RIETI年末年始特集 Part1 フェローが選ぶ重大ニュース'03

『イラク戦争』という名の新たな課題

横山 禎徳郎顔写真

横山 禎徳(上席研究員)

「イラク復興」という名の戦争は物理的にも精神的にもいまだに終わってはいないことを含めて、この戦争は今後日本や世界中の人々が答えないといけない多くの課題を改めて提起した。その重要度は大きい。

それらの課題は:

  1. アメリカ以外に他国に攻め入って既存体制を破壊すような戦争を仕掛ける国はいまや世界に存在するのだろうか。存在しないとしたら、今後の日本の「安全保障」とは何であるのか。また、5兆円というアメリカを除けば世界最大の防衛予算が日本に本当に必要なのか。
  2. GPSを使った巡航ミサイルによるピンポイント攻撃は一見、一般大衆を戦争に巻き込まない優れた現代の戦争手段に見えたが、相手はピンポイント攻撃能力がないのだからゲリラ戦になり結局大衆は被害を受けることには変わりがないのではないか。
  3. 国連は意思決定に弱いが大義名分を持った実施行動にはある程度意味があることが分かったが、そのような役割に適した組織と意思決定のプロセスとの変革をそろそろ起案すべき時期ではないか。しかし、誰がそれをやるのか、やることが出来るのか。
  4. アラブ過激派はアフガニスタンへのソ連介入を失敗させ、それが世界の2強の1つであったソ連の崩壊につながったと信じているといわれる。その延長でアメリカの崩壊を目指したテロを続けていくつもりだとするなら、それに応じた対策をアメリカ以外の国が出せるのではないか。
  5. 日本が国際社会で役割を演じるには軍事力の行使は不可欠なのか。血を流すことでそのリーダー・グループに入れてもらう必要がどこまであるのか。日本は日本の独自の役割を定義し世界に示すべきではないのか。

などが挙げられる。既存の枠組みの中では答えられないことばかりだ。