執筆者 |
川﨑 健太郎 (東洋大学) /王志乾 (一橋大学) |
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発行日/NO. | 2015年4月 15-E-052 |
研究プロジェクト | 通貨バスケットに関する研究 |
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概要
本稿は東アジア経済地域において、統合された市場(=経済圏)が存在しているかどうか、G-PPP(一般化購買力平価)アプローチを用いて検証を行っている。ASEAN諸国(=インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)と「プラス3」(=日本、中国、韓国)を含めた(9カ国)の任意の組合せにおいて、地域が最適通貨圏の条件を満たしているかについて検証をおこなった。アジア危機以前の経済成長の時期と、危機以降の経済成長の時期とを比較可能な8カ国(ベトナムを除く)について検証を行ったところ、アジア危機以後の方が最適通貨圏の条件を満たす組合せを多く発見することができた。また全9カ国について、アジア危機以降の時期について同様の検証をおこなった場合でも、地域が最適通貨圏の条件を満たすことを示唆する検証結果を得る事ができた。これらの結果は、グローバル化時代における経済発展は、世界の貿易量の増加や、国際資本移動の増加、そして情報コミュニケーション技術の発達などにより、単に地域経済の統合を促すばかりでなく、最適通貨圏の条件である域内の実質為替相場の連動性をも高めるよう作用していたことを示している。東アジア地域が最適通貨圏の条件を満たすことは、金融面における地域経済協力や地域金融統合を促す協調政策の実施をより強く後押しすることとなるだろう。
概要(英語)
This paper aims to investigate whether there exist international integrated markets among East Asian economies by employing the generalized purchasing power parity (G-PPP) model, which then would help to suggest whether or not the East Asian region is an optimum currency area (OCA). The empirical results in this paper suggest that holding the G-PPP among nine Asian countries (China, Indonesia, Japan, Korea, Malaysia, Philippines, Singapore, Thailand, and Vietnam) is more applicable in 2000-2013 than in 1984-1997. In the period of "globalization," which is characterized by the expansion of world trade, an increase of international capital flows, and development of information and communications technologies, Asian economic development has been promoting not only economic integrations but also constructing the stable linkages of real exchange rates. Therefore, it would be helpful to adopt regional coordination for monetary policies to assure the feasibility of a possible monetary union.