企業の成長と中堅企業

企業成長勉強会

はじめに

深尾 京司

中堅企業に特に焦点を当て、企業成長を後押しする政策を実施する経済産業省から依頼を受け、経済産業研究所(以下「RIETI」)では企業成長に関する勉強会(以下「企業成長勉強会」)を立ち上げ、2025年3月から2026年2月にかけて計8回開催した。

この勉強会では、2025年2月に政府が取りまとめた「中堅企業成長ビジョン」の具体的内容に関する経済産業省からの説明と、RIETIの研究活動に参画する研究者による、企業成長に関する先行研究の紹介や研究者自身の研究成果に関する説明に基づき、双方向で意見交換を行った。

本論文集は、企業成長勉強会における研究者側の主な報告を研究者ご自身に分かりやすくまとめていただいた論文から構成されている。

各論文の概要は以下のとおりである。

「Ⅰ 企業ダイナミクスのマクロ的含意」(執筆者:宮川 大介)
企業の参入・退出や規模拡大といったミクロの企業ダイナミクスが、資源再配分を通じてマクロの生産性を左右することを理論・実証の両面から整理し、近年の産業政策を評価した。

「Ⅱ 企業の取引関係、マネジメント・プラクティス」(執筆者:川窪 悦章)
優れたマネジメントが生産性や予測精度を高め、企業成長に寄与することを示すとともに、取引関係を通じたスピルオーバーと、企業のレジリエンスの重要性を明らかにした。

「Ⅲ 中小企業の金融と成長」(執筆者:鶴田 大輔)
中小企業政策や信用保証制度が成長インセンティブを阻害する可能性を指摘し、成長企業への資金配分が弱まっている実態を実証分析から明らかにした。

「Ⅳ 研究開発・イノベーションと企業成長~理論・実証・政策をつなぐ視点から~」(執筆者:池内 健太)
研究開発とイノベーションは企業成長の源泉であり、R&D投資、知識スピルオーバー、オープンイノベーションが生産性や雇用に影響する。理論・実証研究を踏まえ、税制やクラスター政策など制度設計の重要性を示した。

「Ⅴ 企業の海外進出:成長の条件」(執筆者:伊藤 公二)
海外進出企業は生産性・規模が高い一方、進出自体が成長を保証しないことを示したうえで、R&D、人材、製品差別化など成功に必要な条件を整理した。

「Ⅵ TDBデータで見た日本における中堅企業のダイナミズム」(執筆者:金 榮愨)
中堅企業は雇用や取引の結節点として重要であるものの、規模移行の硬直化や高生産性企業の退出が再配分を阻害していることを踏まえ、成長と再編を促す制度設計の必要性を示した。

なお、企業成長勉強会での議論と並行して、経済産業省とRIETIが連携し、企業の成長機運を高めることを目的に、中堅企業の事例、中堅企業政策立案の経緯や意義、企業の成長メカニズムに関する研究動向等を幅広く紹介する書籍『日本を救う最強の中堅企業:次の成長ステージを目指すための教科書』(日経トップリーダー編、経済産業省監修、経済産業研究所協力)が2026年4月に日経BP社より出版された。同書には、本論文集に掲載された論文を元に、日経トップリーダーの編集者が一般読者向けに書き下ろした資料も収録されている。

RIETIは、2025年4月からの5年間を対象とする第6期中期目標において、政策立案・遂行への貢献を行うことをその役割の最も重要な軸として改めて位置付けている。本論文集が、政策担当者による企業の成長等に関連する研究動向への理解を深め、今後の施策立案の参考となるとともに、研究者にとっても、研究課題の発見や研究成果の政策的インプリケーションを検討する一助となれば幸いである。

2026年8月13日掲載

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