Special Report

日本型雇用の綻びをエグゼンプションで補う試案

海老原 嗣生
株式会社リクルートキャリア・株式会社ニッチモ

序文

エグゼンプション論議が再び熱を帯びている。
がしかし、相変わらず「残業代を払う払わない」ということにフォーカスが当てられている。この状態に大変歯がゆさを感じている。
現在は、隘路に突き当たった日本型雇用に関して、何かしらの答えを出さなければならない時期だ。その良い部分をなるべく残し、悪い部分を抜本改善するための施策を設けなければならない。

日本では、働く人たちは、企業の人事権に基づき職務をあてがわれ、忠誠と長期勤続と引き換えに、年功昇給と役職を手に入れる。この仕組みは、確かにキャリアスタート期においてはなかなか有用性が高い。
職務を詳細タスクまで決めていないために、簡単な仕事を寄せ集めて学卒未経験者に任せ、習熟とともに徐々に難易度の高いタスクに入れ替えていくことができるからだ。ポスト別採用で、任用されればタスクは固定的、という欧米型よりも、人材登用・育成機能は確かに強い。
がしかし、この「タスクを組み変え、年次相応の難易度の仕事を随時あてがわれる」仕組みでは、個人は「もう職業人としての成長は、このくらいでいいから、楽な仕事を」という自律的な選択ができない。
同時に、企業も「この人はもうコースから外れたから、一生今の仕事で今の給与を」という決断が下せない。
ゆえに、年齢相応の難仕事が用意され、そのため個人はいつまでたっても長時間労働に悩み、企業は年功昇給による人件費の高騰に悩むことになる。

今後は、高齢者、育児・介護に携わる社員などの「年齢に応じた職務難易度アップ」が難しい人たちが社内に増えていく中で、こんな日本的慣行は成立が難しくなっていくだろう。
だから今、日本型キャリアの中盤以降を抜本的に変革する必要がある。
それは、残業代の支給云々などですむような話では全くない。
日本は今でも、管理職はエグゼンプト(残業代なし)だ。そして、部下などいなくても、専任職課長としてエグゼンプション対象なっている40代社員は多い。しかも、少なくない企業では、課長職以上に成果主義を取り入れている。つまり、40代社員の多くは、たてまえ上は自律的労働で、時間対応ではなく、成果見合いの賃金となっている。
にもかかわらず、長時間労働は変わらず、自律的労働などは全く成り立っていない。
ここにきっちりメスを入れることを目的に、多角的観点で「エグゼンプション制度」を考えてみた。

2014年6月5日

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2014年6月5日掲載

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