このページではJavaScriptを使用しています。

2006年度政策研究領域(基盤政策研究領域)

III. 経済のグローバル化、アジアにおける経済関係緊密化と我が国の国際戦略

印刷用ページへ

経済のグローバル化が益々進展し、特にアジア諸国における経済が急速に緊密化してきている中、国際的な通商ルール(WTO、FTA)や貿易投資の政策展開のあり方についての我が国としての総合的な国際戦略を確立していくことが重要である。我が国としての通商を含むそうした戦略の展開への寄与を目指し、アジアに展開する貿易・直接投資・技術のバリューチェーンと金融・為替制度の変貌を分析し、アジアや世界に向けた政策提言を行う。また、そうした中で、各通商ルールについての運用状況の蓄積や理論的な整理、主要な経済パートナー諸国の経済実態や各々の通商戦略の分析、企業の国際的なビジネス展開を可能としていく事業環境等に関する研究を行う。

1. 国際企業・貿易構造の変化と市場制度に関する研究

プロジェクトリーダー

若杉 隆平ファカルティフェロー

サブリーダー

冨浦 英一ファカルティフェロー

大橋 弘ファカルティフェロー

概要

経済のグローバル化の進展の中で、我が国を取り巻く国際経済環境は大きく変化している。(1)市場条件、(2)国際分業、および(3)貿易政策の3つの観点から我が国におけるグローバル化の現状を展望する。

(1)アジア諸国を始めとする各国の市場条件は、企業の貿易、直接投資、国際分業、技術移転を大きく左右するが、その定量的な分析は発展途上にある。ここでは市場条件を示す指標の統計的整備と貿易・投資・研究開発への影響の分析の両面から研究を行い、市場条件の国際的整備の重要性を経済学的に検討する。研究の具体的ステップの1つとして、各国の知的財産権制度の保護の差異が技術移転、研究開発拠点の受け入れに与える影響などを分析し、知的財産権保護の制度の国際的調和の重要性・問題点を検討する。

(2)グローバル経済化の流れの中で、日本企業による国際分業のあり方は複雑性を増している。日系企業による生産工程の分業を、研究開発や企業規模との関係から分析することで、企業の外注・委託生産の現状を明らかにする。

(3)経済のグローバル化の進展により、貿易政策における緊急避難的な措置(セーフガード)の整備の重要性が増している。セーフガード政策では先を行くアメリカをケーススタディとして取り上げ、この政策の重要性を再検討する。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

国際ワークショップ

  • "Empirical Studies of Trade, FDI and Firm in East Asia" (2007年3月16日-17日)

ページトップへ

2. 開発援助のガバナンス構造

プロジェクトリーダー

澤田 康幸ファカルティフェロー

サブリーダー

木村 秀美研究員

概要

開発援助に関する議論の中心は、プロジェクトから財政支援へ、融資から債務削減・グラント中心へ、バイからマルチへと大きな転換点を迎えている。しかし、国際援助コミュニティにおける基本的開発目標である、MDGs (Millennium Development Goals) 達成の政策ツールは必ずしも明らかではなく、「直接的貧困削減」と「経済成長媒介戦略」の相対的有効性についても議論が続いている。また、援助の「量」を巡る議論が展開される一方、援助の「質」に関する議論は深化していない。

これらの問題意識を踏まえ、本研究では、「開発援助のガバナンス構造*」をエビデンスに基づきながら体系的に解明することを目的としている。具体的には、こうした問題意識に基づき、アジアとアフリカにおける開発援助効果の違いとその要因について、貿易・投資・援助の「三位一体のモデル」による計量分析等を行う。
*「開発援助のガバナンス構造」とは、ドナーの意思決定構造、受入国の意思決定構造と援助の形態(モダリティ)で構成される、公的国際資金フローとしての開発援助の「統治構造」のことである。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

ページトップへ

3. 地域経済統合への法的アプローチ

プロジェクトリーダー

川瀬 剛志ファカルティフェロー

概要

90年代後半からの地域経済統合(FTA、EPA、関税同盟)の隆盛には刮目すべきものがあり、この現象は社会科学各分野において高い関心を呼び起こしているが、その法的側面の分析については一般に立ち後れている。地域経済統合もまたWTO同様に膨大な法律文書によって行われ、また、GATT24条に根拠をもつ通商「協定」である。よって、その具体的な制度設計、そして完成後の運用においては、法的分析が政策ツールの中心とならなければならない。

このような問題意識のもと、本研究はこれまでの主要な地域経済統合の分野別の制度比較を行い、地域経済統合の法的制度設計の類型化とその特質を明らかにする。このことにより、統合の法的規律のあり方としていかなる選択肢がありうるのか、そしてそれらが実効的な経済統合にいかに役立つかを提示する。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

2007年度の成果はこちら

ページトップへ

4. The Resolution of Global Imbalances

プロジェクトリーダー

THORBECKE, Willem上席研究員

概要

Our work this year involved seeking a deeper understanding of the characteristics of international production networks in Asia and of the effects of exchange rate changes on processing trade. In the paper with Dr. Masaru YOSHITOMI we presented a detailed analysis of Trade-FDI-Technology Linkages in East Asia. In the paper with Mizanur RAHMAN we investigated the effects of unilateral RMB appreciations and joint appreciations among countries supplying intermediate inputs on China's processed exports. In both cases we also tried to draw relevant policy conclusions from our results.

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

ページトップへ

5. 東アジアの金融協力と最適為替バスケットの研究

プロジェクトリーダー

伊藤 隆敏ファカルティフェロー

サブリーダー

小川 英治ファカルティフェロー

概要

2004年から2005年にかけて、アメリカの経常収支赤字が拡大し、GDP比で7%に達するようになった。一方、中国の経常収支黒字も拡大し、GDP比で5%を超えた。中国に日本、さらに韓国やASEAN諸国を加えると、東アジアはアメリカに対し大きな貿易黒字を記録していることになる。この不均衡の解消の過程で、ドルが下落するようなことが起きた場合、東アジアの通貨体制に協力関係が無いと、いくつかの国に過大な増価負担がかかったり、あるいは増価をさけるための介入額が膨らむことが予想されるが、もし東アジアが協力して“Joint float”のメカニズム(たとえばCommon Basket:共通通貨バスケット)を構築できれば、世界不均衡解消過程での東アジアへのショックは、比較的小さくすむであろう。

本研究は、将来的には共通通貨バスケットを長期的に望ましい選択肢と位置付け、バスケット移行までの金融為替政策運営、また、望ましいバスケット制の形態を探るという、政策に直結する研究を行うことを目指している。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

国際ワークショップ

  • "Regional Monetary Coordination and Regional Monetary Unit" (2006年12月23日)

RIETI-TIERワークショップ

ページトップへ

6. FTA研究会

プロジェクトリーダー

浦田 秀次郎ファカルティフェロー

概要

自由貿易協定(FTA)は世界貿易体制の中で支配的な位置をしめるようになった。東アジアや日本においてもFTAは増加している。そのような状況を踏まえて、本研究では、世界と日本を含む東アジアにおける主要なFTAを取り上げ、FTAの内容についての評価とFTAによってもたらされた効果を分析する。以上の分析から得られる結果は、望ましいFTAを構築するにあたって重要な情報を提供する。評価分析の結果から、各FTAの改善すべき点が把握できる。また、効果分析からFTAの予想される効果についての有益な情報が得られることで、FTA戦略の構築に役立つ。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

国際ワークショップ

  • 「FTA研究プロジェクト」 (2006年11月10日)

RIETI政策シンポジウム

ページトップへ

7. 中国の台頭と東アジア地域秩序の変容

プロジェクトリーダー

白石 隆ファカルティフェロー

概要

中国の台頭が今後20年ぐらいのタイムスパンをとった時に、東アジア地域秩序にどのような変容をもたらす可能性があるのか、これを中国国内の政治問題にも留意しつつ、地域秩序のレベル、そして中国周辺諸国の政治、経済、社会のレベルにおいて分析することが本研究の目的である。中国の台頭をめぐる議論は「脅威」と捉えるものから「チャンス」と捉えるものまで大きな幅があるが、その大半が印象論で終始している。それに対して本研究は、中国と中国周辺諸国の政治、経済、社会の状況を具体的に研究している研究者と議論することを通じて、中国が東アジア地域秩序にとってどのような存在になるのかを判別できる因子を明らかにしていくものである。

ページトップへ

8. 対外投資の法的保護の在り方

プロジェクトリーダー

小寺 彰ファカルティフェロー

サブリーダー

松本 加代研究員

概要

外国投資は、相手国の国情等によって大きなリスクに晒される。これらのリスクのうち、投資受入国の行為を直接の原因として事業が失敗するリスク(政治的・社会的リスク)については、何らかの公的枠組みによって対処することが求められる。近年その枠組みとして注目されているのが投資協定である。特に、投資協定の定める投資家対国家の紛争解決手続き(国際仲裁)が実際的な投資家保護として機能している。

本研究では、この仲裁判断の法理を分析し、対外投資の法的保護の在り方を検討する。法理の分析は、今後日本が締結する投資協定や経済連携協定の投資章を起草する上で大きな示唆を与えると同時に、企業関係者にとっては投資先や投資方法の選択にあたっての参考となる。さらに、類似の機能を有する投資保険の商品設計にも影響を与えることになる。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

ページトップへ

9. 環境と貿易・WTO、食料・農業とWTO法

プロジェクトリーダー

神事 直人ファカルティフェロー

概要

経済のグローバル化の進展とともに、「貿易と環境」の問題あるいは食料・農業とWTOの問題等が大きな争点となっている。これらの問題に対して、経済学と法学の双方から総合的、学際的にアプローチする。特に、(1)開放経済下における環境政策の効果に関する分析、(2)森林資源の違法伐採問題とその対策を含めた持続可能な森林管理政策に関する検討、(3)貿易自由化が環境問題に与える影響に関する分析、(4)多国間環境協定とGATT/WTO協定との整合性問題等に関する法学的分析、等を中心に研究を実施する。分析は理論研究と実証研究の両面から行い、必要に応じて事例的な研究や歴史的な研究も取り入れていく。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

ページトップへ

10. 製品アーキテクチャのモジュール化と東アジア地域の貿易における比較優位構造の変化についての実証分析

プロジェクトリーダー

桑原 哲上席研究員

概要

モジュール化の進展を通じて、従来単一であった生産工程が分断され、地理的に分散される現象は、供給面から見れば各工程ごとの生産投入要素の違いあるいは生産技術の違いに対応するためのものである。現在の東アジア地域では、極めて細分化された生産工程単位での産業クラスターが国境を越えて分散形成されつつあり、産業の比較優位の構造も大きく変化してきている。

こうした問題意識に立脚して本研究では、モジュール化の進展が東アジア地域の貿易構造に及ぼす影響について、データに基づいた研究を行う。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

ページトップへ

11. 経済グローバル化のコンテクストにおける生産性向上のための国際戦略に関する調査研究

プロジェクトリーダー

白石 重明上席研究員

概要

いわゆる経済グローバル化が進展する中で、日本を含む先進諸国はグローバル化のコンテクストにおいて生産性向上をいかに図るかという課題に直面している。この問題に関する有効な政策提言につなげていくことを念頭に、企業の国際的事業活動を「企業の戦略基礎としてのresourceおよびrisk」と「企業の戦略行動としてのredefinitionおよびrelocation」の循環モデル(企業戦略に関する「ポジショニング理論」と「資源ベース理論」を循環的に融合した「2R-2R」モデル)として理解・把握することで経済グローバル化の実相と課題を「企業」というミクロレベルから抽出する。あわせて、グローバル化のコンテクストにおける生産性向上という観点から、政府(政策)と企業(事業活動)との関係に検討を加える。なお、本研究はOECDとの共同プロジェクトとして実施する。

ページトップへ