2005年度主要政策研究課題

VI. データベースの拡充とモデル操作運用の強化

マイクロデータの充実と、貿易、年金、エネルギー、環境の分野におけるモデル操作の向上に力を入れる。これらは、経済産業研究所の研究に必要なインフラ基盤の強化につながる。

(1) 規制緩和等の政策評価のためのミクロ・モデル開発

46. 政策評価シュミレーションモデル

代表フェロー

概要

政策企画立案機能の向上のためには、個別の政策や政策パッケージが国民全体にもたらす便益と費用を評価する作業が欠かせない。本プロジェクトの目的は、政策現場で活用できる評価手法(道具箱)を用意することである。主として、自由化後の電力市場のパフォーマンス評価を例としてとりあげ、政策現場で政策評価や政策分析のために用いることができる簡便なシミュレーション・モデルを開発する。エネルギー政策等の分野では、応用一般均衡モデルを用いた政策評価が行われるようになっているが、モデルが大規模で、その信頼性についての評価は困難になりがちである。
このプロジェクトでは、政策現場で作成および理解が可能な程度に小規模なミクロ経済モデルを用いて、各種政策オプションのもたらす便益と費用を推計することを目指す。

主要成果物

RIETI経済政策分析シリーズ

RIETIディスカッションペーパー

47. 誘導形政策効果測定法の実践とその改良

代表フェロー

概要

ミクロデータを使った政策効果測定はマクロデータを使った分析と同様に大別して2種類ある。1つはミクロモデルに基づく構造手法(Structural Approach)と呼ばれるものであり、もう1つは誘導形手法(Reduced Form Approach)と呼ばれるものである。
誘導形手法の長所は、あまり複雑なモデルにする必要がないので、結果がより信頼できる頑健なかたちで得られることである。これが、事後的政策評価の方法として有効な方法だと考えられている理由である。誘導形手法の短所としては、ある地域のある時期にある政策が効果があったということがこの手法で判ったとしても、同じ政策を他の地域で、又は他の時期に実施した場合に同様の政策効果を生むかということに関しては何もいえないことがある。どういうメカニズムを通してある政策が効果を生むかということに関して誘導形手法は何も特定しないからである。これらの長所短所を考えると、結局のところ、両方の手法を併用していくことが重要である。
このプロジェクトでは幅広く欧米で用いられている一般の誘導形手法がどのように活用できるかを実践で示す。また、こういった誘導形手法の欠点を補うための手法の開発を行う。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

(2) 産業(企業レベル、サービス等)、高齢化等のミクロ・データベースの拡充

48. 非営利法人に関するデータ整備研究

代表フェロー

  • データ管理室

概要

近年、経済社会における非営利組織(NPO:non-profit organization)の役割が注目されているが、その経済規模や産業構造等を定量的に明らかにした統計データは極めて少ない。そこで、NPO法人を対象にアンケート調査を実施し、その活動に関する基礎的な情報について収集・整備するとともに、NPO法人の活動規模全体の推計を行う。また、他の研究プロジェクトにも利用することのできるNPO情報のプラットフォームとなるデータベースを構築する。

主要成果物

49. マイクロデータ開発研究

代表フェロー

  • データ管理室

概要

近年、政府統計の個票データを用いた経済分析が活発に行われるようになってきたが、利用申請に手間がかかると同時にデータセットの整備についても多大な労力がかかる上、さまざまなノウハウが必要となっている。
そこで、各種企業・事業所関連の統計調査を中心に、これまで個々の研究者が独自に行うことの多かった個票データの整備を集約的に行い、各種データベースを作成する。具体的には、利用頻度の高い「企業活動基本調査」、「海外事業活動基本調査」、「工業統計調査」、「商業統計調査」の個票データを時系列的にリンクさせたパネルデータ作成に重点を置く。
なお、データ自体の共有ができないため、データベースの作成プログラムおよび各種コンバーターを研究所内外の研究者に提供し、個票データ利用の便宜を図るとともに、作成手順やデータセットの概要を取りまとめる。

主要成果物

(3) 環境、貿易、年金問題等に関連するモデル操作の強化

50. 地域エネルギー統計整備及び動態要因分析方策の研究

代表フェロー

概要

地球温暖化対策法下の京都議定書目標達成計画に基づき、地方公共団体は温暖化防止のための計画を策定し対策を講じることとされているが、国内のエネルギー需給やエネルギー起源二酸化炭素排出量と整合した地域別のエネルギー・環境統計が存在しないため、地方公共団体が政策の基礎指標を得られないという問題がある。
本研究では、国単位での「総合エネルギー統計」の作成技術を応用し、「総合エネルギー統計」と整合した地域単位でのエネルギー需給とエネルギー起源二酸化炭素排出量を算定するとともに、その分析・評価指標を開発し、地方公共団体による省エネルギー対策やエネルギー起源二酸化炭素排出抑制対策の策定・実施・評価を支援する。

主要成果物