執筆者 |
関野 雅弘 (株式会社アイ・エス・アイソフトウェアー) /渡部 和孝 (慶應義塾大学) |
---|---|
発行日/NO. | 2014年10月 14-E-063 |
研究プロジェクト | 企業金融・企業行動ダイナミクス研究会 |
ダウンロード/関連リンク |
概要
本稿では日本政策金融公庫から提供を受けた契約レベル、企業レベルのデータを用いて、メインバンクの貸し渋りの程度の大きかった企業に中小企業金融公庫がクレジットクランチ期に融資額を増大したか検証した。具体的には、クレジットクランチ期の公庫の融資額(の対数)を被説明変数とし、Watanabe (2007)の分析を基に、銀行が自己資本についての目標を上回ることによって貸出供給を増加させた増加率(CAPSUR、この値が負の場合、自己資本の低下を起因とする貸し渋りによる貸出供給の減少率になる)を銀行毎に計算し、各々の企業について、そのメインバンクのCAPSURを主な説明変数とした回帰分析(OLS推計)を実施した。その結果、CAPSURは被説明変数が総融資額、および、運転資金融資額のときに負で統計的に有意となり、被説明変数が設備資金融資額のときには有意にならなかった。この結果は、メインバンクの貸出金供給が1標準誤差(3.1%)低下したとき、中小公庫の総融資額が3.4%、260万円増加することを意味している。
概要(英語)
Using the data of individual loan contracts extended by the Japan Finance Corporation for Small and Medium Enterprise (JASME), which is one of the predecessor institutions of the Japan Finance Corporation (JFC) that aimed at lending to small and medium enterprises (SMEs), we examine whether the JASME’s lending substituted for the reduced lending supply by private banks during the period of the credit crunch. We find that the JASME made larger loans to the firms whose main bank reduced more lending due to losses on their capital.