執筆者 | 宮崎 智視 (神戸大学)/佐藤 主光 (一橋大学) |
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発行日/NO. | 2018年10月 18-E-072 |
研究プロジェクト | 固定資産税の経済・財政効果と改革の方向性 |
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概要
本研究は、1991年になされた、長期営農継続農地制度の廃止ならびに生産緑地法改正という一連の制度改革が、三大都市圏特定市内における市街化区域内農地(宅地化農地)にどのような影響を与えたかを、理論・実証両面から検討したものである。具体的には、まず(1)制度改正の結果、市街化区域内農地は減少する、(2)生産緑地での保存というオプションがある結果、宅地への転用は必ずしも明確にならない、という2つの結果を理論モデルにより導き出した。次に、(1)と(2)を仮説として、制度改正前後の期間(1992年度と1993年度)を対象にdifference-in-differences(DID)によって実証分析を試みた。DID推定にあたっては、三大都市圏特定市をトリートメント・グループ、その他の市をコントロール・グループとした。
実証分析の結果、制度変更後に市街化区域内農地比率が減少したとの結果が頑健に示された。一方、宅地比率についてはいずれのケースでも有意な結果を得ることができなかった。このことは理論的仮説と平仄の合うものであり、制度改革の結果、「偽装農地」は減少したと考えられるものの、すべてが宅地転用されたわけではないことが示唆された。
概要(英語)
This paper examines the effects of property tax reforms at the beginning of the 1990s in Japan through theoretical and empirical investigation. Preferential treatment of farmland in the center of cities and inner suburbs is not favorable because it may hinder changing such land into residential areas and henceforth deter urbanization. We utilize a natural experiment provided by the aforementioned reforms. The results reveal that the proportion of farmland that might have impeded urbanization decreased after the reforms in major cities within metropolitan areas. However, landlords did not necessarily replace all of the land with housing lots, suggesting that the government should have conducted the reforms in a way to promote more conversion.