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経済政策レビュー4
モジュール化 新しい産業アーキテクチャの本質-
編著:青木 昌彦、安藤 晴彦
編著者による紹介文
「モジュール化」は、現在、経済学や経営学の専門家の間で最もホットなテーマの1つ
世界経済の発展を牽引するシリコンバレー。多数のベンチャー企業が日夜激しいイノベーションを繰り広げるシリコンバレーの本質は何か。これに「モジュール化」「カプセル化」あるいは「情報を隠すこと」と即座に答えられる方は、本書を読む必要はないでしょう。
「モジュール化」は、現在、経済学や経営学の専門家の間で最もホットなテーマの1つで、既存の産業や企業の構造を根本的に覆しかねない極めてインパクトの強いものです。本書は、「モジュール化」が持つ力について、やさしく解説しています。
90年代は、アメリカのベンチャーが世界的隆盛を誇り、それまで世界経済の主役だった日本の産業が「失われた10年」を無為に過ごした時代と言われます。アメリカのベンチャー隆盛を読み解くキーワードが実は、「モジュール化」なのです。「モジュール化」とは、字面では、「モジュール(部分)に分割し、分業すること」ですが、これには深い内容が込められています。ICT技術(ディジタル情報処理とコミュニケーションに関する技術)が爆発的に進化する中で、産業アーキテクチャに変化が起き、「今日的な分業」の再構築が迫られています。それは、「設計面での分業」、「生産プロセスの分割の手法」、「製品の構造的分割」、「(他社も含む)製品間での部品の共通化」、「(企業内外の)組織のあり方」、「組織間の情報伝達のあり方」など、いくつもの段階に複雑に絡み合っています。「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」、「技術」といった経営資源すべてに及び、かつ、そのあり方について今日的見直しを迫るものです。ものづくりの「分業」に関しては、アダム・スミスのピンなどの分析が有名ですが、今日的なモジュール化は、新たなオプション価値を生み出し、莫大な潜在的「富」を求めて激しい争奪戦も行われています。ベンチャー・キャピタルやストックオプションという言葉はご存じだと思いますが、こうした比較的新しい経営ツールも、実は、モジュール化と深い関係があります。
本書では、世界最先端の理論と実務の世界で活躍する方々に「モジュール化」の本質に迫っていただこう、そして、それを一人でも多くの読者に理解していただきたいとの思いで、まとめました。所長青木昌彦(スタンフォード大学教授)、K.B.クラーク ハーバードビジネススクール学長、C.Y.ボールドウィン同教授(前副学長)、研究所フェローの池田信夫氏、柳川範之氏(東大助教授)、藤本隆宏氏(東大教授)、中馬宏之氏(一橋大学教授)が、そして経営側からは、大久保宣夫日産自動車副社長、藤村修三ANNEAL Corp. CTOが、そして、パネルディスカッションには、iモードの生みの親である榎 啓一氏、SOTECで有名な橋本 浩氏、総合科学技術会議議員の桑原 洋氏が加わり、國領二郎慶応大学教授が絶妙のチェアマン振りで、ともすると難しいテーマに光を当てています。
安藤 晴彦
著者(編著者)紹介
客員研究員、内閣府企画官(経済財政運営総括)。1985年、通商産業省入省後、通商政策局総務課総括係長、在スペイン日本大使館一等書記官、独立行政法人 経済産業研究所総括マネージャーなどを経て現職。経済産業研究所では、独立行政法人化を担当するとともに、国際競争力、モジュール化、半導体露光装置産業、中小企業異業種交流、スタートアップ・ベンチャー、商法改正(種類株式等)について研究。