執筆者 | 伊藤 公一朗 (研究員)/依田 高典 (京都大学)/田中 誠 (政策研究大学院大学) |
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発行日/NO. | 2015年2月 15-E-014 |
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概要
本研究では、電力需要のフィールド実験を用いて、モラルに訴える政策(自発的な節電を促す政策)と経済インセンティブに訴える政策(電力のダイナミック・プライシング)の効果持続性について実証的に検証しました。フィールド実験とは、実験室で行う実験ではなく、日常生活における消費者や企業の経済行動を対象として実験を行い、研究課題に答える手法です。本研究のフィールド実験では、約700世帯の参加者に対しスマートメーターを設置し、30分ごとの電力使用量を計測しました。その上で、700世帯をランダムに3つのグループ(コントロールグループ、モラルに訴える政策のグループ、経済インセンティブに訴える政策のグループ)に分け、それぞれの政策が家庭での電力の節電行動にどのような影響を及ぼすかを計測しました。その結果、モラルに訴える政策は短期的には有用な効果を持つが、数回の政策介入後には効果がゼロに近づくことが示されました。一方、経済インセンティブに訴えかける政策は、モラルに訴えかける政策よりも大きな効果を生み出し、またその効果が持続することが示されました。ではこの2つの政策を考えた場合、社会厚生にはどのようなインプリケーションがあるのでしょうか。論文の最後では、社会厚生についての分析を行い、それぞれの政策が日本の電力市場に大きな経済的便益をもたらすことを示しました。中でも、経済インセンティブに訴える政策(電力のダイナミック・プライシング)は持続的な効果を持ち、大きな経済的便益をもたらすことが示されました。
Published: Ito, Koichiro, Takanori Ida, and Makoto Tanaka, 2018. "Moral suasion and economic incentives: Field experimental evidence from energy demand," American Economic Journal: Economic Policy, Vol. 10(1), pp. 240-267.
https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257/pol.20160093
概要(英語)
Firms and governments often use moral suasion and economic incentives to influence intrinsic and extrinsic motivations for various economic activities. To investigate the persistence of such interventions, we randomly assigned households to moral suasion and dynamic pricing that stimulate energy conservation during peak demand hours. Using household-level consumption data for 30-minute intervals, we find significant short-run effects of moral suasion, but the effects diminish quickly after repeated interventions. Economic incentives produce larger and persistent effects, which induce habit formation after the final interventions. While each policy produces substantial welfare gains, economic incentives provide particularly large gains when considering persistence.