日本語タイトル:人工知能AI等が雇用に与える影響;日本の実態

Digitization, Computerization, Networking, Automation, and the Future of Jobs in Japan

執筆者 岩本 晃一 (上席研究員)/田上 悠太 (統計数理研究所)
発行日/NO. 2018年7月  18-P-013
研究プロジェクト IoTによる生産性革命
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概要

2013年9月、オックスフォード大学のフレイ&オズボーンは、米国において10〜20年内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクが70%以上という推計結果を発表し、それを契機に世界中で「雇用の未来」に関する研究ブームが発生した。日本はそうした研究ブームとはほとんど無縁で、メディアが47%という数字を取り上げ、人々の不安を煽ってきた。47%という数字は本当か? という疑問が本課題に取り組み始めた動機である。事実に基づいた科学的で冷静な議論が必要である。

第2章は、フレイ&オズボーンの推計について、詳しく分析している。我々同様、フレイ&オズボーンの推計に疑問を持つ人々は多くいた。そうした人々の推計結果を載せている。第3章は、これまで世界中から数多くの論文等が発表され、いくつかの点が解明され、またコンセンサスが得られた内容である。現在、研究ブームはピークを越え、世界はそこから得られた対策に乗り出しつつある。2017年以降、顕著な研究成果はほとんど発表されていない。第4章は、「雇用の未来」の課題を、国として最も深刻に捉え、政府主導で取り組んできたドイツの動向を紹介する。ドイツ人も私と同じ疑問を持ったようだが、調査研究の規模において日本の比ではない。ドイツ政府は、「労働4.0(独Arbeiten4.0,英Work4.0)プロジェクト」を実施してきた。そのドイツも、2016年11月、「白書:労働4.0」White Paper Work 4.0 [2016]を発表し、調査分析は一段落ついた。いまは具体的な対策に乗り出している段階である。第5章は、本稿のメインテーマである「人工知能AI等が雇用に与える影響について日本の実態を調査」したものである。まず筆者は、日本企業の現場を訪ね歩き、日本型雇用の下で新技術がどのような形で導入されつつあるか、現地調査した。次に、日本企業全体の実態を把握するため、2017年8月、約1万社を対象にアンケート調査を実施した。そのアンケート調査から導出される日本企業の動向・実態を詳しく述べる。第6章は、以上の調査研究の結果、導出される政策である。

本稿は、日本語版のポリシー・ディスカッション・ペーパー(18-P-009)を英語版にしたものである。

概要(英語)

In the seminal study, Frey & Osborne reported that 47% of the total employment in the United States is at risk of computerization. Many studies estimate how automation of work influences employment. In Japan, however, there are few studies which investigate the effect of automation and networking on future employment. It is important to discuss this based on facts and evidence.

This paper describes the present situation in Japan on the impact of artificial intelligence (AI) on employment, utilizing a survey study. We first visited Japanese companies and conducted a field survey on the new technologies being introduced. Following this, in August 2017, we conducted a survey study of about 10,000 companies. This paper discusses the output of the survey study.