執筆者 |
Julen ESTEBAN-PRETEL (政策研究大学院大学) /中嶋 亮 (横浜国立大学) /田中 隆一 (東京工業大学) |
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発行日/NO. | 2011年4月 11-E-040 |
研究プロジェクト | 少子高齢化時代の労働政策へ向けて:日本の労働市場に関する基礎研究 |
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概要
近年、標準的なサーチ・マッチング・モデルは、アメリカの労働市場の循環的特性をうまく説明できないことが指摘されており、それらは労働市場の循環的特性を分析するツールとしてはふさわしくないのではないかという批判がなされている。Shimer (2005)は、標準的なサーチ・マッチング・モデルでは、現実的な労働生産性の変動を考慮しても市場逼迫率(求人・失業者数比率)の十分な変動を生み出すことはできないことを指摘している。本稿では、この「Shimerのパズル」が日本においても当てはまるのかどうかを検証する。 まず、日本の労働市場の循環的特性について実証的に観測し、アメリカの労働市場の循環的特性と比較する。 その上で、3つのサーチ・マッチング・モデルをシミュレーションにより分析する。1つ目は、離職率が外生的に与えられるモデル、2つ目は離職率が内生的に決められるモデル、3つ目は実物的景気循環モデルに基づいたモデルである。これら3つのモデルのパラメータをカリブレーションにより設定し、シミュレーションにより得られる市場逼迫率等の変動を計算し、それが現実に観測されるデータと近いものとなっているかどうかを確認した。その結果、「Shimerのパズル」が日本の労働市場においても当てはまることがわった。
概要(英語)
The search and matching model has recently come under criticism for its inability to account for some of the cyclical properties of the U.S. labor market. Shimer (2005) has shown that the basic version of the model is incapable of reproducing the volatility of the market tightness for reasonable movements in productivity. This paper considers whether the so-called "Shimer Puzzle" also holds for the Japanese economy. We present empirical evidence on the cyclical properties of the labor market variables in Japan and compare these to their U.S. counterparts. We then build, parametrize, and simulate three different versions of the search and matching model (with exogenous job destruction, with endogenous job destruction, and embedded in a Real Business Cycle model) and compare the simulated statistics to the data. We find that the "Shimer Puzzle" does hold for Japan, since the model is unable to generate as much volatility on the market tightness as in the data.