日本とフランスの活発な経済関係について経済産業研究所(RIETI)のウェブサイトに寄稿する機会を頂いたことに謝意を表したい。日仏の活力は両国のみならず、第三国の市場にも及んでおり、日仏の共同プロジェクトが成長に貢献している。2013年も日仏関係にとって重要な年となるだろう。
活発な経済関係
多数のフランス企業が日本市場開拓に際して直接投資という手段を選択してきた。フランスは対日直接投資額第3位で、輸送用機器から金融まで広範な分野において投資しており、フランスの銀行、保険会社は大きな存在感を見せている。フランスの対日投資は約60000人分の雇用を創出し、対日直接投資全体の9%を占めると推計される。日本企業の投資によってフランスで創出される63000人分の雇用にほぼ匹敵する。しかしながら、日本の対仏投資は対仏直接投資全体の2%にとどまり、拡大の余地がある。
日仏の企業間の産業提携も日仏関係の活力を示している。自動車分野では直接的な資本提携にとどまらず、共同開発プロジェクトあるいは第三国における共同生産という形で結実している。エネルギー分野でも、オーストラリアにおける最近の日仏共同LNGプロジェクトは誇らしい成果である。
このような進展には大企業のみならず、中小企業も一役買っている。フランスの中小企業は、他のアジア市場と比較して日本への輸出において高い存在感を見せる。輸出額全体の5分の1は従業員50人未満の中小企業による輸出であり、他のアジア諸国ではその比率は半分である。興味深いことに、貿易フローについてはフランスと日本の両方が貿易赤字を主張している。貿易統計を注意深く分析すると、この乖離は従来の通関ベースの貿易統計(FOB価格)と貿易収支(経常収支ベース)の相違だけでなく、日本の対仏輸出の一部がベルギー、オランダを経由し、両国への輸出として記録されていることで説明できる。しかし、こうした異例のケースはともかく、貿易を双方向に拡大させ、それぞれ貿易における比較優位を活かすことが重要である。
フランスの金融機関も日本の金融市場の重要性を認識している。国際決済銀行(BIS)の統計によると、日本の金融機関が保有する対外資産は世界第3位である。フランスの銀行は日本の銀行、証券会社と共同でエネルギーやインフラのプロジェクト等に対して革新的なプロジェクト・ファイナンス・ソリューションを提供している。
共通の目標
このように日仏の経済関係はきわめてダイナミックだが、現状に安住すべきではない。特に、日本とEUの経済連携協定(EPA)の枠組みの中で日仏経済関係の発展を目指している。2013年3月下旬開催の日EU定期首脳協議にて交渉が開始されたEPA協定は両国に多大な恩恵をもたらすだろう。フランスはこの協定が相互の市場開放に基づいた野心的な協定になることを望んでいる。関税障壁の引き下げによって日本はただちに恩恵を得られるが、欧州とフランスは公共調達市場を含む非関税障壁の撤廃によって主に恩恵を受けることになるだろう。こうした状況を踏まえ、わが国はEPAが両国経済において成長の原動力になることを期待している。欧州委員会(EC)はEPAによってEU域内総生産(GDP)が約1ポイント、(経済規模の違いから)日本ではそれ以上押し上げられると推計している。フランスは日本市場にはチャンスがあると確信している。ニコル・ブリック貿易相は昨年12月に行ったフランスの輸出促進に向けた行動計画の発表の中で、具体的に3つの分野を挙げ(「農産物・加工食品」、「健康・医療」、「情報通信」)、日本がフランス製品にとって主要な成長市場であることを強調した。
日仏の協力関係は、世界金融の安定化など、グローバルガバナンスの問題にも及んでおり、両国の財務相、財務省高官の間で開かれる定期的な会合によって強化されている。欧州金融安定基金(EFSF)/欧州安定化メカニズム(ESM)に日本は最大7%を貢献し、昨年の国際通貨基金(IMF)への追加資本拠出に際しても欧州圏以外では最大の役割を果たした2つの事例がある。
日本とフランスの関係は高官協議によっても深められるだろう。フランソワ・オランド仏大統領は当選後まもなく重要なパートナーである日本の役割を強調し、政治、戦略、経済、文化のあらゆる側面において日仏関係のさらなる発展を強く望むと表明している。昨年、訪日した閣僚の人数は関係分野の広さと多様性を物語っており、2013年にはさらに拡大するだろう。安倍晋三首相もオランド大統領に来日を要請しており、今年中に実現するはずである。ルノー・日産アライアンスの実現を主導したルイ・シュバイツァー元ルノー会長が最近訪日し、多数の閣僚や政府高官を訪れたが、目的は日仏間の対話を拡大し、大統領訪日の下地作りであった。近い将来に共同プロジェクトを開始し、実現することによって日仏対話の成果が示されるだろう。