2020年4月7日に出された新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言は、その後、対象地域が拡大、さらに期間も延長され、日本経済に深刻な影響を与えることが懸念されている。今回の影響は、中小、零細事業者の比率が高い産業(飲食・宿泊業、タクシー、バスなど旅客運輸業、観光地の土産屋など観光関連産業)で大きいことが予想されるが、実態把握は進んでいない。
われわれは、新型コロナウイルス感染症についての小規模企業経営者の認識・対応を調べるため、5月上旬から中旬にオンラインアンケートを実施した。株式会社マクロミルのモニター登録情報に基づき、経営者・自営業者(18,759人)、自由業者(8,230人)として登録されている全国、全年齢階層のモニターを対象とした。緊急事態宣言の解除等に関する最新情報が経営判断に及ぼす影響を把握するため、対象モニターを無作為に二分割し、5/8、5/15の2回に分けてアンケートを配信し、それぞれ回答者が6,000人に達するまで回収を行った。回収サンプルサイズは合計12,364であるが、今回は、小規模事業経営者(雇用者数20人以下)で明らかな矛盾回答のない6,923サンプルの集計結果を報告する。
第1に、1~4月の売上実績について述べる(第1図参照)。小規模企業の2020年1月~4月の平均売上高の前年同月比実績は、1月には平均0.2% 増とほぼ前年並みであった。しかし、2月には平均2.8%減、3月は平均10%減、4月は平均18%減と業績の悪化が続いている。
第2に、2020年第1四半期から第4四半期の売上高の前年同期比見込みを報告する(第2図参照)。第1四半期(1~3月)の実績は平均4%減であったのに対し、第2四半期(4~6月)の見込みは平均19%減、第3四半期(7~9月)の見込みは平均11%減、第4四半期(10~12月)の見込みは平均8%減となっている。回答した企業は、平均的には、第2四半期に落ち込んだ後、第3四半期以降回復すると見込んでいる。
第3に、5月8日から15日の1週間での企業のマインドの変化を説明する(第3図、第4図、第5図)。この1週間で、若干ではあるが、投資、雇用の見込みが改善した。また、第2四半期(4~6月期)の売上高前年同期比の見込みも若干改善している。
第4に、給付金を受け取る見込みについても調査したところ、持続化給付金で5割程度、雇用調整助成金と休業給付金で7割程度の企業が6月末までに給付金・助成金を受け取る可能性がまったくないと考えている(第6図)。次に比率が高いのは、すでに受け取ったもしくは確実に受け取ることができると考えている企業である。その意味で給付に関する政策の不確実性はそれほど高くない。持続化給付金に関しては、雇用調整助成金や休業給付金と比較して「もらえるかもしれない」と期待している企業が多い。
最後に、コロナ禍についての今後の予測と売上高見込みの関係性について触れる。緊急事態宣言の解除時期、感染者数がゼロになる時期、ワクチンの使用可能時期、オリンピック開催可能性などの予測については大きなばらつきがあり、これらの予測が楽観的な企業ほど売上高見込みが良い(第7図)。全国的な緊急事態宣言の解除時期の見込みについては、第1週調査と第2週調査の間の1週間で早まり、解除時期に関する不確実性も減少している。
詳細については以下のリンクからご覧ください。さらに詳細な分析については、今後、著者のホームページなどで随時公開していきます。
https://www.kohei-kawaguchi.com/e-covid