執筆者 | 臼井 恵美子 (一橋大学) /清水谷 諭 (コンサルティングフェロー) /小塩 隆士 (一橋大学) |
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発行日/NO. | 2015年8月 15-E-099 |
研究プロジェクト | 社会保障問題の包括的解決をめざして:高齢化の新しい経済学 |
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概要
「くらしと健康の調査 (JSTAR)」を用いて、日本における60歳から74歳までの男性は、年金受給開始後の新しい生活環境において、自分の就労形態をどのように変化させ、やがて引退へと移行しているかを分析した。分析の対象とする男性を、54歳のときの仕事が雇用者であった人々と、54歳のときは自営業だった人々の2つのグループ分け、その両者を比較分析した。前者の54歳のとき雇用者だった人々は、年金受給開始後、徐々にパートタイム、あるいは引退へと移っていくが、その中でも働き続ける人々はもっと労働時間を長くしたいがそれができないと感じていることが多い。一方、後者の54歳のとき自営業だった人々は、年金受給を始めても、直ちに引退したり、労働時間(週当たり労働時間、あるいは年間労働週いずれも)を変えることがなく、働き続ける中で働きすぎ(労働時間を減らしたいがそれができない)と感じていることが多い。これらの分析結果は、日本の男性雇用労働者は、年金受給年齢になってからも、依然、引き続き活用が可能な余裕の能力を有していることを示している。一方、米国のHealth and Retirement Study (HRS)を用いて、日本と同様の分析をした結果、米国の男性は、年金受給開始と同時に、引退したり、パートタイムに移っている。そして、その中でも雇用者として働き続けている人々は、日本と異なり、働きすぎとも、もっと働く時間を増やしたいとも感じておらず、日本に比べると引退後の働く時間に満足していることを明らかになった。これらの分析は、日本の男性は、年金受給開始後において、自分が働きたいと感じている時間だけ働くことができていないが、一方、米国の男性は、日本に比べれば、望むだけ働くことができていることを示している。すなわち、日本においては、定年制度、年金制度などの諸要因のために、年金受給開始後の働く時間について満足できていない人々が多い可能性があり、この原因を特定するため今後の更なる研究が必要であると考えられる。
概要(英語)
We investigate how Japanese men aged 60-74 adjust their workforce attachment after beginning to receive a public pension. Men who were employees at age 54 gradually move to part-time work or retire after beginning to receive pension benefits; those who continue working are more likely to be underemployed. Men self-employed at age 54, however, neither retire nor reduce their working hours even after beginning to receive pension benefits; these men are more likely to be overemployed. In contrast, U.S. men retire or move to part-time when they first claim Social Security; those who continue working as employees after Social Security starts are unlikely to be either over- or underemployed. Therefore, unlike U.S. men, Japanese men are not choosing the optimal pensionable age and labor hours to maximize their intertemporal utility.
Published: Emiko Usui, Satoshi Shimizutani, and Takashi Oshio, 2016. "Are Japanese Men of Pensionable Age Underemployed or Overemployed?" The Japanese Economic Review, Vol. 67(2), pp. 150-168
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jere.12094/abstract