夏休み特別企画:フェローが薦めるこの1冊'01

"Finance for Growth: Policy Choices in a Volatile World"

鶴 光太郎顔写真

鶴 光太郎(上席研究員)

World Bank and Oxford University Press, May 2001

『日米韓半導体摩擦』表紙 不良債権処理や金融システムの再構築は、現下の日本経済の最重要課題であることは疑いないが、金融システムが経済成長・パフォーマンスとどのような関係にあるかについては明確に議論されていないことが多い。一方、最近の経済学では、理論・実証面からこうした関係に新たな光が当てられるとともに、金融システムにかかわる特徴、制度、規制などの詳細な各国別のデータベースがハーバード大学や世界銀行を中心に構築され、どのような金融制度・システムが経済成長にとって望ましいかという論点が包括的に分析されてきている。本書はそうした研究を手際よくまとめており、参考になる。先進国のみならず、アジア、ラテンアメリカ、市場経済移行国、アフリカにまで分析対象を広げている世銀の分析をみると、金融危機は決して稀有な出来事ではなく、現在の日本はアメリカなどよりも銀行危機が頻発してきた途上国の経験から学ぶべきものが多いとの印象を強くした。

鶴 光太郎(上席研究員)