雇用危機:克服への処方箋

昨年末から景気の急降下が止まらない。それに合わせて雇用情勢も、特に非正規労働者へ「しわよせ」される形で予想を上回るスピードで悪化している。輸出関連の製造業を中心に派遣労働者や期間工の契約打ち切りなどが社会問題化している一方、勝ち組のように見える正規労働者についても長年にわたり長時間労働問題などが深刻化している。こうした問題の解決のためには、働き方の多様性・自律性が生かされる中で労働者が意欲や能力を高めていけるような、労働市場を支える制度・仕組みの新たな「かたち」を追求・具現化していくことが重要である。

経済産業研究所は、このような問題意識の下、2007年初に労働法学者、経済学者、経営学者をメンバーとする、「労働市場制度改革研究会」を立ち上げ、法学、経済学、経営学など多面的な立場から理論・実証的な研究、検討を精力的に行ってきた。その成果は昨年のRIETI政策シンポジウム「労働市場制度改革:日本の働き方をいかに変えるか」(2008年4月4日)で報告されるとともに、書籍として3月上旬に日本評論社から刊行予定である。また、世界経済危機の下での働き方の柔軟性を高める方策を考えるため、来る4月2日(木)にRIETI政策シンポジウム「労働時間改革:日本の働き方をいかに変えるか」の開催を予定している。

政府の最重要政策課題となっている雇用・労働問題に対してはスピーディな対応が不可欠である。しかし、緊急的な対応のみに右往左往していると、場当たり的な政策に終始してしまう可能性も懸念される。客観的な分析に基づいた冷静な判断と長期の制度設計まで見渡した大局観が今、まさに求められている。本コラムシリーズでは、以上のような問題意識をもとに、数回に渡り労働市場制度研究会メンバーが個々の立場から現在の雇用危機への処方箋を考える際にポイントとなる分析視点や政策対応のあり方を提言することとする。

(なお、コラムの意見に関わる部分は個人的な見解であり、経済産業研究所の見解を代表するものではない)