日本語タイトル:パッシブファンドの運用会社にエンゲージメントの対価を払うことで、ESG評価は改善するか

Does Paying Passive Managers to Engage Improve ESG Performance?

執筆者 Marco BECHT(Université libre de Bruxelles / CEPR / ECGI)/Julian FRANKS(London Business School / CEPR / ECGI)/宮島 英昭(ファカルティフェロー)/鈴木 一功(早稲田大学 / ECGI)
発行日/NO. 2023年11月  23-E-077
研究プロジェクト 企業統治分析のフロンティア
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概要

本論文では、日本の年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) が実施した責任投資に関するnatural experiment(自然実験)を分析する。 2018年、GPIFは、ESGのパフォーマンスを向上させるために、GPIFの最大の国内株パッシブ運用委託先であるアセットマネジメントOne社に対し、投資先企業と対話(エンゲージメント)することに対して追加報酬を与えるマンデートを与えた。 同時に、2017年にはGPIFはベスト・イン・クラス型(ESGに優れた企業のみを組み入れる)のインデックスを採用し、高い ESG スコアを持つ企業により重点的に投資する仕組みを作った。GPIFは、これら2つの施策を通じて、投資先企業のESG改善を企図したと考えられ、我々はその効果を検証する。

われわれは、アセットマネジメントOne社の2018年以来の対話の内部記録を取得し、DiD(差分と差分の分析法)によって、対話先企業のESGスコアが、対話によって改善したことを確認した。また、イベント・スタディにより、ベスト・イン・クラス型のインデックスに採用された株式ではプラスの、除外された株式ではマイナスの超過収益が生じることも確認した。

概要(英語)

The paper studies a natural experiment in responsible investment conducted by the Japanese Government Pension Investment Fund (GPIF). In 2018 GPIF gave its largest passive manager a remunerated mandate to engage with portfolio companies to improve ESG and adopted best-in-class indexes, rewarding high-ESG-scoring companies with additional equity investment. Using private data and difference-in-differences analysis we show that engagement by the asset manager improved scores. In an event study, we find that the conditional portfolio tilt significantly impacts share prices. We also provide evidence that ESG scores for companies in Japan increased significantly more than for companies in other countries.