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2007年度政策研究領域(基盤政策研究領域)

III. 経済のグローバル化、アジアにおける経済関係緊密化と我が国の国際戦略

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経済のグローバル化が益々進展し、特にアジア諸国における経済が急速に緊密化してきている中、国際的な通商ルール(WTO、FTA)や貿易投資の政策展開のあり方についての我が国としての総合的な国際戦略を確立していくことが重要である。我が国としての通商を含むそうした戦略の展開への寄与を目指し、アジアに展開する貿易・直接投資・技術のバリューチェーンと金融・為替制度の変貌を分析し、アジアや世界に向けた政策提言を行う。また、そうした中で、各通商ルールについての運用状況の蓄積や理論的な整理、主要な経済パートナー諸国の経済実態や各々の通商戦略の分析、企業の国際的なビジネス展開を可能としていく事業環境等に関する研究を行う。

1. 国際企業・貿易構造の変化と市場制度に関する研究

活動期間:2007年7月1日〜2011年3月31日

プロジェクトリーダー

若杉 隆平ファカルティフェロー

サブリーダー

冨浦 英一ファカルティフェロー

大橋 弘ファカルティフェロー

プロジェクト概要

国際経済において注目すべき研究課題として、直接投資・現地生産とアウトソーシングの拡大、技術ライセンス供与と知的財産権の保護、FTAの貿易拡大効果、関税・アンチダンピングの保護貿易政策の実効性があげられる。これらの課題に関する分析においては、貿易理論、企業理論、契約理論などによる理論研究が先行しているが、実態面における解明は、日本に限らず海外においても十分になされているとはいえない。このため、国際貿易に関する財別データ、日本企業に関する産業レベル・企業レベルデータを駆使して、上記課題に関する実態を定量的に分析するとともに、政策・制度がもたらす効果を定量的に評価し、貿易・産業政策のあり方に対するインプリケーションを議論する。

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2. 開発援助の先端研究

活動期間:2007年7月23日〜2010年3月31日

プロジェクトリーダー

澤田 康幸ファカルティフェロー

プロジェクト概要

経済成長支援から直接の貧困削減支援へ、プロジェクト中心から財政支援中心へ、融資中心から債務削減・グラント中心へ、バイからマルチへと国際的な開発援助に関する議論が大きな転換点を迎えている。2006年度に実施した「開発援助のガバナンス構造プロジェクト」では、エビデンスに基づきながらアジアとアフリカのマクロ的な援助効果の違いを体系化することを目的とした。これらマクロ研究の成果を受け、2007年度はさらに、(1)国際協力を通じた災害リスクのプーリングに関する保険機能構築のための基礎研究、(2)企業データを用いた技術協力の計量経済学的インパクト評価、を加えて研究する予定である。

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3. 地域経済統合への法的アプローチ

活動期間:〜2007年12月31日

プロジェクトリーダー

川瀬 剛志ファカルティフェロー

プロジェクト概要

90年代後半からの地域経済統合(FTA、EPA、関税同盟)の隆盛には刮目すべきものがあり、この現象は社会科学各分野において高い関心を呼び起こしているが、その法的側面の分析については一般に立ち後れている。地域経済統合もまたWTO同様に膨大な法律文書によって行われ、また、GATT24条に根拠をもつ通商「協定」である。よって、その具体的な制度設計、そして完成後の運用においては、法的分析が政策ツールの中心とならなければならない。このような問題意識のもと、本プロジェクトはこれまでの主要な地域経済統合の分野別の制度比較を行い、地域経済統合の法的制度設計の類型化とその特質を明らかにする。このことにより、統合の法的規律のあり方としていかなる選択肢がありうるのか、そしてそれらが実効的な経済統合にいかに役立つかを提示する。

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4. WTOにおける補助金規律の総合的研究

活動期間:2008年1月22日〜2010年3月31日

プロジェクトリーダー

川瀬 剛志ファカルティフェロー

プロジェクト概要

補助金制度は各国の広汎な政策目標の達成の手段として広く活用されているが、輸出補助金に見るように国際通商における資源配分を歪曲する効果を持つことがある。それゆえWTOの下では、補助金・相殺関税協定(SCM協定)および農業協定の規律対象となっている。補助金を巡っては、WTO発足後すでに合計30件を越えるパネル・上級委員会の判断が示されているばかりでなく、今後は関連協定の適用を暫定的に停止していた条項の失効により、紛争の増加が予想される。そこで本研究は、SCM協定・農業協定に関する判例の検討によりその解釈・適用の慣行を明らかにし、わが国および主要貿易相手国の補助金制度のWTO協定上の問題点を精査し、更にWTO協定整合的なわが国の補助金制度および相殺関税制度のあり方に示唆を得る。

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5. East Asian Production Networks, Exchange Rate Changes, and Global Imbalances

活動期間:2007年12月27日〜2009年6月17日

プロジェクトリーダー

THORBECKE, Willem上席研究員

プロジェクト概要

The work this year has sought to understand the relationship between East Asian Production Networks, Exchange Rate Changes, and Global Imbalances. The paper "How Would an Appreciation of the RMB and Other East Asian Currencies Affect China's Exports?" looks at how appreciations in China and other supply chain countries would affect China's exports. The paper "The Effects of Exchange Rate Changes on Fragmentation in East Asia: Evidence from the Electronics Industry" presents evidence that exchange rate volatility decreases the flow of electronic components within East Asia. The paper "Trade Interdependence and Exchange Rate Coordination in East Asia" presents an analytical description of these production networks and examines empirical evidence concerning the factors that affect triangular trading patterns. The paper "Production Sharing, Exchange Rate Changes, and the Trade Balance: Evidence from the East Asian Electronics Industry" reports that exchange rates appreciations in countries supplying intermediate electronics goods inputs would decrease final electronic goods exports from East Asia but appreciations in assembly economies would not.

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6. 東アジアの金融協力と最適為替バスケットの研究

活動期間:2007年7月1日〜2008年6月30日

プロジェクトリーダー

伊藤 隆敏ファカルティフェロー

サブリーダー

小川 英治ファカルティフェロー

プロジェクト概要

当研究プロジェクトでは、将来的にはアジア地域において、共通通貨バスケットを採用することが望ましい有力な選択肢の1つであると位置づけ、バスケット移行までの為替政策・金融政策運営、望ましいバスケット制の形態を探るという、政策に直結する研究を行っている。当研究プロジェクトの研究成果の1つであるアジア通貨単位(AMU)のデータは2005年9月よりRIETIのウェブサイトで公表され、内外からアクセスされている(2007年月平均アクセス数768)。さらに上記のテーマから派生する問題として、為替変動がどの程度国内物価に影響を与えるかというパススルーの問題、輸出入の建値通貨として何を選択するかというインボイス通貨の問題について研究を行っている。従来のマクロモデルを用いた手法に加えて、19年度は日系企業ヒアリングを実施し、各企業が輸出輸入に際して、どのような為替戦略(建値、リスク管理)を採用しているかというミクロ的分析も行った。20年度には、最適バスケット、建値・パススルーの問題について、ミクロ・マクロ両面からの成果を得て、より実務に即した政策提言を行うことを目指している。

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7. FTAの効果に関する研究

活動期間:2007年7月26日〜2009年4月30日

プロジェクトリーダー

浦田 秀次郎ファカルティフェロー

プロジェクト概要

近年、特定国との貿易を自由化する自由貿易協定(FTA)が世界各国で急速に増加している。FTAはFTA加盟国間の貿易を拡大させる一方、非加盟国との貿易を抑制する可能性が高い。FTAはそれらの貿易への効果を通して、加盟国および非加盟国の経済に影響を与える。本研究では、FTAの貿易および経済に与える影響を、事前および事後分析を用いて検討する。事前分析とは、FTA設立以前の情報を用いて行われる分析であり、手法としては一般均衡モデルによるシミュレーションを用いる。一方、事後分析とは、実際に観測された統計を用いて行う分析であり、手法としては主に二国間の貿易の決定を検討するグラビティ・モデルを用いる。分析対象は、日本の設立したFTAと共に世界諸地域において設立された主なFTAである。また、日本のFTAについては、企業によるFTAの利用度も分析する。以上のような分析を行うことにより、FTAの貿易・経済への影響を明らかにすると共に、日本政府によるFTA政策の立案に対して有益な情報を提供することを期待している。

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8. 中国の台頭と東アジア地域秩序の変容

活動期間:2007年7月1日〜2009年3月31日

プロジェクトリーダー

白石 隆ファカルティフェロー

プロジェクト概要

中国の台頭が今後20年程度のタイムスパンをとった時に、東アジア地域秩序にどのような変容をもたらす可能性があるのか、これを中国国内の政治問題にも留意しつつ、地域秩序のレベル、そして中国周辺諸国の政治、経済、社会のレベルにおいて分析することが本研究の目的である。中国の台頭をめぐる議論は「脅威」と捉えるものから「チャンス」と捉えるものまで大きな幅があるが、その大半が印象論で終始している。それに対して本研究は、中国と中国周辺諸国の政治、経済、社会の状況を具体的に研究している研究者と議論することを通じて、中国が東アジア地域秩序にとってどのような存在になるのかを判別できる因子を明らかにしていくものである。

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9. 対外投資の法的保護の在り方

活動期間:2007年6月1日〜2008年10月31日

プロジェクトリーダー

小寺 彰ファカルティフェロー

サブリーダー

松本 加代研究員

プロジェクト概要

外国投資は、相手国の国情等によって大きなリスクに晒される。これらのリスクのうち、投資受入国の行為を直接の原因として事業が失敗するリスク(政治的・社会的リスク)については、何らかの公的枠組みによって対処することが求められる。近年その枠組みとして注目されているのが投資協定である。特に、投資協定の定める投資家対国家の紛争解決手続き(国際仲裁)が実際的な投資家保護として機能している。本プロジェクトでは、この仲裁判断の法理を分析し、対外投資の法的保護の在り方を検討する。法理の分析は、今後日本が締結する投資協定や経済連携協定の投資章を起草する上で大きな示唆を与えると同時に、企業関係者にとっては投資先や投資方法の選択にあたっての参考となる。さらに、類似の機能を有する投資保険の商品設計にも影響を与えることになる。

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10. 貿易と環境、食品安全性

活動期間:2007年7月1日〜2008年9月30日

プロジェクトリーダー

神事 直人ファカルティフェロー

プロジェクト概要

国際間の貿易において現在重要な争点である「貿易と環境」と「食品安全性と貿易」に関して、経済学と法学の双方から総合的・学際的にアプローチする。貿易と環境については、貿易の自由化が環境を改善するか否かに関する実証研究や、森林の違法伐採問題に関する理論的研究、企業の自主規制による環境対策に関する理論的研究などに取り組む。また食品安全性と貿易については、WTO協定において食品安全問題に関連する衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)について、法学と経済学の双方から分析を行うとともに、SPS協定が関連するWTO紛争案件についても分析を行う。さらに,食品安全規制の消費者便益について、日本のBSE対策を事例として推定を試みて考察を行う。

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11. 経済グローバル化のコンテクストにおける生産性向上のための国際戦略に関する調査研究

プロジェクトリーダー

白石 重明上席研究員

プロジェクト概要

経済グローバル化のコンテクストにおいて生産性向上をいかに図るかという課題に対する有効な政策提言につなげていくことを念頭に、(1)利潤最大化原理に基づき「2R-2Rモデル」(「戦略基礎としてのResource及びRisk」と「戦略行動としてのRedefinition及びRelocation」の循環モデル)によって説明される行動をとる企業、(2)リアリズム原理に基づき国益最大化を図る政府、(3)リベラリズム原理に基づき国家の枠を超えた全体利益の増大を図る国際組織、という異なる原理に基づくプレイヤーによるマルチプル・ゲームとして経済グローバル化を理解し、その実相と課題を抽出する。特に、経済グローバル化の一態様としてクロスボーダーM&Aに着目し、欧州の電力ガス事業の再編等を具体的な対象分析として取り上げる。なお、本調査研究は、OECDとの共同プロジェクトとして実施する。

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