プロジェクト概要
2006年度
我が国の生き残りにはイノベーションの推進が不可欠であり、それを支える制度の1つに知的財産権制度がある。我が国の知財権制度は2003年の知財戦略本部の設置以来、いわゆるプロパテントとしてその保護の強化が行われ、それ以前を含めての特許法の数次の改正や運用あるいは司法面での改善等々もあって、その保護水準は相当に整備されたと思われる(拙著「わが国におけるプロパテント化の評価と今後の課題」経済産業ジャーナル2007年4月号参照)。しかるに研究開発の複雑化・迅速化等は益々進み、今や企業単独での遂行は難しい状況となり、ためにソフト分野等を中心にオープンイノベーションの動きがあり、またいわゆる「連携」も各所で進んでいる。他方、知財権はその本質を排他権とするところ、それは「私的権利(Proprietary)」であり全体利益というか連携・協働とは相容れない側面がある。加えて排他権は市場競争を歪め、その過度の行使はイノベーション自体をも阻害するおそれもある(たとえばリーザーチツール、特許の藪、果てはトロール、等)。研究開発促進にはそのインセンティブからの保護も必要であるが、全体としてのイノベーションを損なって元も子もない。このような状況から、保護の側面は一応の成果を得たわが国知財権制度が、今後、イノベーションをより促進するためには如何にあるべきかを検討する。