯できる部分が多いのですが、国民が情報収集を十分に行うことによる社会的なロスと国民による政治のガバナンスの向上というのは、やはりあのWPで論じておられたようにトレードオフとして考えるべきなのでしょうか。だとすれば難しい問題ですね。

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